ぜんとたなん
今回は短いです、非常に短いですし性格の悪さがにじみ出てますお互い。
その冷たい声色に、多少の恐怖を抱いた。外見は可愛らしい守ってあげたくなるような男の子。私より身長の低い男の子。でもその口からでる声はひどく冷たいもので、恐ろしかった。
「ねえ、聞いてるの?もう一度言うよ、何してるの?」
また冷たい声色でそう尋ねられたので、私は見てのとおり小説を読んでましたとだけ答えた。
にしてもこの人、どうやって図書室にはいったの?気配も物音も何も感じられなかったのだけれど、君スパイの素質でもあるんじゃないの、なんてくだらないことを考えながらじーっと彼の顔を見つめてみた。
やっぱりイケメンは目の保養ですねわかります、顔のパーツの一つ一つが整っていて羨ましい限りだが、廊下を歩くたびに女の子にすれちがい様黄色い声援をおくられるのは疲れそうだ、幸せな疲れ方ですね。
そのときだった。
「ねえ、そんなじろじろ見ないでくれる」
わあ、つ め た い。
その冷めた視線も素敵!なんて女の子がわんさかいるんだろうな。
「すいません、きれいな顔立ちですなーと思いましてね」
そう軽く返せば彼は、君正気?と尋ねてきた。いやいやいや、失礼だよ君……正直にありのままの感想をいっただけでなんで正気かどうか疑われなきゃいけないのだ。
そう考え口を尖らせながら正気なんですけど、といえば変わり者だねといわれた。
ほめてるんですか、貶してるんですか、間違いなく貶してますね。
「達者な口をおもちなんですね」
少しだけ嫌味をこめていう。
「君もね?類は友をよぶっていうヤツかな」
「あら、同属嫌悪の間違いじゃないですか」
「よく言うよ」
「でも貴方と話すのは嫌いじゃないですよ」
「奇遇だね、僕もだよ」
さきほどまでの険悪な空気が嘘のように、雑談を交わす。
この人との会話は嫌いじゃなかったりする、なんたって話がわかる人だなとこの会話で感じたからだ。
冗談も皮肉も嫌味も通じるので、案外楽しい。
けれども。
「私、あなたが嫌いです」「僕、君が嫌いかな」
思わず二人同時に笑ってしまった。
ほら、私たちは似たもの同士だ、猫かぶってますって顔にかいてるのだこの男は。
「やっぱり、同属嫌悪でしょう?」
「きっかけは類は友を呼ぶで現状は同属嫌悪ってとこかな」
「賛成ですね、では」
「じゃ、またあえれば、あわないことを願いながらばいばい」
「さよーなら、です」
そういって図書室を出る。
うん、案外有意義な時間をすごせたのではないだろうか、案外、だが。
今日はいろいろとあったわけだが、早く食事でもすませて、だらけたいものだ。明日は高校初の授業にそれがおわったら私は寮を抜け出してバイトにいかなければならない。
それに、勉強だってしなければいけないのだ、奨学金でここにいれる、これから1位をテストでとり続け、勤勉でなければ、私はここにいる意味がなくなってしまう。
早く今日は寝よう、そう思って自室にはしる。同室の工藤さんはまだ食堂にいるようでいなかった。
まあいいやと思いベッドにダイブする、あ、小説忘れてきた。