第二十三話
時間がなくて書けない…
2009/06、21/11:34:59
紅鷹は無事、自身のDNAが受け渡されるのを見た後、町外れの場所で時間を飛び越えた。
そこでは幸い、誰かがいることは無かったが、これから来るであろう未来の巫女をすぐにでも分かるように世界を監視しなければならないので、もっとも探すのが効率がよく、魔力の素が溢れている場所でならば集中を乱すことなくできるはずなので、紅鷹は、もっとも魔力が溢れていて、この世界に満ちる魔力が出るところで探知魔法を常時発動することにした。
その条件に適した場所を探すのは容易だったが、探知魔法だけに集中しすぎるとさすがに、理からはずれていても元は人間なので腹は空く。
そのため、携帯食を買い集めるほうがよっぽど手間がかかった。
(この世界にカロリーメイトなんてうまい携帯食はないからな…)
それから、一週間紅鷹は探知魔法を続けることにした。
2009/06、26/11:34:59
そして、探知魔法を発動してから五日がたった。
その日の前日から妙な違和感を感じていた。
紅鷹が時間を飛ぶ前、確かにDNAの受け渡しをしていたのは28日だったので、遅くてもそろそろだと思うのだが、今日もまだ探知魔法には引っかからない。
最悪、巫女自身で過去の自分に直接渡すのはリスクがおきすぎる。
万が一、タイムパラドックスでもおきれば、紅鷹自身の存在が消えかねない。
それだけは、やめてほしいと少しだけ思った。
そしてなにより、自分の推測が間違っているのではないかと思うと、手汗が止まらなかった。
2009/06、27/01:58:32
時間的に考えてそろそろ現れないとタイムパラドックスが起きないか紅鷹はあせっていた。
自分の推測が間違っていたのはもうどうでもいい。
ただ、28日のあの日に、未来の巫女がこの時代の巫女に渡さないと、重大なパラドックスが起きるのではないかと思っているからである。
だが、ここで思いついた。
巫女から教えてもらった時間を飛び越える魔法は、場所は移動できない。
移動するのは時間だけであって、場所は変わらない。
ならば、未来の巫女がいる可能性の高い場所に重点を置けばよりこうりつてきにいくのではないかと思った。
なので、記憶の中の俺と、俺との記憶を照らし合わせ、できるだけでも良いから情報を割り出す。
少なくとも、未来から来る巫女の世界は戦争が起きたのではないかと思われる。
その戦争は人と人との戦争だけとは限らないと思う。
理由は、そうでなくては、勇者召喚をしてわざわざ俺を魔王討伐へと向けさせる意図が分からない。
逆に、魔物の繁殖によって、人間側が対処しきれずに国がつぶれてしまうのではないかと察した巫女が過去へと飛んだのではないか、それが紅鷹の推測だ。
しかし、自身はあまり無い。
すでに、巫女が来る時間を数日はずしてしまったので、自分の推測に自身が持てないのである。
そんなことを考えているうちに、探知魔法に膨大な魔力の乱れが引っかかった。
思わず歓喜に溢れる。
「来た!!」
すぐさま移動術式を展開して、察知した魔力の乱れえと行こうとするが、唐突に“あいつ”の言葉を思い出した。
『―お前はとっくに理から外れているんだから。まあそれは、“巫女の行動があってのもの”だからな』
巫女の行動を万が一阻害してパラドックスを犯すと、俺が消える。
身震いがした。
ほんの少し前は、軽く考えていたことだが、あいつの言葉をよく思い出してみると、パラドックスを犯すと、自分の全てが否定されることがわかった。
もし、巫女が①の世界の俺のDNAをこの時代の巫女に届けられなかったら。
俺は、この世界に勇者として召喚されることは無く、リリスやエリス。
旅の中で知り合った人々との関わりは発生せず、記憶をなくして日本に戻るわけでもなく、この世界で習得した魔法が使えるわけも無く、2013年に、魔物の群れが襲ってきても魔力の持たない俺が魔物と戦えることも無く、死ぬ。
日本は救えず、魔王討伐も行わない世界。
そして、本来なら、それが①の世界なのではないか。
そう思えてきた。
①の世界では、俺という異世界人が召喚される事無く魔物の繁殖が増え、魔王の時代になっていたのではないか。
ただ、リリスが言っていたように、魔王は複数の国内最強の精鋭を連れて行けばなんとか倒せる程度で問題なかったはずだが、それよりも紅鷹が気になるのは、魔王の手下のNO,2のことだ。
NO,1のセインは多分、性格的に考えて面白いことが単純に好きそうなので、人間の領地とかを奪うといった戦争に加担しそうにない。
問題のNO,2は、俺が倒した。
倒した場所は日本のあの日、2013年の記憶を取り戻した日だ。
NO,2は、紅鷹の妹を殺した張本人でもある。
そんな奴を生かしておくわけがない紅鷹も戦っているときに実力は気づいていた。
NO,2とNO,1の二人は、魔王と言われていた奴より遥かに強い。
なので、魔王が討伐された後、NO,2が変わりに指揮を行っていたに違いないと思われる。知恵も回る奴だ。
その先は、考えずとも分かってしまう。
仮にこの推測が間違っていればそれはそれで良い。
しかし、もし推測どうりだったらどう世界を救うべきかが浮かばない。
だから、どうかそんなことにはならないで欲しいと紅鷹は心に留めていた。
そのため、決して巫女の行動は阻害せずに後をつけることにした。
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