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いずれ  作者: 吉城 桜
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0章 千の夜 50目の夜

大勢、という訳ではないけれど、自分を入れて五人で食卓を囲むのは久しいか。否、初めてか。

母と私、小さい頃には父も、かな。父との記憶なんて無いから多くて二人。騒がしい食事なんて葬式しか知らない。

「四季、あなたは食べないの?」

千夜が声をかけてきた。懐かしい回想に箸が止まっていた様子。

「いえ、美味しいですよ?少し考え事をしていました。」

前半は不味かったろうか、と心配する鏡花へ。

後半は食欲がないのか、と心配する千夜へ。

 そういえば朝にこんなおかずの多い洋食を食べるのは久しぶりだ。

 鏡花手製の目玉焼きを頬張る。

 ああ、美味しい。


―能ある鷹は爪を隠す、これは誰を指しているだろうか?

 私は彼女を思う、六歳年上の、あのせんぱい。

 透き通った瞳に黒い絹のような髪。

ああ、憧れだ。多くの人は彼女の魅力に、溺れるはずだった。しかし、誰も気が付かない。

否、気付けないのか。

 彼女は優秀だ。有名大学を出ているというあの教諭、好評だというあの校長。

 彼女は彼らを凌駕している。知識量、推測、

観測。至る五感を使い現在に普通の少女としてここにいる。

 こんな彼女になぜ誰もが気が付かないのか。

彼女はいたって普通だから。

 普通に過ごし、普通に話し、普通に笑い、普通にあらゆる人を凌駕する。

 ほら、彼女の万能に誰も気が付かない。

彼女は自分を普通だと認識するがゆえに、誰もを莫迦だとは思わない。彼女はその万能さを口には出さない。だから、皆分かってるのに言わない、という認識になる。

 彼女の思考は理解されず、他人の、凡人の思考も理解できない。

 理解していると、彼女は思っているだろうに!

 私がなぜ気づいたか?

 あまりに彼女がひとりであったから。ああ、哀れ。なんて哀れ。

 彼女は独りきりの万能で在るがゆえに、誰も横には並べまい。

 だが、他人がいなければ能のない私より、ずっと人間らしい。

 彼女は万能で在りながら普通であるから、誰もその能に気付けまい。

 私はずっと彼女が気になって仕方ないというのに。

 我ながらなんて小学一年生だ。他人を知り尽くしたゆえに随分と歪んでしまったらしい。

 また、会いたいね。せんぱい。

 近頃また会えそうね。せんぱい。

 私もあなたもさみしいわね。せんぱい。

 ずっとひとりで、ずっとみんなと。

 理解者は亡く、二人きり。いつか、また、

お話ししようね、せんぱい。


[古びた日記帳より]

今回もお読みいただきありがとうございます。

さて、とても歪んだ本文ですね。この本文の中に私のこのことわざの考察について理解していただけると嬉しいです。

簡素な内容でありながらとても長文になってしまいましたが、この少ない情報量の中にいくつも浮かぶ不穏な六歳上のせんぱいと私の立場。表現できていたなら幸いです。


誰のお話かって?それはサブタイトルを見てください

 また次もお会いできると嬉しいです。   吉城桜

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