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第一章 呪いのツム子さん〈1〉
1
冥く寝静まった高層マンション街に突如としてけたたましいサイレン音がこだました。救急車とパトカーのものであるらしい。
この1ヶ月強で深夜に不吉なサイレン音を聞くのは4回目だ。
冥闇の中で目覚まし時計に手をやると、蛍光塗料の塗られた文字盤と針がぼんやりと午前2時40分をさし示していた。
不安な想いをいだきながら窓のカーテンを開けると、黒い壁のように屹立するマンション群の階下で赤い光が瞬いていた。
サイレン音でたたき起こされた人々の野次馬する影が、明滅するパトライトのあかりにちらちらとゆれる。
幸か不幸か、マンションの通路がわに面するぼくの部屋の窓から事故現場を見下ろすことはできなかった。
ぼくはカーテンを閉めてベッドへ腰を下ろすと深くため息をついた。
(これがただの事故でありますように。〈呪いのツム子さん〉とは関係ありませんように)
2
そして翌朝、ぼくは知る。
ぼくらの住む美雲パークタウンで転落死した〈4人目〉の犠牲者が、小6の時のぼくとつむぎのクラスメイト、安達由佳であったことを。