1ー3 帰還 両親 第一声
この辺から少し加速しようかな?どうしよ。
絵本を読み続ける事三週間。
簡単な単語や意味を理解出来るようになった。未だに両親に会えていない。最近はそば子が膝に乗っけてくれるようになったから、そこは僕の定位置になった。
「お坊っちゃん#何を♭ますか♪」
話もまだ少し分からない単語が有るものの、ある程度なら理解できる。例えばさっきの言葉は『お坊っちゃん今日は何を読みましょうか♪』だ・・・と思う。
と言うか僕の事をそば子がお坊っちゃんって言うって事は、僕の両親は偉い人なのかな?会えないのは激務が理由とか?
僕が考え込んでいて返事をしなかったので、脇の下に手をやり抱き上げてそば子が見つめてくる。
急にそば子の顔がドアップになったので、声になら無い音を出して手足をぱたつかせた。
「お坊っちゃん*何を#ですか?」
目を細めて目を見据えて来る。蛇に睨まれた蛙とまではいかないけど、少し背中がヒヤリとした。
慌てて僕は剣を持った男が角が生えてて黒いやつと睨み合っている表紙の絵本を指差した。この本はファンタジーにあるような勧善懲悪の魔王vs勇者の絵本で少し他の本より厚く、小難しい単語も少し出たりしていて挿絵も多い。勉強目的ならなかなか良い絵本だ。
そば子がしぶしぶといったように、膝へ乗せると本を読もうとしたまさにそのときドスドスと荒い足音をたて、誰かがこっちに向かってきた。メイドさんや執事さん達は大きくてもトストスとしか音をたてないので、誰だろうとそば子の膝の上で考えていると、
バタァーーンッ!!!
「уфуйутитьйтуьысултпьйтяюйонсть!!!!!!!」
騒音がやって来た。かなり痩せていて、何処からその声量が来ているんだ?と疑問になるくらいうるさい。赤褐色の髪に余りにも似合わない精気の抜け落ちたような青白い肌。ギラギラした瞳の下には立派な大きい隈が出来ている。
怖エエエエエエエエエエエ!?!?!?
後ろにはあらあらと言っているような感じで扇子を口に当てている。
銀色の髪に先に来た男と違い、程よく焼けた健康的な白さを持った大人の美女がいる。泣きぼくろが色っぽいが、女として魅力を感じなかった。
(もしかしたらこの人が母親なのかな?綺麗だなぁ・・・。)
そう思ったのも一瞬。隈男が顔を近付けておどろおどろしい笑みを浮かべて、やせぎすな骨の浮いた腕を伸ばす。
涙腺のダムが決壊し、大洪水を起こした。・・・ついでに下のダムも決壊し、大洪水を起こした。ちくせう。
あれから少し落ち着いた隈男が美女と共に話を始めた。聞き取れた範囲で纏めると、
隈・仕事キツイ。ブラック過ぎる。一段落ついてやっと帰ってこれた。美女は妻。
美・産休と育児休暇で離乳食になるまではいた。離乳食になってからは屋敷の使用人に育児を任せきりにしていた。隈男は夫。
やっと両親に会えた、会えたが感動よりもキャラの濃さに圧倒され呆れていた。
隈男に肉が付けば分からないけど、ギョロリとした瞳が怖い。出来れば女顔でも見れる顔になりたい!
未だに僕はそば子の膝の上に座っていて余りにも酷かったので、意識せずに舌っ足らずになりながら『やれやれ』と言っていて、それを聞いた全員に自分を呼んでと更にカオスになった。
二度目の生を受けて初めて発した意味のある言葉は『やれやれ』でした。
・・・・・・なんか釈然としない。