1ー8 魔法 極彩色 気絶
魔法詠唱考えるの恥ずかしい。と言うかファンタジー楽しんでますね。
それと外出するので予約投稿試してみる。不安。
僕は渋い緑茶を片手に魔法書入門のページを捲る。挿し絵や簡単な単語が使われていてまさに子供向けの入門書だった。
そこには折れ曲がったとんがり帽子とブカブカのローブを見にまとい、その間から目と思わしき黄色い丸が2つ書かれたキャラクターに吹き出しがついて漫画形式で進んでいく魔法書。
ステップ1と番号のふられた項目に『魔力を感じよう』とあった。隅っこの方にはキャラクターが『ここで躓いた奴は魔力無しの脳筋だかんなー。プークスクス』と指を指している。
のっけから読者をイラつかせるとは作者は良い性格をしているなと思った。
魔力の感じ方は3つあり、難易度も横に記されている。丁寧に色違いのキャラクターを使って挿し絵付きの説明があった。
一つ、難易度中~最高、人によって多少場所が違う体内の魔力溜まりを見つけてそこから魔力を汲み出す。
二つ、難易度低、他人に魔力を流してもらって擬似的に魔力を使って目覚める。
三つ、難易度最高、死にかけて瀕死になって虫の息になって目覚める。
まず二つ目と三つ目は無理だ。前者はこの特訓が秘密だから。後者は論外だ。だから僕は一つ目を選ぶ。
一つ目は人によって魔力溜まりの場所が違うから難易度にばらつきがあるが、まさか二の腕とかそんな微妙な場所ではあるまいて。ファンタジーのテンプレである丹田か心臓だろう。
目を瞑ってヘソの当たりに意識を集中させる。すると何か暖かいものを感じた。
本には汲み出すとあったので井戸で汲み上げるイメージと、ポンプで汲み上げるイメージで魔力と思わしき物を動かそうとする。
ビチャビチャァ・・・・・・。
目の前に極彩色の液体がぶちまけられた。量はコップ半分位だが粘り気が凄く、オモチャのスライムの様な広がり方で薄く伸びていく。
その時僕は丹田に虚無感と寒さを感じながら床に倒れた。そういや汲み出して溜めておくイメージをしていなかったと思いながら。
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僕は目覚めた。体は何ともなく、確かに感じた虚無感と寒気は嘘の様に感じなかった。
あの極彩色のスライムは蒸発したのか跡形も無くなっていた。シミすらカーペットには残っていなかった。
おそらくあれが魔力でいいんだろう。僕は冷めきった渋いお茶を啜るとページを捲った。
そこには親指を立てて労う様なポーズのあのキャラクターが描かれていた。
吹き出しには、
『このページを見ているなら君は魔術師になれるかもしれないぞ!現実は甘くないが頑張れ!』とある。とことんこの作者は読者の精神を逆撫でしてくるな・・・。
それよりも次のステップだ。
『君の属性は何ですか?』とあるが意味が分からない。同じページを目を皿にして探すが、ページをぶち抜いてイラストがあるだけだった。
吹き出しには呪文のような不思議な文が書かれている。
まさかとは思ったが一応唱えて見ると白く光る球が手のひらから出てきた。
手のひらを顔に近付けていたので、発生した光源からのダメージは深刻だった。視界は奪われズキズキと痛んだ。
ましになって来たら次のページに行く。
先程のイラストぶち抜きと対照的に文の多いページだった。
関係の無いことを長々と書いていた行もあったので纏めると、
赤→火属性 攻撃に一番特化した属性。付与魔法や回復魔法も出来ない事も無いがもれなく火傷する。
青→水属性 攻防一体のバランスタイプ。付与魔法や回復魔法も出来ない事も無いがもれなく凍傷になる。
緑→風属性 風による不可視の攻防が可能。弓などの飛び道具の操作をしたり、主に速さを上げる付与魔法ができる。回復魔法は不可。
黄→土属性 土等の自然物を媒介とした魔法の為魔力消費が最も少ないが、使用したものが攻撃力と防御力に直結するため決め手に欠ける。主に防御を上げる付与魔力ができる。
白→光属性 回復に特化した属性。極めれば死者を甦らせる事も出来るが攻撃性は無く、幻影を見せたり目眩ましが関の山。
黒→闇属性 魔力と体力の二種類をリソースとする不思議な属性。自分の怪我等の状態を相手に移したり出来る。付与魔法や回復魔法も誰かの物を誰かへと与える魔法になる。
になる。
どれもピーキーだが、まともに回復出来るのである意味一番良いのかも知れない。秘密に練習するなら目立たない魔法の方が良いだろうし。
早速入門書の光魔法ページを開く。入門よろしく初級魔法の呪文が並んでいた。
とりあえず一番上から試していく。
光球を出す呪文は、出でよ我が半身。属性球!だった。これはさっきの色を見る魔法と一緒で、ただ光源を生み出す魔法らしい。
次からは初見の魔法になる。しかし攻撃性は無いらしいから気張る必要は無いだろう。
深呼吸して気持ちを切り替える。
「我に光を、汝を見透かす慈愛の瞳を。『メディカルチェック』!」
ワンテンポ遅れて半透明の板が出てきた。ステータス表か!?と思ったがそんなこと無く、名前、年齢、健康状態が簡単に記されている物だった。
もしかしたらもっともっと上級な魔法にあるかもと思った。
次の魔法はRPGでもお馴染み回復魔法らしい。
「我に光を、汝を助ける慈悲の涙を、人々を癒したまえ!『ヒール』!」
一瞬目標にしていた腕が光るが特に何かあった様には思わない。何と言っても回復魔法だしね。まぁ代謝は上がったんじゃないかな?
さぁ、次の魔法試していこうか。今度は付与魔法だ。
「我に光を、汝を奮い立てる拳を、人々を動かしたまえ!『ダイレクト・ケア』!」
付与魔法はいろんな効力を武器や肉体に宿して物理的に扱える様にするものらしいが、この魔法は拳に弱めの治癒を宿す物で、殴れば殴った所が治ると言う矛盾した魔法になってしまっている。
簡単な話使えないのだ。
僕は微妙な効力にガッカリしながら次の魔法に備えて魔力を練ると、ビチャビチャァと極彩色の液体をぶちまけた。
顔から倒れ混んだ僕は、『しかし MP が たりない ってね・・・』と半笑いで皮肉っていた。