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その後も、延々と現在までカエデ女医の話は続いた・・・。




本当に聞くも涙、語るも涙の物語(現在形進行形)であった。


何回カエデ女医は話途中で泣いたのだろうか・・・・。







現在までの経緯を簡単に説明すると、

あの大学の出会いから、ドクターは言葉どおり彼女から片時も離れなかった。




そして、医師の資格も簡単に取得すると彼女の勤める病院へと一緒に勤めるために、ありとあらゆる手を使ったとか使わなかったとか・・・。



彼女が転勤願いを出す。

彼が追いかける。


彼女が転勤願いを出す。

彼が追いかける。


彼女が転勤願いを出す。

彼が追いかける。


その繰り返しである。






そして、どんな病院であろうと腕のいい外科の医師は喉から手が出るぐらい欲しいらしく、彼はまさに引っ張りダコ状態。

性格はどうあれ、どの病院でも彼は歓迎されるらしい世の中にそれでいいのかと疑問がでてくる。






例えば、

良くあることなのだが、彼に良く手紙や電話が来る。

その内容とは、主にヘッドハンティング。

今の病院の給料の2倍、いや3倍出すからうちの病院へ来ないか?

というものである。


だが、彼はいつもそれを簡単に断る。考える時間もなくあっさりと。


曰く、

「お断りします。貴方の病院には私の欲しいものはありませんので。」


これで全部済ますのである。

どんなにいい条件をだされようともである。


ある意味自分に正直な、天晴れな行動基準である。




まぁ、カエデ女医にとっては迷惑この上無いことであるが。



病院内では「結婚まで秒読みね」という噂が広まっているが、カエデ女医としては、それは断固最後まで拒否しているらしい。








カエデ女医の告白、もとい愚痴が一通り終わるのを見計らってユウキは水を渡す。


ごくごくと美味しそうに水を一気飲みするするカエデ女医をみて思うのは

何と言うか、『可哀想だな』という一言に尽きた。

別にこの人が何をしたわけでもないのに、たまたま昔にあのドクターととなり同士だったというだけでここまで付きまとわられるとは・・・・。





「まぁまぁカエデ先生落ち着いて下さい。」


「そうですよ。何があったか知らないですけれど、元気を出してください。」


「そうそう。例え嫌な事があっても明日はきっといい事ありま-」


ユウキの言葉が止まる。

そして、カエデ女医の顔が歪む。嫌そうに。









ユウキの後から聞こえたもう一人の声。

それは今まで話していた人物の声だった。

そう正に「噂をすれば影」である。









「な、ななななんでドクターがここにいるんですか!?」


ユウキが飛び上がり、ドクターを非難するように指を差して叫ぶ。


「それは、こっちの質問ですよ。どうして、ユウキ君がここにいるのですか?」

「そ、それは・・・急にお腹が痛くなって!!今日夜勤のカエデ先生に見てもらったのよ。」

どうだ、まいったかと胸を張りユウキは高らかに宣言する。

仮病だということは黙っておく。理由があればそれでいいのだ。






「そうですか、いいでしょう。

私は、カエデに夜食を届けに来たのですよ。」


そういって、お弁当箱が入った紙袋を少し掲げて見せる。

そこからはいい匂いがしている。

もちろん、コンビニなどで買ってきたものではなく手作りの匂いである。



その匂いを嗅いだ瞬間「ぐきゅるるるぅうう。」というお腹の音がユウキから盛大に鳴った。



思わずお腹をユウキは抑えるが、そんなことでお腹の音が無くなるはずもなく・・・。

顔を真っ赤にして目の前のドクターを見上げると、にっこりと魅力たっぷりの笑顔で返される。




「本当のことを言うのなら夜食を分けてあげてもいいですよ?」

どうします?と悪魔の顔で尋ねられた。


「い、いいいらない!!」







「そんな意地悪いうんじゃないよ、カオル。分けてあげなさいよ。

どうせ、いつもみたいに二人分以上作ってきてるんでしょ?」


「カエデがそういうなら。」

そういって、お弁当を広げようとするが思い出したかのように手を止める。




「おや、そういえば腹痛でここにいるんでしたね。じゃあこんな夜中に食べるのは良くないですね。」

といって、またお弁当を持ち上げる。




「だから、意地悪は止めなさいって!」

バンっと軽くカエデがドクターの手の甲を叩く。



「全くアンタもそのひねくれた性格どうにかしなさい!

自分の気に入った相手には意地悪するんだから。」


「おや、妬いてくれるのですか?」

「誰が!!」


「大丈夫ですよ。私が一番愛しているのはカエデですからね。」

その言葉にカエデは心底嫌そうな顔をする。


確かに、今までの過去の事を聞いた今ではその気持ちもよくわかる。



「さて、それじゃあカエデの了承も得たことですし、夜食タイムにしましょうか。

特別にユウキ君にも分けて差し上げますよ。」


にこりとドクターが笑う。



「・・・それはどうも。」












美味しそうに夜食を食べるカエデ女医とそれを見守るドクター。


最初はあんなに違和感ありまくりだと思っていた二人が意外にしっくりしていることにユウキは気づいた。


目の前の二人でいることをとても自然だと感じる。

まるで足りないピースが嵌ったみたいだ。






ああ、そうか。

そういうことなんだ。



優しくて暖かいカエデ先生。

喜怒哀楽の感情の波が激しくて、つい同情したくなるような可愛い先生。



それは全部、ドクターが足りないと思っているものなのだ。

だから求める。

自分にないものを。


喜びと少しの嫉妬を含ませて。






ユウキはおすそ分けしてもらった夜食を急いで食べきると「ごちそうさまでした。」と二人を前にして合唱する。



その意味にはもちろん二重の意味をこめて。



二人の幸せを祈って。









ここまでお読みいただきありがとうございます。

一応これにて完結となります。


誤字脱字などがありましたら教えていただけると嬉しいです。



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