表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/65

第三章 守人神たち〈13〉

挿絵(By みてみん)


烏丸はつむぎの式神でメス。忠吉(チューきち)たちは酔笑(すいしょう)さんの式神で赤ちゃんっぽく性別不明。


 ただ、男の守人神(もりひとがみ)にはオスの式神、女の守人神(もりひとがみ)にはメスの式神がつくらしい。だとすれば、忠吉(チューきち)たちはオスの式神と云うことになる。


 ()せないのは、烏丸だけ語尾が「カァー」とかじゃなくて「だに」であることだ。キャラづけが徹底していない。


 また、猫丸・犬丸・烏丸とくれば、ネズミたちはネズミ丸のはずなのに、忠吉(チューきち)と云うのもどこか釈然としない。


 しかも数10匹まとめて忠吉(チューきち)って忠吉(チューきち)たちはひとつの意識を共有する分身だと云う)。


 いずれにしろ、安易なネーミングセンスではある。


(それでは、ひきつづき刺繍(ししゅう)地図の上半分も二手にわかれて探索してください)


 白蛇神キヤイキナスさまがそう告げると、式神たちの身体が燐光(りんこう)を放った。白蛇神さまが式神たちへ霊魄(れいはく)をわけあたえたらしい。


 式神たちはしずかにぼくらの前を横ぎると、ふたたび外へ飛びだしていった。


「ここで一句。〈こそこそと、邪神ひそむは、地図の北〉となれば、北東の針八幡宮の裏あたりじゃろうか?」


「たしかに、あのあたりの丘にひそんでいそうな気もするのう」


「北西の竹林とかはどうかな?」


瑞巌寺(ずいがんじ)の奥か。戦さ場としては厄介ぞよ」


 4人の守人神(もりひとがみ)たちが意見をかわしあう。刺繍(ししゅう)地図に見るおよそ500年前の地理はよくわからないが、針八幡宮や瑞巌寺(ずいがんじ)は現在の麻蒜間(まひるま)市にもあるので、おおよその見当はついた。


 針八幡宮はJR新麻蒜間(まひるま)駅の先にある大きな神社だ。初詣や夏祭りによくいく。


 瑞巌寺(ずいがんじ)にいったことはないが、大型ショッピングモール・エレクトラの近くにあるので、その前はよく通る。


 あのあたりは古くからの住宅地なので、昔は竹林だったと聞かされても想像するのはむずかしい。


 とにかく、今後の邪神退治の作戦は潜伏先が判明してからと云う結論に落ちついて、昼餉(ひるげ)はおだやかにおわった。



     5



 宗重さんが自室へしりぞき、酔笑(すいしょう)さんが空になった懸盤(かけばん)庫裡(くり)(台所)へ下げにいくと云うので、ぼくもお手伝いしようと思ったのだが、


「森崎どのはそれがしどもより霊魄(れいはく)の安定に時間がかかるゆえ、のんびりいたされませ」


 と、断られた。さしあたりやることがない。


 つむぎに屋敷の案内でもしてもらおうか? と思っていたら、甘い香りにうしろからだきつかれた。この豊満な柔らかさは消去法で論じるまでもない。イレンカさんだ。


「トシくん。わらわと一緒に『モンスター・ハンティングHG』をプレイするぞよ。それはもうエキサイティングぞよ~?」


「もうイレンカちゃん、いちいちトシくんにくっつかないで! ……トシくんもデレデレしないっ!」


 おかどちがいのつむぎのヤキモチがぼくの方へと飛び火するのもかまわず、イレンカさんがことさら(つや)っぽい声でその火へトポトポと油をそそぐ。


「よいではないか、なあトシくん?」


 ここで迂闊(うかつ)にも「はい」などとこたえようものなら、さらなる修羅場が待っているのは自明なので返答に(きゅう)していると、障子がガラリとひき開けられた。


「少年! キャッチボールしようぞ! (わし)のツーシームを披露してしんぜよう!」


 ふたつのグローブと白球を手にした宗重さんが完爾(かんじ)と笑う。


「だめぞよ~。トシくんはわらわと『モンスター・ハンティングHG』に興ずるところぞよ~」


「なにを云う、イレンカどの。男は男同士、白球で語りあうのが青春ぞ!」


「わぬしのへなちょこツーシームなぞ、こないだわらわが打ちくだいてくれたではないか」


「あ、あれはその、イレンカどのをあえかな女性(にょしょう)と思うて手加減したまでじゃ!」


「ほう、とんだフェミニストじゃのう。ならば、わぬしの本気とやらを見せてもらおうぞ」


 ぼくから身体をひきはがしたイレンカさんが不敵な笑みをうかべると、あっと云う間にソフトボール選手のような短パンのユニフォーム姿に変わっていた。


 手には木製バット、頭にはメットをかぶっている。いきなり準備万端、いきなり臨戦態勢である。……金属バットでないところがすごい。


「おう、おもしろい。イレンカどの。表にでられよ。いざ尋常に勝負せん。今日こそ目にもの見せてくれるわ」


 この会話から察するに、イレンカさんと宗重さんはしばしば野球対決をおこない、イレンカさんが全戦全勝しているらしい。


「ちょっち待っておれ、トシくん。わらわのホームラン、わぬしに捧げるぞよ」


「少年。坂東武者の生きざま、その目に焼きつけるがよい」


 実年齢(?)はさておき、外見16歳の美少女に全力で挑まんとする外見32歳のむくつけき武士(もののふ)と云う構図が、絵的になんとも大人気なかった。


 て云うか、邪神退治の使命も忘れて野球対決している余裕なぞあるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ