表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Do you remember?  作者: 白降冬夜
White rabbit ~Bran~
5/31

White ear

辺りを見回していれば、前方に雪のように白い耳がぴょこんと立っているのを見つける。あれだ。耳を立てているのは、私が知る限り、二人だけだ。でも耳が白いのは、一人だけ。だから、すぐに分かる。

私が立っているのは、高台でかなり遠くの方まで見渡すことができる。だから、すぐに見つけることができた。


彼にすぐに追いつきたくて、左にある階段を無視し、目の前の傾斜をすべり下りる。その方が近いから。

素足だから、小石が当たって痛いけど…。なんて気にしてられない。気にするのは、彼に追いついてからでいい。


そういえば、遅刻する……とか、行ってなかった? 

なのに、なんでそんなにゆっくり歩いてるのかな? 歩いてて大丈夫?


なんて考えながら、歩いていく彼を私は走って追いかける。少しずつ追いついてくる。


「ぅわぁっ!?」


石に躓いて、情けない声あげて前に転んでしまう。とっさに両手をついたけど、その手が土で少しだけすべる。

完全に手が滑らなくてよかったと思う。完全に滑っていたら……と考えると、背中を冷たいものが滑り降りていく。

顔に泥……なんて、中等学校行ってるのに、かなり恥ずかしいよ。

地面に座り込んで、躓いた左足を見れば、親指の皮膚と爪の間から、血が滲んでいる。


「……っ、いった……っ」


親指の爪を少しだけ力を入れて、圧してみれば血が滲み出てくる。

なんとかして、止血したいけど……、絆創膏も包帯も何一つ持ってない。


「……、どうしよ……」


「大丈夫?」


不意に視界が暗くなって、見上げれば、私が追いかけていた人物が私を見下ろしている。

しばらく見てないのに、全然、見た目も変わらない。時間の流れが違うのかな?


白うさぎ……なんて言われてるけど、うさぎではない。どちらかといえば、人に近い。人の耳がない代わりに頭から耳を生やしていて、腰辺りに小さくて短い尻尾がついている。

人がよさそうな顔をしていて、丸めがねをかけている。タキシードを着ていて、蝶ネクタイ。小さい頃に戻った気分になってしまうほど、彼は、変わっていない。洋服も恐らくそれしか持っていないのだろう。


「さっき、転んじゃって……」


そう言うと、目線を私と合わせるように、腰を降ろしてくれる。血の滲んだ親指を見て、常備している鞄の中から絆創膏を出し、貼ってくれる。

近くで彼の顔を見れば、本当に綺麗だと思う。

小さい頃は、何かと私を守ってくれたし、涙した時は、泣き止むまで傍にいてくれた。


「これでいいかな? 帰ったら、ちゃんと傷口洗うこと。いい?」


あれ……? ブランがどこか変……?


怪我したら、いつも軽く応急処置をして、家まで連れて行ってくれて、手当てしてくれるのに……?


あれ……?


「ブラン……?」


呟いた通称に彼は、ピクリと肩を震わせる。

私に笑顔を向けて応えてくれる……と見慣れた反応を期待していたのに。


「その名前で呼ばないでくれる?」


彼が出した声の低さに愕然とする。


「よそ者がなんで、その名前を知ってるの? 猫とか誰かに聞いたわけ?」


よそ……もの……? 私が……? 


背を向けて、去っていく彼の背中を眺める。その背中は私を拒絶しているように見える。

しばらく会わない内にできてしまっていた、私とブランの間の分厚くて高い壁。


ひょっとしたら、彼は私がアリスだと分かっていないのかも知れない。

分かっていたら、こんな応対しない。


「……たし……は……っ」


私は、アリス。


彼が分かってないなら、伝えてあげないと……。

呆然とした頭で、よろよろと立ち上がる。左足に痛みを感じて、あまり体重をかけないように、気をつける。


「ねぇ……っ!」


通称で返事してくれないなら、そうやって声かけるしかできない。

声が聞こえたらしく、足を止めてくれた。でも、振り向くことはない。


「っ私、アリスだよ?  なんで、よそ者……なんて……っ」


「はぁ? あんたが、アリス? 冗談やめてくれる?」


紡ごうとした言葉を彼が遮る。声も聞きたくない……と言いたいのだろうか。

彼からそんな対応されると思ってなくて、視界が白く霞んでいく。邪魔だと思って瞬きすれば、頬をぬるいものが流れていく。何かと思って拭ってみれば、拭ったその手が濡れる。そこでようやく気づく。自分が泣いているのだ……と。


「ねぇ。泣かれちゃ、困るんだけど」


ため息混じりに彼が愚痴るのが聞こえる。その後、カチャリと無機質な音が耳に入った。


実は金曜日に執筆は終わってたんですが、更新する時間がなく、こんなことになってしまいました……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ