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1ー5 筋トレ 使用人 畏怖

早いところ5歳位にして他の男の子に会わせたい。

 

 三歳になった。ベビーベッドは取り払われ、柔らかなカーペットの感触を直に感じる。

 しかし二歳の時に脱走したからか扉の前にコの字の形をした60cm位の柵が設けられている。

 ベビーベッドが無くなると共に壁紙に絵が描かれたり、絵本を沢山並べた背の低い本棚が追加されたり、あまりにも場違いな豪奢なベッドが置かれている等内装が一新された。


 そして!なんと!ついに!僕は立ち歩く事が出来るようになったのだ!よたよたとだけどね!

 舌っ足らずな言葉遣いもかなり改善され、簡単な早口言葉を言えるくらいに滑舌が良くなった。


 せっかく歩けるんだ、夢の180cm目指して筋トレをしている。

 腕立て伏せ、腹筋、背筋、の3つを人知れず毎日している。どれも30回もすれば全身小鹿になるけれどね。

 うっすら腹筋が出てきている気がする。このまま上に成長していきたい。


 それと三歳にもなれば髪の毛が伸びてきてある程度目鼻立ちもしっかりしてきたから、自分の顔立ちを確認できる。

 前世は多く見積もっても中の中が良いところだったが、今世は違う!まるで二次元の住人を三次元にあわせて召喚したような特上の特上な美少年だ!

 

 まるでホッキョクグマのような透明感のある限り無く白に近い銀髪に、特大のルビーの様な透き通り映える赤色の瞳、大福の様にモチモチした日焼けやシミを知らない白い肌、幼子特有の可愛さの混じるあどけない表情の少年。それが僕だ。


 母親の化粧台の鏡を覗いた時には、これが僕なのかと目を白黒させたね。変顔してもカッコ可愛いから困る。ナルシストじゃないよ?


 そう筋トレをしながら色々考えていると、そば子が音をたてずに部屋へ入ってきた。

 そば子にはちゃんと本名は有るし名前で呼んで欲しいと言っていたが、初めての会話で思わずそば子と呼んで以来ずっとそば子と呼んでいる。


「そばこ~。はいってくるまえにちゃんとのっくしてよぉ~」


「すみませんお坊っちゃん。しかしメイドたるものどんな動作も静かにこなさねばなりませんので。

 それに新しい御本を持って参りましたが必要有りませんでしたか?坊っちゃんが特に気に入られていました作者様の新作ですが」


 そば子はあれから使用人としてかなり成長した。無音で扉を開け、100kgを優に越える荷物を鼻歌混じりに運んだり、欲しい物をいう前に用意していたりと色々進化した。

 今回のこの絵本も、新しい本が欲しいなとは思っていたが口にはしていない。しかも良い意味で裏切ってくれる。


「そうはいってないよ!しかもえほんとのっくのはなしはかんけいないよ!」


「こういう物はサプライズをするから意味があるものなのです。更に音をたてなければお坊っちゃんが息を切らしてトレーニングに励む姿を見る事が出来ますし」


「ぜったいにあとのほうがほんねだー!!!」


「そうですが何か?」


 しかし使用人として成長していくと共に性格が悪くなっていく。こうした会話でそば子に勝てた事は一度も無い。相手にされてないだけかもしれないけど。


 僕はそば子に駆け寄って絵本を奪い取ると、可愛く梱包されている絵本の包装紙を綺麗に剥がす。そして開封した絵本をを掲げると堪えきれないワクワクで胸がいっぱいになる。この辺は肉体に精神が引っ張られているんだろう。

 

 奪い取った時に大袈裟にこけたそば子が何か思い付いたいたずらっ子の様な笑みを一瞬見せると、大根役者でも指を指して笑う位に下手な泣き真似を始めた。


「この御年でお坊っちゃんが未婚の女に対して手を上げなされましたー。これは責任を取って貰うしかありませんねー」


「そーばーこー?うそなきはよくないよ!」


「責任を取って貰うしかありませんねー」


「やめてねそばこ?」


「責任を取って貰うしかありませんねー」


「・・・」


「取って貰うしかありませんねー」


「・・・もくてきは?」


「どうぞ私の御膝へ」


 僕は折れた。渋々そば子の引っ張られて膝に腰掛けると、ガシっと体を両手で固定された上に読み聞かせ始めた。

 あまりにも強く抱くものだから体に当たる腕と薄い胸板が痛い。


 するとそば子の抱き締める腕の力が強くなり、聞き分けの無い子供に言い聞かせる様な話し方で耳元に口を寄せて囁く。


「お坊っちゃん?」


「アッハイ」


 やっぱり僕はそば子に勝てる気がしない。めいどってこわいよ。

ホッキョクグマの体毛は透明で、重なりあって白く見えています。

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