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小学校にあがる前にカオルはまた引っ越していってしまった。
だけど、私たちはまだ繋がっていて、電話もよくしたし、遊びにもよくいった。
小学校に入って字を覚える頃になると、すぐにカオルは手紙を書いてくれた。
そして、私も同じように手紙を書いて出す。
それをずっと続けたおかげで私の字は上手くなり、漢字にも強くなった。
中学に入った頃あたりから、なかなか会うことが出来なくなり、カオルがアメリカに渡ると、完全に会うことはなくなった。
だけど私の中でカオルは無二の親友で、そしてカオルもそうなんだと無条件に信じていた。
そして、会えない変わりに、今度はメールでもやり取りをするようになった。
私たちは本当に仲が良く何でも話し合った。
好きな本、TV、映画、学校の事、他愛もない話ばかりであったけど楽しかった。
高校に入り少しした頃、初めての彼氏が出来た。
好きだったわけではなかったが、相手から告白してきてくれたことが嬉しくて付き合った。
彼は優しく誠実な人だったのだが、1ヶ月もしないうちに別れることとなった。
突然彼の方から一方的に別れを告げてきたのだ。
理由も何もわからなかった。
それなりに好きになり始めていたころだったから、私はとてもショックだった。
その事はもちろんカオルにメールで書いた。
すぐに返事は返ってきて、その言葉に私は癒された。
それから、何人かと友達からの紹介やら何やらで、付き合うことがあったがやはり全て1ヶ月以内で別れてしまう。
原因は不明。決まって私が相手から振られてしまう。
友達には呆れられてしまったが、唯一カオルだけは優しい言葉をかけてくれた。
『それもアイツのせいですか?』
逃げられないと悟ったユウキはもう好奇心に身を任せ全て知ってやろうと話の途中で腰を折る。
『そう!!』
当時を思い出したのかカエデ女医は机に泣き崩れる。
『高校の時に付き合った子に後で連絡入れて、それとなく聞いてみたら変な手紙や物が届いたり、家の中や学校の帰り道で変なモノが見えたり、その内夢でも私と別れろ~なんってソレに言われて恐くて別れたんですって!!』
最後には怒りのボルテージを満タンにして怒鳴られる。
『あ-、~~うんうん、なるほどね。やることが細かいね。あの男は。』
黒魔術なんか一体どこで覚えたんだろう・・・。
『そこに感心なんかしない!』
『・・・まぁまぁ。それで?
高校では彼氏は出来なかったけれど、それなりに過ごすことが出来たんですよね?
あの男はアメリカにいってたことですし。』
そう、問題は大学に入学してからだった。
ここで私は今まで信じてきたもの全てを破壊されたのだ。
高校では、昔から憧れていた医者になるために猛勉強をし、何とか志望の医学部に入ることができた。
合格通知が来た時は嬉しくて、すぐにカオルにメールを送った。
すると、返事には2倍嬉しいことが書いてあった。
私の合格に対する喜びの声と共に、カオルが同じ大学に通うことが決まり、日本に帰ってくるとの知らせだった。
カオルが入学してくるのは9月の途中から編入という形からだったが、とても嬉しかった。
また、あの頃のように一緒に過せるのだと信じて。
大学に入学して、勉強は大変だったが、何とかついていくことができ大学生活に余裕が出来た頃、ついにカオルがやってきた。
最初は空港まで迎えに行きたいといったのだが、カオルは「後のお楽しみです。」といって教えてくれなかった。
そして、再開の約束の日。
私はソレをカオルだと認識してしまった瞬間に不覚にも泣いてしまった。
悔しくて・・・。
やっと新しい後期が始まり、胸を高鳴らせて私はカオルを待っていた。
カオルと一緒にショッピングしたり、旅行したり、また同じサークルとかにも入れたら楽しいだろうなぁという夢を描いて。
そして、どれだけカオルが美人に成長しているかがとても楽しみだった。
当時の写真(3~4歳)を見直しても、とても可愛らしい女の子だったのだ。
さぞ、綺麗になっているだろうと、私は信じて疑わなかった。
ここメールでのやりとりでも何故かカオルは写真を送ってくれなかった。
私の写真は欲しがるくせに、悔しくて私も写真を送らなかった。
だが、約束の時間になっても、それらしい女性は現われなかった。
時計を見ながら、私は胸を高鳴らせて彼女を親友を待っていた。
だが、その想いは一声で全て無に消えてしまった。
「カエデ!!」
見知らぬ男の声で自分の名前が呼ばれ、条件反射で私は振り向いた。
そこにいたのは、当時の面影を残した、だけど誰がどうみても男にしか見えない美青年だった。
男が嬉しそうに笑って駆け寄ってきた。
力の限り抱きつかれ、私は固まるしかなかった。
男はハッとするほど印象的な男だったからだ。
鴉の濡れ羽という程艶々とした髪、驚く程端整な顔をした人だった。
華奢だと思わせる体つきなのに意外に背は高く、だが決してひょろ長いというイメージは沸かせない人物であった。
こんな印象的な人に会ったら忘れることなどできないだろう。
その証拠に周りの人間が皆こちらを見ている。
「カエデ、全然変わっていませんね。すぐにわかりましたよ。
ずっと会いたかった・・・。」
身体が蕩けそうになるほど、甘い声で甘い言葉を囁かれたのに私は何の反応もすることができなかった。
否、普通の女性がするような反応にならなかったというのが正しいか。
頭が正常に機能し始めると、私は思いっきりその男性を殴り飛ばした。もちろんグーで。
周りの女性とから「キャー」という声が聞こえる。
顔を殴ったからだろうか?
「貴方誰ですか?いきなり抱きついてきて、次に同じ事をしたら警察に突き出しますよ。」
「酷いですね。久しぶりにあった幼馴染に対して、第一声がソレですか?
私はカエデに会えるのをとても楽しみしていたのに。」
彼は殴られた頬を抑えながらも嬉しそうにそう答えた。
「何を言って・・・!? まさか!!」
私はやっと彼に見覚えのある理由を見つけた。
カオルに似ているのだ。髪の色も、性別も違うはずなのに、その目と雰囲気が同じだった。
そして、笑い方も。
「・・・まさか、まさかまさかまさかまさかまさか!!!!!!!!」
「そのまさかですよ。カエデ。私があなたのカオルです。
やっぱり勘違いしたままだったんですね。」
そうやって、にっこりと微笑む顔は昔のカオルのままであった。
この男とカオルが同じ人物であると認識した瞬間、ツゥーと暖かいものが頬に流れた。
私は泣いていた。
これほどショックなことは今までにないというくらい、大ダメージだった。
悲しくて、悔しくて涙が後から後からとめどなく流れる。
女の子だと思っていたからこそ、メールや手紙でアンナ事もコンナ事も話せたのだ。
それをコイツは私が勘違いしているのを知りながらも訂正もいれなかった。
それはすなわち、その方が都合良かったからだろう。
・・・いろいろと。
私は涙を拭おうともせずに、ただ目の前の男を睨みつける。
それは誰がどう見ても友好的には見えず、むしろ眼力で人が殺せるなら、殺せるほどの威力があった。
だが、男はそれを平然と、いや好意的に受け止める。
「泣くほど、私に会えたのが嬉しいですか。私も嬉しいですよ。
これからはずっと一緒ですからね。」
ここまで行くと、馬鹿か天才か、それとも変態かのどれかである。
そしてこの男はその全てであり、この時にいった言葉を今もずっと守り続けている。
『ず~と気づかなかったんですか? ドクターが男だって?』
『アイツは昔からあんなしゃべり方だったし、線も細くて、だいたい中学上がってから滅多に会わなくなったのよ!!
声変わりなんて私が最後にあった時はしてなかった!!
服も小学校までは女の子みたいな服だったし、そこらへんの女の子より何倍も可愛らしかったのよ!!
あれをどうやって男だと思えってワケ?
あー!!!もう、今思い出しても腹が立つわ!!!!!』
「全部アイツにはめられたんだ~!!」と、カエデ女医は髪を振り乱して騒ぎ出す。
ユウキはそれをみて、「可哀相だな~」と同情的な視線でカエデ女医を見つめ続ける。
だが、肩代わりなど死んでもごめんだなと胸に手を当て冷静に思った。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があれば教えていだだけると嬉しいです。




