Desperate situation
でも銃弾は、私の足元の地面にめり込む。こんな威力だったら、私の身を貫くなど容易い。
自分に向けられていたら……と考えるだけで、呼吸が浅くなり、膝が笑い、手足の力が入らなくなる。
帰るにも逃げるのも、先に立たなきゃならない。でもその所為で、それができない。
「なんなら、僕が送り帰してあげようか?」
低いドスの利いた声で、少しずつ私に近寄ってくる。腰をついたまま、力の入らない手足で、後ろに下がるけど、少しずつしか下がれない。へたり込んでいる私とは違い、彼は立っているから、彼が私に近づくほうが早い。
彼を見上げたまま後ろに下がっていたから、手元の石ころに気づけず、手を滑らせてしまう。
「っきゃ……っ!?」
後ろ向きだから手をつくことがうまくできずに、そのまま土の地面に頭をぶつける。幸い石はなかったから良かったけど……
「……っ、いった……」
「そのまま、頭に石が当たれば帰れたのに……」
ため息交じりに低い声でひどいことを呟かれ、背中を冷たいものが滑り下りていく。
頭に石が当たれば、出血多量で死ぬこともあるのに、帰れるって……?
彼が言っていることがよく分からない。
ふと彼がしゃがみこみ、私へと手が伸びる。何なのかと考える間もなく、息が詰まる。
「帰るのに、僕の手が必要?」
目の前には、鬼の形相の彼がいる。首を締め付けられる感覚に息を吐くことも、吸うこともできない。
身体も動かしにくく、腹の辺りに重みを感じる。逃れたくてもその重みの所為で逃れることができず、されるがまま。
「……っぁ……ぐ……」
腹の重みと、締め付けられる首は何なのかよく分からないまま、視界が白く霞んでいく。
「なにされてるか分かってて泣いてんの?」
泣いてる……? 私が……?
視界は白く霞んでるのは、酸素がまわっていないからではなく、泣いてるから?
それに、彼に言われなければ、気づけなかったことがある。
腹の重みも締め付けられている首も彼の仕業だ。
彼に馬乗りされ、首を絞められていることを今さらながら、気づいた。
「……っはなし……っ、……ぅぐ……っ」
「嫌だよ。僕はあんたを送り帰す。そのためには、この世界で死なないと……っ」
彼が私の首を絞める手にさらに力を込めたのが分かった。
今度こそ私の勘違いではない。
視界が白く霞むだけでなく、意識も朦朧としはじめたのだから。
目の前にいるはずの白うさぎの耳が、決して晴れているとは言い難い、曇った空と同化して、上手く識別できなくなっていた。
お待たせいたしました……。
まさか一ヶ月も待たせてしまうとは、思ってもみなかったです。
今まで色々と仕事が忙しかったこともあって、進みがとても悪かったので……。
って言い訳にしかなりませんか。