表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Do you remember?  作者: 白降冬夜
To the wonderland
3/31

Alice's glance

やっと、主人公目線ですからね。


ここまでが、やっぱ遠いな…。


すんませんっ!!  ←何回謝るんだよ? 私は…

……っ頭、変な感じ……。


何かボーっとしてるっていうか、鈍く痛いっていうか……。


さっきまで信じられないほど痛くて、私の手を握ってくれたおじさんの手をぎゅっと握り返してなんとか耐えたけど……。


「……って、ここどこっ!?」


おじさんの家の近くじゃないし……、全く知らないところにきちゃってるし……。

辺り見回せば、大小それぞれの大きさの扉がある。中には私が通れないほどの一番小さい扉だってある。

なぜかその扉の向こうだけは知っている気がした。


「懐中時計を首からぶらさげた白ウサギ……、ずっとにやけっぱなしの毛並みふわふわのネコ……」


その言葉が口をついて紡がれる。私が意図して紡いだものではない。

記憶の片隅にずっと追いやられていたものが、少しずつ鮮明になってくる。

私には、何がきっかけになったのか分からない。

全く知らない場所じゃない……ってこと?


あまり広いとは言えない部屋の真ん中にガラスのテーブルがある。その上には、『Eat me』とデコレーションペンで書かれている小さいケーキが一つと、『Drink me』と名札のついている液体の入った小瓶がおいてある。

あとは、どれかの扉の鍵。

飲んだり食べたりすれば、何が起こる気がしてなかなかそうしようという気は起きない。けれどそうしなければ、一番小さな扉の向こうへは行けない気がする。


「あいつの所為で、スノートさまのところに遅刻するじゃないか。ほんっとに、あのマリスの奴……」


ふと小さい扉の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

この声……


「ブラン……?」


意図せずに紡がれた言葉のおかげで、脳裏に身なりが浮かぶ。

ウサギの耳を生やした、めがねをかけた肌の白い男性で、首から懐中時計をぶら下げている。仲の良い人からは、ブランと呼ばれているが、ちゃんとした名前がある。それが白ウサギ。

彼が仕えているのは、スノートと言って、鼻がくすぐったいのかいつもくしゃみをしているふくよかな……いや、かなり太っている公爵夫人だ。

彼女にはもう一人の従者がいて、猫耳を生やした泣き黒子のある男性だ。彼は白ウサギにだけ、“マリス”と呼ばれているが、他の人は、チェシャ猫と呼ぶ。なぜ白ウサギがそう呼ぶのかは、私には知らない。


思い出せてきている。

なのに、なんで……、家族のことは思い出せないのだろう。

それが歯がゆい。


そんな場合じゃない。早くここから、抜け出さなきゃ。

こんな所にずっといたって、家族のことは何一つも思い出せないのだから。


もう一度、ガラスのテーブルに向き直る。

今なら何をどうすれば、向こうに出られるのかがよく分かる。

小さいケーキと鍵を手にとって、小瓶の中の液体を一口だけ飲む。

そうすれば思い出したとおり、テーブルが大きくなっていくように私の目には見える。しかし、実際は自身の身体が縮んでいるだけ。天井も高くなっていくように感じ、そして身に纏っていた緋色のワンピースもサイズが大きくなっていく。

縮むのが止まった頃には、ワンピースに埋もれて真っ暗で何も見えなくなっていた。ワンピースのリボンを身体に巻きつけてその山から抜け出し、小さい扉の鍵穴に鍵を差し込む。そうすればすんなりと扉が開き、外の光が差し込んできた。すっかり山へと変貌してしまったワンピースを扉に押し込み……




その際に自分も一緒に外へと足を踏み出した。



忠告!。今までのサブタイトルは確か英語。一番最初は、「___'s glance」でしたよね?訳すと、「___の目線」ってことです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ