プロローグ
もうやめて、誰か!誰か助けて・・・・
メグミは自分自身が怖くて堪らなかった。
壊れていく?
いや、壊していく。
壊したい?
いや、壊わされるのが怖すぎるから、せめて自分の手で・・・壊せるものなんて元々ありもしないのに・・・
めぐみは故郷の田舎を離れ、誰一人自分を知らないココへきた。
上京とかそんななんとなく希望の光に満ちた行動ではない。
きっと全然それとは逆の意味を含む行動。
敢えて言葉にするなら夜逃げが一番妥当なんじゃないかと思う。
そうだ。
めぐみはあの日沢山のモノ(者)から逃げた。住んでいたアパートのドアを閉めて全力疾走で_
紅のベースに大きめな花柄のレトロな絨毯がひかれた螺旋階段の下、お客を待っていると
待合室と廊下を仕切っている少し厚手のカーテンのような仕切りからボーイがお客をこの階段の下に案内する。
「いらっしゃいませぇ」
そこでチカになる。
「宜しくね。」
お客は欲望を必死で隠し冷静を装ったように笑みを浮かべる。
その欲望をしっとり包み込むような眼差しでチカはニッコリ笑ってみせ、腕を組み階段を上り
203号室_
履物を扉の手前で脱ぐように言い、チカは部屋に招き入れる。
めぐみが逃げ込んだこの小さな部屋。
究極の愛と孤独を生み続ける様に見えて何も生まない無の空間。
大半の男にとっては無かったことに出来る時間、不思議な異空間。
理性や、社会的地位などを全部書き捨てて
ただの男として限りなく雄になれる場所。
そしてチカ自身まっさらで相手と向き合える唯一の空間。
誰もつまらないことは訊かない。
ただ目の前にいる相手が心地よくあればいいのだから。
どうしてこうなったんだろう?
どうしてここにいるんだろう?
理由は簡単だ。もう壊せるものがないくらい最低で壊れてしまいたい。
ただそれだけ。
きっと何もなくなったときやっと安心するんだろう。平穏ってやつが訪れるんだろう(あるならね)。
セックスしながら想う。あの過ぎた日のことを。