第三十話
ふー、困った。
PS3で執筆していたらなんと、1024文字までしか入力できなかったが、携帯の方の結合を使って何とかなった。
エルフォード国の位置する場所から北上した場所に人気のあまりない町はあった。
その町でひっそりと身を隠し作戦を立てることにした。
途中、何度か御子の顔を知る人間たちが話しかけてきたり、妙な噂を立てるような奴が居たため、ゆっくりと作戦会議をする暇もなく場所を移すことにした。
場所を移し、今度こそ誰にも巫女の存在をばれずに宿を借りることができた。
たとえ男女だとしても二部屋取るようなことはしなかった。金は幾らでもあるが、いちいち部屋を移動するのは時間の無駄だし、何となく落ち着いて話を聞けると思ったからだ。
「で、あんたが見た世界はいったいどうなったんだ? 詳しく状況を教えてもらわないと世界を救うことは疎か、巫女が過去に飛ぶというパラドックスを阻害しそうになってしまうかもしれない」
「そうね、話すわ」
そして巫女は、自分の行動をはなし連ねた。
自分が、時間を飛び越える力を恐れられ、魔王の手下に捕らえられたこと。その後、日本の侵略に連れていかれたこと。
そこで、俺が魔王の手下の毒牙のメギドナに魔法なしの、素手で相打ちまでにいったこと。
ただ、その時の俺は夏蓮が死んだことを全く知らなかったこと。いや、死んだかは不明である。ということは、俺たちがその時間に行って可憐を事前に助けてもパラドックスには決してならない。それに、巫女は俺の地肉を得た後、すぐにこちらの世界に戻るから、その後の日本の事は一切わからない。
ということは、巫女が居なくなったら幾らでも日本は救える。俺が暴れても大丈夫って事になる。
しかし、そうしてしまうと二年後に訪れる魔物たちの異世界への侵略がなくなってしまう。
「なら、疑似的にも侵略を行うしかない。私自身を騙すんだ。そのために、君は幾らでも世界の時間を越えられるだろう? なら、どこでもいい。未来から、遙か未来から魔物の大群、およそ数十億の魔物を引き連れて、ゲートの前に出現してほしい」
「本当にいいのか? そのまま魔物の大群で二つの国を落とさなければならないのだろう?」
巫女は、ばつの悪そうな表情を浮かべながらも顔を縦に振った。
「そうでもしないと、でもできるだけ致命傷は避けてほしい」
分かってる。紅鷹は心に響かせる。自分勝手な行動で余計な死人を出すつもりはない。そこは、なんとかする。いや、してみせる。
俺は、すべてを望む。手伝ってもらうぞ、セイン(偽)きっと巫女は想像だにしていないだろう。
紅鷹と、魔王の手下NO、1が、勇者が召喚された世界では手を組んでいたことを。
多分、召喚された世界同様に、巫女の世界でも紅鷹自身のことを話せば協力してくれるのではと踏んでいるが、もし、そうはならなかったら戦うしかない。
セイン(偽)は強い。実際に戦ったことは記憶の中の俺しかないが、全力でぶつからなければ逆にやられてしまいそうなほど厄介な相手だ。
セイン(偽)の魔法破壊はかなり手強い。名前のとおり魔法を破壊されてしまうため、あまり魔法攻撃は有効ではないので、体術で挑むしかなくなるがそれも奴の作戦で、セイン(偽)は体術も扱える奴で、魔法をフェイントに入れながらではないと勝てるかどうか不安だ。
説得できた場合は、セイン(偽)を使って、俺と二手に分かれて魔物を先導し、できるだけ気絶させるように命令する。
そうすることで死人を無くし、さらに、巫女が言っていた伝達係の人間を洗脳し、誤認情報を過去の巫女がいる国へ流す。
そして、巫女が時を遡ったのを見計らい魔物たちを滅する。魔物たちは可哀想に感じるが、やむ終えない。
「こんな感じの作戦で良いか?」
紅鷹は、自信の案を巫女に提示し賛否を聞く。
巫女は特に反対するそぶりは見せずに賛成した。
そして、紅鷹が行くかと巫女を誘う。
しかし、巫女はまるで決定的な盲点に気がついたみたいに目を大きく開かせて紅鷹に近づいた。
「そもそも、一体どうやって元の時間軸へ行くつもりだ!? 今、私たちが居るところはもう! おまえが召喚される世界なのだぞ!? どうすれば…」
一人で激怒して、一人で沈む、巫女に紅鷹は笑みをこぼした。
「そうだな。ふつうの方法じゃ絶対に無理だ。だが、俺なら、あの、繰り返してきた時間の中で見つけた方法なら行ける!」
自信満々の紅鷹の言葉でもどこか納得できない巫女は沈んだままだ。
「あんたが飛ぶんだ。あんたを"主”として時間を飛ぶんだ」
無理よ、そう巫女が言う。あたりまえだ。巫女は一度しか飛べないんだ。彼女の魔力は時間を一回飛ぶので精一杯なんだ。
なのに、紅鷹は続ける。
「魔力は俺を媒体とすれば良い。後は、あんたの流れてきた時間を逆行して、その時間に降り立てばいい
」




