第九.五話 とある一日
主人公が旅に出る前の話ですね。
▲ 7月8日
先日覚醒の泉で試練を受けたが、前々からリリスが楽しそうに買い物の企画をしていたので、気分転換をかねてエリスと俺を連れて、俺のたびの準備として買い物の途中だった。
しかし、たまたま!! ほんとにたまたま、そのときの護衛がエリスで、三人で連れ立って歩いており、右からリリス、俺、エリスという配置でをいたのが後悔したと思う。
そう、右端の細道から急にリリスが奥へとさらわれてしまったのである。
一緒にいた二人は、理解が追いつかず、数秒立ち止まっていたが、ことの重大さに気づき、エリスが「姫様!!」と人影のように追いかけていった。自分もそれにくっついていった。
案の定、細道の奥の広い空間についたときにはまだリリスに危害はなく、首筋に刃物を突きつけられている状態であった。
状況が状況なので、二人は下手に動けなかった。
そして、リリスを裏路地にさらった中年太りは金ほしさに、リリスを脅した。
さすがに、自分が今にも何か変な行動をしたら中年太りの人にナイフで傷つけられると思い、リリスの体は震え得ていた。
中年太りは「姫様を傷つけられたくなかったら、今お前たちの持っている有り金全部をよこせ!!」と言い放った。
そんな、中年太りの態度にエリスは今にも爆発しそうに「その手を姫様から離せ!!」
と、いまにも飛び掛りそうなので紅鷹はエリスを征した。
「止せ!! 今飛び掛ったら確実にあいつはリリスに刃物を突きつける」
「ならどうすればいいのだ!!」
かなり感情的な部分をさらけ出しているエリスには落ち着いてもらおうと思ったが、あまりいい言葉が思い浮かばず、苦虫を噛み潰したような顔になった。
手が無いため、彼はエリスに目だけで合図する。二人は財布を取り出し、財布の中に入っていたものをすべて豚野郎の近くに投げつけるようにばら撒いた。
豚野郎はリリスから手を離さないようにしゃがみ、地面に落ちていた金をかき集め自身のポケットに突っ込んだ。
行動の様子を見ていた二人は要望を果たしたので、リリスを開放するように求めた。
しかし、いや当然のごとく豚野郎はリリスを離すつもりは無かったらしい。
「おい! どういうことだ! お前の要望には答えた。だから、さっさと姫を離せえ!」
エリスの感情的な行動に思うところがあったのか豚野郎は、口をニヤっとさせさらに追い討ちをかけた。
「俺がこいつをお前らに解放したら、お前たちは必ず俺を捕まえる。んなのは俺は嫌だ。だから、お前らには俺の安全を保障してもらわないとこいつは解放しねえ」
「っ!!」
「くっそ!」
上から、エリス、紅鷹と双方似たような反応を示した。
紅鷹は、必死に打開策を考えていた。
このまま奴の要望に応じたら、さらに現状は悪化する。
奴の行動を凌駕するほどの器量と経験はエリスは持ち合わせてはいない。
このまま、街の外まで行き、奴はそのに逃げる。
もし、追っ手などを下手に送り、奴の機嫌を損ねれば、間違いなく、奴はリリスを殺す。
それは、だめだ。
させない。
なら、どうする?
エリスは使えない。
要望には答えてはいけない。
下手に手を出せば、容赦なく殺す。
だったら、視認できない一撃で決めればいい。
だが、ほんとうにそれでいいのだろうか。
悩んでいる境に、エリスが痺れを切らし飛びつくように前進した。
すると、リリスの首筋から赤い液体がにじみ出る用に出ていた。
その様子を見たエリスは急停止した。
瞬間、紅鷹の周りから殺気が放たれた。
周りの温度は下がったように錯覚するようなほど強い殺気。
しかし、本人の周りだけはなぜか熱を帯びているように空気が揺らいでいる。
意を決したように紅鷹がリリスに言う。
「リリス、少しも動くなよ」
その言葉に即答でリリスは「は、はい!」と答えた。
しかし、目の前で行われている会話に苛立ちを覚えた中年太りは「おい!! お前ら状況分かってんのか?!」
その言葉で紅鷹はブチンときた。
なぜか、あの脂ぎった手でリリスを触っているのが気に食わず今すぐにでもぶっ飛ばしたい気分になり「黙ってろ!! 豚野郎!!」と大喝した。
その言葉で豚野郎は少し身震いをした。
「今すぐその手を引き剥がす」とものすごくトーンの低い声ではなつ紅鷹。
そして、コンマ数秒で紅鷹の地面には紅鷹の靴跡がくっきり付き、リリスの目の前に現れた。
彼は、端から見たらいきなり消えたように見えたはずだ。
当然、豚野郎は視界から消えた紅鷹を探していたが、見当たらない。
目の前にいた。
そして、勢いを殺さず、そのまま右手でリリスの腹部を押し上げて持ち上げるような姿勢で後ろにいる豚野郎に衝撃が奔り、数十メートル吹っ飛び、壁にぶち当たりめり込んでいた。
しかし、エリスからみたらどう見てもリリスもろとも攻撃しているようにしか見えなかった。
「貴様!! 何を!?」
「大丈夫だって、なあ? リリス」
紅鷹の右手にまるで延長線のようにつながっていたエリスを抱き寄せるようにし、抱かれていた本人はピンピンしており、エリスはまったく現状をつかめてはいなかった。
いつのまにかユニークが1000超えたびっくりだわ・・・