IF というか、ただ連れて行きたかっただけ(本来ならお蔵入りだけどせっかく書いたのだから)
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長い用で、短い一週間、この城の生活も今日が最後で、もうすでに馬車に乗る前に別れのあいさつとやらが行われている。
自分の知らない人からや、護衛たちの親しい者たちの声援。
彼は知らぬうちに彼女を探していた。
その、彼女を見つけようとあたりを見回しても見当たらない。
そんな俺を見てエリスが「きっと姫様はあなたと分かれるのがおつらいのですよ。だから、顔は合わせないと思うのですが」
なぜか、感慨深く感じていた彼がいた。
しかし、自分がそのようなことを考えるようになったと思うと自然と頬が笑っていた。
可憐以外でこんな気持ちになったのは、初めてだったから余計に気持ちが増した。
「もっと一緒にいたかったな・・・」
その言葉をしっかり聴いていたエリスはまるで彼をあざ笑うかのように「魔王を倒したらここに帰ってこれる。それに、元の世界に帰るか帰らないかは選べるから、姫様を娶ってもいいんだぞ」
しかし、それを彼はあえて無視をした。
護衛の一人、Aは「もうお時間が押しているのでお早くに馬車に乗ってください」と彼とエリスに告げ馬車の中に入っていった。
肝心の一人には挨拶はできなかったが、帰ってきてもう一度会えると思うと自然と足は動き、馬車の中へと消えていった。
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何かおかしい。
護衛のAは最初からわかっていたっぽいけど、彼とエリスは違った。
先ほどからエルフォード国の姫、リリスについて彼とエリスと護衛Aで話していたのだが、悪口や、ちょっとはしたない行動についてのことになったときになぜか、馬車内にあった樽が少しだけ揺れたのである。
一回目は馬車が地面などで石ころを踏んだ際に起きるものだと思っていたのだが、引き続きリリスについての話題話をしていると、ガタ!! と、馬車のゆれとは不釣合いなゆれだったので、まさかと思い、護衛に選ばれ、護衛に選ばれる前はリリス専門だった騎士エリスが、おそるおそる樽を開けた。
予想通り、樽の中にはリリスが体育座りで中に入っており、エリスと目が合ったときはまるで世界が終わったかのような目をしてごめんなさい、と言った。
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知らずのうちに馬車に乗り込んでいた利リリスは、未だに誰かにかまわず謝るように耳をふさぎつぶやいている。
それが、数十分、数時間続いたけれども、飯以外のときは、未だに謝まり続けている。
『そんなに罪悪感を感じてるならこなきゃよかったのに』
と、紅鷹は口にはださなかったが、一緒に旅にでられるのにちょっぴりうれしさがこみ上げているのがわかった。
だからか、いまだに場車内で言霊を呟いて、負のオーラを撒き散らしているリリスに声をかけることにした。
「おい」
反応は無い。
聞こえなかったのかも知れないと思い、もう一度声をかけた。
「リリス」
「はい・・・」
返答はとても小さな声だった。
こいつは、まだ落ち込んでいるのかと額に手をやっていたが、いつまでもこの状態だと旅先でも不幸をよびかねないので、とりあえず機嫌だけは直してほしかったので、慰めるつもりで「なあ、いい加減機嫌直せよ。いまさら、遅いし、その、俺が連れ出したってことにすれば・・・(って名にいちゃってんの俺?!! 普通そんなことしたら罰せられるよな?!! あれ、死刑もんじゃねこれ!?)な?」
俺の想いが伝わったのか顔をこちらに向けて「ほんとうですか?」と涙目で真意を確かめるように問う。
とりあえず「ほんとうだよ。だから、いい加減もどってくれ」
「善処しますっ」
自然と彼女には笑顔が戻っていた。
その笑顔は慈悲の塊のようで、思わず見とれていた。
そういえば、リリスの顔をしっかり見たことは無かったからか、余計にリリスの可愛さが伝わってきて、顔が厚くなるのを覚えた。