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第三十八話 二年後4

だめだ。


遅れてすいません。


なんか、本当に駄文だ。


もっと本を読もう。



「意味わかんね。ああ、意味わかんね。あぁ、そうだ。あれだ、幻影の魔法使って、実は今倒れているこいつは偽物で、お前が本体なんだろ?」


セイン(偽)は、現状を自分の都合の良いように言い当てた。


地面に倒れている紅鷹の事を偽物と判断し、それは、セイン(偽)を油断させるための物だと思考した。

「勝手に事実を捏造して解釈するのは良いが、別にそこの地面に横たわっている奴は幻影でも、偽物でも無いぞ」


やはり答えたのは地面に横たわっている紅鷹の後ろから聞こえる。


「それにしても、姿がばれないようにフード付きのマントを付けてたのにバレルなんて、まさか、魔力で感知したのか?」

紅鷹の後ろにいる、フードを被った不自然なそいつは、セイン(偽)に問。


「いや、確かに、魔力は全く同じだ…………、いや、ありえねぇ。同じ人間が同時に二人存在するはずは無い」


あくまで、現実を否定するセイン(偽)にフードを被った奴は答える。


「」「これがびっくり、可能なんだな」

「そういう未来が俺の時から決まってんだよ」

「ハっ…! 意味分かんねぇ! ……いや、もうどうでも良い」


セイン(偽)は、考える事を止め、いつも通りにすることにした。


「殺れればどうでも良い」


セイン(偽)は、地面に横たわっている紅鷹の真上を踏み込みで飛んでフード付きマントを羽織っている奴に急接近した。


それを見たフード付きマントを羽織った奴は、自然と半身になり、マントの中で、左手を左腰あたりに。


右手は左腰よりやや前に。


「死ねええええ!」


セイン(偽)が、右腕を貫手の形でフード付きマントを羽織った奴の心部に向かってしなやかにかつ、素早く貫く。



それを、フード付きマントを羽織った奴は、右腕を斜め右上に一閃。


「っん!?」


セイン(偽)の声と、何硬い物どうしがぶつかる甲高い音がした。

「ちっ。さすがに自己防衛は発動するのか…」



セイン(偽)に対して憎らしい言い方で呟いた。


フード付きマントを羽織った奴のふりぬいた刀は、魔法を壊す力は元来、有るはずも無い。

 

セイン(偽)の身体は、自然と物理的攻撃を防ぐ魔法が自動的に発動したが、それが意味するのは、本来の防御力が、フード付きマントを羽織った男の攻撃力より劣っているということ。


だが、それは、決して、直接的なダメージにはならない。


「まあ、そんな事予想の範囲内だから、付加魔法位学んでるさ」

言葉通り、よくある一般的な炎を纏ったりはしないが、その変わり、毒。


人間の身体で言う、神経性の毒で徐々にに内側から崩壊するように、魔法の、セイン(偽)の自己防衛魔法を、内側から毒を繁殖させる。


後は、時間の問題になる。

そんな事が施されている刀だとは知らないセイン(偽)は、自身の身体を完璧に切り落とせなかった刀と、フード付きマントを羽織った男にまた、優越感が戻った。


「はっ、そのナマクラじゃあ、俺は斬れないぜ」


分かっている。


フード付きマントを羽織った男は理解していた。


今の場合は、刀の問題では無く、どんなに良い刀でも完全に腕を切り落とす切れ味を持つ刀は存在しないと思われる。


だから、毒にしたんだ。

「今のうちに笑ってろ。すぐに自分のその慢心が仇になる」


「あぁ? ハッタリなら止せよ。んなもん、きかねえって」


「じゃあ、試してみようか」


フード付きマントを羽織った男が、踏み込み、未だ地面に横たわる紅鷹の真横を摺り抜け、先程と同じ腕を斬り付ける。


またもや、甲高い音が響くが、セイン(偽)の腕が斬れる気配は無い。


そして、もう一度、振りかざした刀をセイン(偽)が、左手で白刀取りで刀を捉えられてしまったため、動かせない。


「これで、お前は-」


セイン(偽)が無駄だとでも言おうとしたのかは分からないが、言葉を言い切らせないようにフードの男が左足で、回し蹴りの用途で、身体を捩りながら、セイン(偽)の腹部に入れたのが、そのまま吸い込まれるように入って吹き飛んだ。

その吹き飛んだセイン(偽)に追い撃ちをする様子は、紅鷹がやっていたのと変わりが無かった。


いや、変わるはずがない。





紅鷹は、暗闇の中で意識を持続させていた。


当然、時間の感覚はある。


だから、どうして早く痛み、『死』が襲ってこないのか不思議だった。


目を閉じる前は、もう、セイン(偽)の魔法で視界の半分以上がうめつくされていた。


が、いまだに何も来ない。



目を空けて見れば分かる。


ちょっとだけ、もう一度、死ぬ前に景色を見ておくのも悪くないだろう。


そして、紅鷹が目を開けた瞬間、紅鷹のすぐぞばで、セイン(偽)が地面を高速で吹っ飛んでいた。


「………?」


紅鷹には、どうしてセイン(偽)が吹き飛んだのか理解できなかった。


ここには、紅鷹とセイン(偽)しかいない。


が、何者かの第三者がいないとセイン(偽)が吹き飛ぶなんてありえない。


それに、ただ者でない奴に等しい事にもなる。

紅鷹は、セイン(偽)が吹き飛んだ方向とは逆に位置する方を見た。


すると、フード付きマントを羽織った男がいた。


(誰だ? あいつは?)


疑問に思う。


紅鷹が、フードを羽織った男の方を見ているのに気づいた、フードを羽織った男は、紅鷹に近づいてきた。


「…………誰だ?」


発した声は、絶望、悔しさ、無力感、諦め、など、負の要素だけを集めたような声。


そんな声を発する紅鷹にフードを羽織った男は、妙な、この場には不自然な笑みと言葉を漏らした。


「いつまで、地面に横たわっているつもりだ?」



紅鷹は、答える事さえ面倒だったが、しねば、言葉を発する事が出来なくると考え、今のうちに後悔を減らして行こうという為だった。


「あんたには関係ない」


「関係ない…か。関係については有るどころか、大有りなんだけどな……どうしてお前は諦めたんだ?」


「そのまんまさ。抗う事を止めた。それだけだ」


「何故? 抗う事を止めたんだ? 可能性は十分にあるはずだ」



「そうかもしれない。いや、あるはずないんだ。所詮、可能性なんて理想や願いから来る妄想だ」


「本体にそう、思うか?」


「……ー」


紅鷹が、フードの男の問いに答えようとした瞬間、後方から、セイン(偽)が吹き飛ばされた方から殺気が物凄い圧力とともに、現れた。

「可能性なんて、すぐに壊されるんだ。みろよ、奴《セイン(偽)》がキレて、破壊すれば終りさ。俺もアンタも」



「ぁあああああああ!!」


セイン(偽)が、奇声声を上げながら高速で、フードの男に近付き、攻撃する。


それを、フードの男は左手で、セイン(偽)の拳を受け止め、再度、紅鷹に問う。


「本当にそう思うか?」

「どうせ、魔法を使われたら…無理だ」


紅鷹の言葉とともに、セイン(偽)は僅か数秒足らずで、魔法を数百以上作り上げた。

紅鷹は、それを見て今度こそ可能性は消えたと思った。


フード付きマントを羽織った男は、セイン(偽)の魔法で『死』ぬ。


防ぎようの無い事実。


紅鷹は、そんな未来を迎えるフードの男の顔を見ることにした。


『死』が迫る今、一体どんな顔をしているのか気になる。


俺のように、全てを諦めた顔に成るのではないかと。


だが、ふとフードの中の顔を見ると、フードの男の顔は一切、負の要素が感じられなかった。


有ったのは、笑み。


それと、右目を閉じる行為だった

その行為を、紅鷹が知らないはずがなかった。


紅鷹が、こちらの世界に来て、手に入れた能力の一つ。


だが、そんなのは有り得ない。


一瞬、頭に過ぎった事を直ぐさま頭の中から出そうとしたが、未だ、フードの中を覗く紅鷹の見た事象がそれを否定する。


フードの男の目は、右目を閉じた後、左目だけに魔力が集中し、朱色の紋様が瞳の中に現れる。

「そんな……まさか……どうして? 何で?」


紅鷹の言葉を掻き消す程の魔法の飛び交う音、それとフードの男にぶつかり発生する爆発音。


だが、それらは全てフードの男に直接は届かない。


それなら、紅鷹にだって出来る。


いや、紅鷹にしか出来るはずが無い。

紅鷹は、唖然としながら、身体を起こしていた。


それに、セイン(偽)の魔法がフードの男の真後ろを狙うのを紅鷹は気付いた。


危険を知らせようと叫ぼうとするが、間に合わず、フードの男の背後から爆発音と煙りが発生する。

「あの日の俺は、抗う事を止めた」


不意に、煙りが立ち込めるなかでフードの男の声が聞こえた。

風によって煙りが晴れ、フードの男の姿が見える。


フードの男の、顔を隠すためのそれは、爆風によって取り払われ顔があらわになっていた。


その顔を見た紅鷹は、妙な気持ちを抱いた。


それは、自分自身が否定した可能性が自分自身だったことなのかは、分からないが。


ただ、言える事があった。


紅鷹が見たフードの男の顔は、小さい頃から自宅の鏡で見ていた自分自身の顔そのままだった。


それが意味するのは言わなくても分かる。


「俺って奴は本当、理なんか越えてるな」





フードの男。


それは、この日に、抗う事を止めた紅鷹の未来の紅鷹。


(自分が言った言葉を、自分に帰されるってのも、変な気分だ)

「お前だって、いずれ……俺のこの場所に立たなくてはいけない」


「逆に、俺がそこに立たなければ、タイムパラドックス。未来は確定している……。だけど」


「努力するのは、お前自身だ」

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