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いずれ  作者: 吉城 桜
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二章 新たな邂逅・有機の回答

衿子が紹介してくれた組織ー水原一派に踏み込んだ。そこは何とも、和やかな場所でした。

「おかえりなさい、千夜さん。」

と私と大して私と歳の変わらないような少女が言った。髪を結い上げ麗しい顔つきをしているその子は私を見て、

「お客様ですか。そんな予定は無いはずでしたが。」

「うん、先そこで会った。」

と玄関を指差しながらその人は言った。

「チヤさん、と言いました?予定が合わないのなら、また後日でも。」

あまりにも鋭い視線に耐え切れず、切り出した案だ。

「いや、いいよ。さっさと、話すこと話してしまおう。」

そう言って、その子にお茶を淹れるように云った。そして、私はソファに案内された。

「私はちょっと着替えてくるから、待っていて。」

とその人は言って階段の奥に消えた。私は座って落ち着いてその部屋を見渡せた。

 そこは事務所というよりも一般家庭の居間に近いと思う。中央には簡素なソファが二つ向かい合い、その間には木製のテーブル。これは少し洒落たデザインになっている。

「お待たせしました。」

と言って、気付いたらその子が紅茶を置いてくれていた。

「ありがとうございます。」

「千夜さんはまだ着替えているのでしょう。それでは間が持ちませんでしょう。」

と凛々しい態度でその子は言った。後に照れた顔をして、何故か怒気交じりにこう言った。

「じ、自己紹介をしましょうと言っているんです。察しが悪いですね。」

いや、今、その単語は初めて聞いた。紅茶を手に取り、一口飲んだ。美味しい。

「で、ですから、自己紹介を。」

てっきりこの子は自分からしてくれるのだと思っていたが、そうではないらしい。

「正岡 四季。シキは四つの季節の、四季。

十四歳。宜しく。」

一瞬、呆けた顔をしてその子は急に流れ込んできた情報を処理した。

「私は、鏡花です。長嶋 鏡花です。十二歳です。宜しくお願いします。」

と、慌てて言った。どうやら年下だったらしい。大人びた顔をしているので、同い年だと思った。

「はーい、お待たせー。」

と、今度は藍色に時折、黒い線の入った紬を着てその人は階段を駆け下りてきた。

 ようやく、ここに来た本来の理由が果たせそうだ。

「まずは、自己紹介ね。二人は済ませた?」

と、にこやかに聞いて来た。

「はい、済ませました。」

なので、どうぞ。というメッセージが込められている。どうやら、鏡花は口数が少ないらしい。

「そっか、じゃあ遠慮なく。」

すぅ、と息を吸って答えた。

「私は、水原 千夜。ここ、水原一派の頭領だ。歳は、二十四!ちなみに、教員免許を持っている!」

と、胸を張って、手を胸に当て、如何にも。「どうだ、凄いだろう!」と主張している様にしか見えない。

「それじゃあ、君の番だね。」

と、急に直る。冗談なのか素なのか分からない。

「正岡 四季です。漢字は四つの季節のシキです。歳は十四。」

「四季、か。好い名だ。まさに、日本だけの名前だね。」

四季というのが、はっきりとあるのは日本だけという意味だろうか。

「水原一派に加入おめでとう、四季!」

 これで、協力者は得られた。待っていてね、

母上。

*   *    *

 四季は、どうしているだろうか。

置いて行かれた私―津島悠樹は一人で廃れた道を歩いていた。

「はぁ。」

きっと、周りの人は私だと思いも、しないであろう思い溜息をついた。

 生来、私は一人が嫌いなのだ。だから、何時も一人であった四季を憐れんだ。そして、こう思った。

『一人であるのなら、私がそばに行けば離れることは無いのではないか。』

なんて卑劣な考え。四季を利用して自分の我儘を叶えている。

 そして、四季と話していて分かった。この子は一人が好きなのだと。そして、私ならその考えを変えられるのでは無いかと、密かに思っていた。

*   *   *

「鏡花。取り敢えず、全員紹介しておいてくれる?」

「はい、了解しました。」

とんとん拍子に話が進む。どうやら、衿子は当たりだったらしい。

「その前に、四季さん。」

と、鏡花が先ほどとは違う、明らかに仲間と認めた顔つきで話しかけてきた。

「着替えませんか?」

と言われ、ようやく気が付いた。私は制服のままだった。警察に身を追われることになるであろう者には目立つ、しかも所属機関が分かり過ぎる格好だ。

「と言っても、私のでは小さいと思いますので着物しかないのですが。」

と照れた顔で言う。

「私は構わないけど、着付けはできないよ。」

「そこは任せてください。私、完璧ですよ?」

実に頼もしい小さな先輩だ。

「お願いするね。」

「はい。千夜さんの部屋は二階の奥です。案内します。」

と鏡花に手を引かれ二階に上がった。短い廊下を奥に行き、千夜の自室に入った。

 箪笥の中を鏡花が探っていた。

「えっと、夏の紬はーっと。はい、これです。

色は何でもいいですよね?」

「うん、いいよ。」

どうせ、一時の服装だ。気にすることは無い。

「あっ、四季さん。襦袢、着ておいてください。」

と言われ、襦袢に袖を通したときに鏡花は、

「あああああああああ!」

と、大声で叫んだ。

「鏡花?どうしたの。」

「思えば、着物のほうが制服より目立ちませんか?」

何もいうことがない。自分の至らなさに頭を痛める。応急処置しか思いつかない私は言った。

「私は当分、外出禁止ということで。」


「おお、四季さん着物似合いますね。」

 あまりに称賛の目で鏡花が見るので少し、照れくさい。結果的に髪まで結い上げられてしまった。

「こう見ると、千夜さんと似ていますね。」

あんな、美人と比べられてもな。いや、うれしいけれど。「それでは、一派の皆さんを紹介しますね。」

と鏡花はは元気に言った。

「まずは、二階ですね。ここは女子部屋の様な場所です。四季さんも後で二階に部屋が与えられると思います。それでは、下に行きましょう。」

と、軽快に階段を駆け下りた。


一章で気が付いた方もいらっしゃると思いますが、四季は悠樹を下校時に置いて行ってしまっています。その続編と、水原一派に加わる続編です。サブタイトルである有機の回答は誤字ではありません。悠樹の回答と何も混じってはいないという意味で有機を掛けました。 今回も読んでくださりありがとうございます。これからも精進していきます。    吉城 桜

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