Uncle's glance
大幅変更っ! すみません。
このほうが分かりやすいかな?
と思ったので。
ほんっとすみませんっ!
今日は晴れだ。空には青空が広がり、家の近くに植わっている木には小鳥が数羽止まっていて、コーラスを聞かせてくれる。家に入ってくる風も心地よく、眠気を誘われる。
しかし今は、そんな場合ではなく、少女……アリスの失われた過去の鍵を探そうと必死になっているところだ。
彼女は10歳にも満たない頃に、家が火事で無くなってしまい、家族もいっぺんに亡くしてしまった。彼女にはそれ以前の記憶が全くない。故に彼女は家族がどんな風であったのか、全く覚えていないのだ。もちろん、家が火事でなくなったことも覚えていない。
だからアリスにも協力してもらい、彼女の心に浮かんだ物を一つ一つ上げてもらっている。
しかしアリスの口から紡がれるのは、懐中時計を首にぶら下げたウサギや、ずっとにやけっぱなしのネコだ。そんな動物が実際にいるとは思えず、彼女のユニークな想像物だとしか思えなかった。けれど職業柄、捨て置くことはできなかった。どこかで役に立つかもしれない。
「もう少し現実的なものは、浮かばないのか?」
「そんなこと言われても……」
彼女は一人掛けの黒いソファに深く座り込み、背もたれに頭まで凭れ掛けている。一見楽そうには、見えるが彼女の額には汗が滲んでいる。無理をするなと何度も言ったが、彼女は聞いてくれない。恐らく家族のことを思い出せないことに焦りを覚えているのだろう。
実に家族を亡くした火事から既に5年以上経っている。
彼女には、家族のことを思い出すことが精一杯の親孝行だと考えているのだろう。既に亡くなってしまっている、覚えていない家族に他の方法で親孝行などできない。
「っ!?」
彼女が息を詰めるのが、2m離れたここからでも聞き取れた。彼女を省みれば、頭を抱えて少し辛そうに見えた。今までにも数えるほどあったが、これほど痛そうなのは初めてだ。心配になり駆け寄る。
「アリス!? 大丈夫か!?」
俺が握りしめたアリスの手は、俺の手を強く血が止まりそうなほど、握りしめてくる。現に指先から血の気が引いていき、肌色だったものが白く色が変わってきていた。それを気にするよりも握りしめられた手の方がかなり痛い。しかし、彼女は俺よりも痛い思いをして、耐えている。自分の手の痛みよりも、彼女の頭痛の方が気になって仕方がなかった。
彼女が俺の手をさっきより強く握ってきた。それには、流石に痛みに俺の顔が歪む。
「……っ、だから、無理するなと言っただろう?」
俺の言葉が今の彼女に聞こえるはずなどない。
「……っ、周りの人に変な目で睨まれて……、っ恥ずかしくて……っ」
小さい頃アリスがそんなこと言っていたのを思い出す。10歳になる前。6歳ぐらいだっただろうか。一人で俺のところにやってきて、そんなことを話してくれた。話してくれたというより、愚痴っていたと言う方が正しいかもしれない。
俺はその先を知っている。その先を思い返しながら、アリスにその先をすすめる。
「っそれで……っ、……ぁ……」
彼女の手からふっと力が抜けて、ソファの上に力なく垂れ下がる。ずっと彼女の手を握っていたはずなのに、いつ力が抜けたのだろう。
あまりの痛さに気絶……したのか?
気絶というよりも、魂が抜けている人形みたいだった。
小さいながらも、規則的な呼吸音が聞こえてほっと息をつく。
しばらく……、起きないだろう。
だから俺は、彼女をベッドルームへと運んであげた。
できたら、おじさんの名前もあててほしいなぁ~。
って、そんな余裕があればの話。