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第三十五話 二年後

更新速度がおちていく。


可憐に少しだけ、良い思い出を…


 日本の、今ではそう、多くない道場という建物を所有している土地の所有者。


 その人物の家に巫女は二年という月日を過ごしていた。


 まあ、住んでいたのは紅鷹の家で、可憐とともに過ごしてきたのだ。


 二年という月日はイヤでも他人と仲良くなる期間には十分な時間だ。


 最初こそ、可憐に兄、紅鷹のことを聞かれ、どう答えるべきか困惑していた。


 確かに、紅鷹に巫女は言われた。


『俺が、言ったと可憐にはなせば多分、すぐ了承してくれる』とは言ったが、巫女にとっては予想外な出来事があった。


 当然、2013年の9月23日のあの日、東京で、不可思議な謎の生命体の出現と、東京タワーの火災事件。それに、一人の死。


 上記の事件に警察は大きく動いた。


 まず一つ。東京に突如出現した謎の生命体。


 そいつらの目撃者は多く、テレビにも映り、信憑性がある。


 ただ、そいつ等をすべて虐殺したのが一人の青年によるものだと調査の結果に解った。


 それと同時に、その謎の生命体たちを虐殺した青年は唯一の死者だった。


 それだけなら、まだ迷宮とまでは行かないが、その青年がみんなを守り、一人でに死んでいったといえる。


 しかし、同時刻に、東京タワー内部に進入者が出ていた。


 その進入者は、現代に出回っている服装とは違い、一昔前、中世時代の旅人のような小汚い服にマントといった現代人らしからぬ格好だった。


 その犯人を突き止めようとし、監視カメラを確認したら、そこに移っていたのは、同時刻に東京で発生した謎の生命体を倒した青年と瓜二つだった。


 当時は、その問題に必死で真実を突き止めようと、青年の唯一の肉親の妹さんに警官は訪ねたそうだ。 


 警官は、あの日の事件について真相を知りたいが為に、青年の肉親の心境を考えずに質問した。


「あの日の事件については良く覚えていますか?」


 質問をされた、彼女。可憐は酷く悲しげな表情を見せながらも答えた。


「………はい」


「では、あなたの兄弟は、紅鷹さんのおひとりだったのですか?」


「なにを? ……一人に決まってるじゃないですか! 兄はたった一人の肉親でした」


 可憐は、紅鷹を失った事件についてまだ立ち直ってはいなかったが、警察は追求する。


「それはおかしいですね。あの日、あのときには、紅鷹さんは二人同時に存在しているんですよ。東京に現れた謎の生命体と戦った紅鷹さんと、東京タワーに無断で進入した紅鷹さんの二人が」


 警察は、なにか可憐が隠しているのかを疑ったが、可憐は『そんなことありません! 兄以外の兄弟なんているはずない』


 そうして追い返された警察は、彼らの戸籍をあらったが、戸籍では紅鷹と可憐の二人しか存在していなかった。


 過去に、養子にだした記録もない。


 もしや、ずっと隠していたんもでは? 疑問が浮かぶが、この時代、戸籍なしで隠しとうして生活なんてできっこない。


 そして、とくにこれといった証拠が無いために真相は解らず、事件は迷宮入りになった。


 どうして、東京のど真ん中に謎の生命体が出現したのか。


 なぜ、獄閻寺紅鷹は同時刻に二人存在していたのか。


 東京タワーの放火の理由は。


 ただ一つ解ったのは、もし、獄閻寺紅鷹が、東京タワーに放火をしなかったら、東京タワーにいた人たちすべてが死んでいたのではないかと言うことだ。


 東京に現れた謎の生命体は東京タワーを破壊したが、もしかして、獄閻寺紅鷹はあらかじめ東京タワーが破壊されることを知っているのでは?


 そのために放火をして、人を避難させたのでは?


 そういった意見や、ほかには常識を逸脱した意見もあった。


 獄閻寺紅鷹が未来から来たのではないか?


 そんな意見だった。


 しかし、誰がどう考えたってその意見はあり得ない。


 そう、思わせた。


 世間はそんな話題を二年たってもテレビで放映していた。


 そんな、放送を紅鷹の家で二人はみていた。


「レイナさん。お茶、入れましたよ」


 ソファーに座り、テレビNEWSをみていた巫女に可憐が声をかける。


「はーい」


 それを巫女は、友達、いや、家族のように返事をした。


 巫女はお茶が入れられている食事をする席まで歩き木で作られた椅子に座りお茶を啜る。


「もう、二年か……。時間が過ぎるのも早い……ね」


「そうですね。レイナさんが家に来てから二年がたちますね」


「今、何日だっけ?」


 急に真剣な表情になった巫女に少したじろぎながらも答える。


「…えーと、23日ですね。9月の23日。ちょうどあの日から二年ですね」


 可憐は兄の死を乗り越え、今では笑い話とは行かないが、普通に話題に出せるようになり、感慨深くあの日のことを思い出していた。


 そんな思考をさせないかのように巫女は言葉を放った。


「じゃあ、私……これで失礼するわね」


「え?………どこかに出かけるの?」


 可憐は、こう言いたかったのだろう。


 また、帰ってくるの? と。


 可憐は心の中で思った。


 また、帰ってくるわ。そんな返答を返してくれると望んだ。


 しかし、帰ってきたのはーー。


「いえ、もう会うことはないわ」


 ーー望みとは違った。


「どういうこと?」


 可憐はできるだけ冷静に質問を投げかけた。


 ただ、解っているんだ。たとえ、巫女が可憐の心の支えになってくれたとはいえ、いつかはそんな依存はやめなければいけないことを。


「言葉の通り。もう、会うことはない


「……………そう。じゃせめてどこか外に食事に行かない?」


 可憐は、すこしでも巫女をつなぎ止めておこうと誘うが、巫女は首を横に振る。


 可憐は、泣き出した。


 紅鷹が死んだときも泣いた。


 だが、巫女という心の支えと共に友情という絆を手に入れた。


 しかし、今度はその悲しみを埋める何かはない。


 そんな、可憐の様子や考えを察したのか、巫女は本当は言ってはいけないのだけれどはなした。


「私ね、迎えが来るのよ。大事なのね。勘違いしないでほしいけれど彼氏じゃないわよ。お迎えなだけ。ただ、そのお迎えに来てる人は貴方の大好きな人よ」


 泣きながらも巫女の話を聞いていた可憐は顔を少しだけ上げて、聞いた。


「……私の大好きな人?」


「そうよ。私にはやることがまだ残っているの。ただ、友達の貴方にプレゼントがあるのだけれどいる?」


 可憐は、疑問を浮かべ不思議がりながらも頷いた。


「じゃあ、急ぎましょう」


 そういって、巫女の向かった先はあの日、二年前の謎の生命体が発生した中心だった。


 その場所には依然と変わりない。


 ちゃんと、修復作業がされており、特に何もない。


 だが、巫女は、何もない虚空をずっと見つめている。


 そこに何もないはずなのに、普通の視点よりも少し高い虚空を見つめている。


 可憐が、巫女に話しかけようとするが、それを遮るように巫女が言う。


「来たわ……迎えが」


そう、巫女が言ったが何か車やバイク、誰かが来るといった光景は見られなかった。


「本当に来たの何も来ないじゃない」


可憐の視界では、何も変化は無い


しかし、巫女の視界では、しっかりと日本と異世界を繋ぐ『ゲート』が開くのが見えている。


巫女は可憐が『ゲート』が見えていないのに気づき、「ちょとごめんね」と言い、可憐の両目に魔力を少量送りこんだ。


魔力を送りこまれた可憐は、すぐに目を開いて、巫女に、何をしたの と言いたかったが、目の前に存在する『ゲート』に呆然となった。


「……なに……これ」


声を搾り出せるのが精一杯かのような呟きだった。


可憐の呟きに巫女は答えないまま、『ゲート』を見る。


少しずつ開いていく先には、懐かしの故郷の景色と、ゾッ とするぼどの魔物の数。


恐らく、億を超える数なのだろうと推測というよりかは、真実に近い。


そして、待っていた彼が現れる。


「悪い。二年も待たせて」


こちらに近づいて来た人物は、紅鷹だった。


現れた人物、紅鷹に対して可憐が、言葉を搾りだす。


「…………兄…さん どうして」


言うならば、死んだ人間が目の前で現れ、普通に会話をしている光景に唖然と言うべきだろうか。


ただ、そんな様子に理解出来ないでもない。


だが、それは、全てを知っている巫女だけのものであって、なにも知らない可憐には一切分からないけ事象だ。

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