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Do you remember?  作者: 白降冬夜
Tea party of 3:00
13/31

Mad hatter

またしばらくお待たせしました。執筆環境がよくなってしまった分、弛んでるかもです。

すみません。

「そこで、こそこそなに話してんの?」


「ぅ……っ……」


ミヅキとソリスが肩を飛び上がらせて身を固くするのが分かった。

この声は、チェシャ猫だ。やはり猫だけあって、耳はいい。くるりと後ろ向くと、耳だけをこちらに向けたチェシャ猫がまだ帽子屋と話していた。

うわ、興味津々……。

かなり聞きたそうな様子で耳がピンときれいに立っている。

それよりも帽子屋と話しているのに、よくこちらに話しかけられたと思う。一度だけ会話を中断したのかな? もし帽子屋が話している最中だったら、彼に対して失礼だ。


「ねぇ。ハッターは時計を止められて、不自由してない?」


またミヅキとソリスが肩を飛び上がらせて、身を固くする。さっきから、身体の力は全く抜いていないと思うから、さっきよりも固くなったのだろうか。

思い切りチェシャ猫には聞こえていたようだ。じゃなければさっきの言葉は言わないと思う。

帽子屋の方は、チェシャ猫と目線を合わせようとせずに、視線を左右に泳がせている。


「……っ……、不自由なんてしてないよ。むしろずっとミヅキやソリスとお茶会ができて楽しいくらいだよ」


そういう帽子屋の声が強張っている。

なんか……変……。

帽子屋ってそんな喋り方したっけ? もしかして……嘘……ついてる?


「ありゃあ、……嘘だね」


身体の硬直から立ち直ったらしいミヅキが、椅子の背もたれに肘をかけて帽子屋を眺めていた。


「やっぱり……?」


女王様御用達だった帽子屋が話し相手の目も見ずに、話すなんておかしい。

大体テキパキしてるし、話し相手の目を真っ直ぐに見て紳士みたいに話してるのを何度も目にしたけど、嘘つくとあんなになるんだ。


「嘘じゃない」


ミヅキの声が聞こえたらしい帽子屋が彼を見て反論する。それさえも自信なさげな表情や言葉だった。


「まあ、ハッターの言いたいことはよく分かるよ」


いつもの飄々とした態度で、チェシャ猫がこちらに振り向く。なぜかまたミヅキとソリスが身を固くする。チェシャ猫がこちらに向いただけ……なんだけど……。


「ミヅキもソリスもそんな固くなってどうかした?」


「……っ!?」


彼らが身を固くしているのを交互に見比べて、チェシャ猫が尋ねた。さらに身を固くして、そして息を詰めるような音までも聞こえた。

チェシャ猫って耳がいいだけじゃないの? なのに、なんで二人は身を縮めるわけ?


「ミヅキやソリスといっしょにお茶会してるのは楽しいけど、二人のことちょっと心配なんでしょ?」


チェシャ猫はくるりと帽子屋に目を向けて、返事を待つ。目を向けられた彼は、黒い山高帽を脱いでチェシャ猫とは目を合わさずに視線を泳がせる。

帽子まで脱ぐ彼を見たのは久方ぶりのことで、いつもは挨拶するとき、相手に心の底から謝るときだけ帽子を脱ぐ。それ以外で、帽子を脱ぐ彼を初めて見たんだけど。

どうやら、図星……みたいだ。

元々、帽子屋はチェシャ猫には頭が上がらないのは知っている。


「……心配って、どういうこと?」


身体の硬直から解放されたらしいソリスが不可思議な表情で帽子屋に問うた。しかし帽子屋は何も言わずに、俯いたままだ。


「ハッターは、自分に厳しいけど他人には甘いって、知ってた?」


ミヅキも身体の硬直が解けたらしく、ソリスと二人して頷く。

私も何となく、そうだろうな……とは思ってたけど。

自分の身の回りのことはいつも完璧で、狂いがない。けれど他人に関しては、遅刻しても「次から気をつけろ」っていう程度。自分は時間のこと厳守してるくせにね。その所為で予定が狂っても、他人の所為にはしないし。


「二人に少しぐらい時間あげたいけど、自分の時計は3時で止まったまま。3時って二人とお茶飲んでる時間でしょ?」


だから……か……。


「自分に嘘までついて、2人の自由を拘束してるわけだし……」


チェシャ猫は帽子屋の前に立ってはいたが、顔はちゃんとこちらを向いていた。

その前に心を見透かされた帽子屋が呆然と立ち尽くしている。頭上付近にどよ~んとした空気が漂っている気がする。こんなにも落ち込んでる彼を見るのは初めてだ。


「ハッター……」


ミヅキとソリスの悲しみのこもった視線が帽子屋に向いていた。さっきまであんなに鬱陶しそうだったのに。

それに気づいた帽子屋が二人の方に向き直り、ひゅっと空気が切れそうなほど早く頭を下げる。


「ごめんっ!! 時計が3時で止まってて、その時間はいつも3人でお茶会してる時間だし、だから3人じゃないと落ち着かなくて、けど……」


頭下げすぎてつむじ丸見えの帽子屋はまだ頭を上げなくて、なんだか見ていて不憫になってきたらしい二人が、声を揃えて「もう、いいよ」と制した。


「ぇ……?」


帽子屋があっけらかんとした表情で顔を上げて、ミヅキとソリスを交互に見る。

二人は顔を見合わせて溜息をついてから、帽子屋へと再び目を向けた。


「ハッターの考えてることは、猫が教えてくれたし、ね?」


ソリスに同意を求められ、ミヅキはコクリと頷いた。


「このことは水に流して、時計が進み始めたらいつもみたいにお茶会しようって」


ミヅキの前向きな言葉に帽子屋は頬を緩める。心なしか瞳も潤んでいるようにも見えた。


続きは今書いてます。なるだけ早く書きます!

だから、続きも楽しみにしててくださいっ!!

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