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竜の咆哮  作者: 春日 智英
幼少期
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序章

お立ち寄りいただき、誠にありがとうございます。


物語の展開が遅めですが、一つ目のクライマックスである14話までは、どうかお付き合い下さいませ。


この物語は、最近の流行りの要素がありません。

主人公が無双するわけでもなく、ハーレム要素もありません。……あくまで予定ですが。


主人公とその仲間の心の成長であったり、

それを取り巻く世界を描いていく物語にしたいと思っています。


この世界の空気と情景を感じていただければ幸いです。

「母ちゃん! 鳥とってきたよ! 焼いて焼いてー!」

「おいハク! あんまり母ちゃんにやらせるなよ!」


 ある二つの理由から、人々が決して近づかない山があった。


 まず一つに、その山は周囲を見渡す限りの森林に囲まれているため、近づくこと自体が困難だということ。

 もう一つは、彼らの住むこの場所が「竜が住む山」として恐れ、畏れられているからだった。


 多種多様な種族が生存しているこの世界で「竜」という種族は極めて稀有である。何より個体差はあれど、どの個体も極めて強大な力を持つ種族として認識されている。

 それ故に、竜が住むと伝えられているこの山には誰も近づこうとはしないのだ。


「ハク、焦らないの。ラドもありがとう。でも弟には優しくなさい」


 その山の山頂付近に、親子である二頭の竜と一人の少年が住んでいた。


 ハクと呼ばれたのは、白髪の少年。

 ハク自身に暦という概念は無いのだが、そろそろ八歳になろうかという年頃である。身長は約百三十センチメートル。やや細身の体系で、笑顔の似合う、快活な男の子である。


 ラドと呼ばれたのは、全身を赤い鱗で覆われた体長一メートル程の子どもの竜。

 炎や吹雪などのブレスが吹けることで一人前と認められる竜族。しかし産まれてから十年程しか経っておらず、まだまだ子どもであるラドは、未だブレスが吐くことができないでいる。


 このハクとラドの親であるのが、体長六メートルを超す大型の雌竜。人類の間では「女帝竜」と呼ばれており、ラドと同じく全身を赤い鱗で覆われている。

 女帝竜はかつて、世界中で勃発した大戦時に竜の軍勢を率いていたという過去がある。当時それを見ていた人類が、畏怖と恐怖の念を込めて「女帝」と冠して呼称するようになった。


「でも母ちゃん、まだ怪我治ってないんでしょ?」

 ラドは少し遠慮がちに母に問いかける。


 ラドが心配しているように、女帝竜の鱗は全身傷だらけなのである。

 しかし彼女は決して、その訳を子ども達に話さない。それは、偏った先入観や、怒りという感情を与えないためだ。


「母ちゃん、からだ……痛いの?」

 ラドが女帝竜の体調を案じているのを見て、ハクも思い出したかのように母を気遣う。


「大丈夫よ、今日は調子がいいから。ほら、二人とも。焼いちゃうから、そこに取ってきた鳥を並べて」

「「はーい!」」

 子ども達に余計な気を遣わせないよう、女帝竜はいつもより明るい口調でそれに応える。その反応を見て安堵したハクとラドは、すぐに目の前の食事へと思考を切り替えた。


 子ども達の笑顔を見て微笑ましく思いながら、女帝竜は捕獲された大型の鳥類を焼いていく。



 柔らかな日差しが彼らを温かく照らしている。

 二頭と一人は和やかに食事へと向かう。


 いつまでも続くと思っていた平穏な日々。しかしそう遠くない未来に、それは唐突に終わりを告げることになる。

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