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ネコの食事事情

あれから一週間ほど経った・・・と思う。

なぜ正確に分からないかと言うと屋根裏とその下の部屋、それだけが俺の世界だったからだ。

飼い猫という状況は一向に構わないのだが、まさか室内飼いされるとは思ってもいなかった。

・・・とはいってもそれも今日までだ

昨日ローザ婆が明日には外に出てもいいよと言ってくれた、会話することは出来なくてもこちらが

言葉を理解しているのは分かってくれたのでいろいろと教えてくれた。

現在この町グレナデンにはギブリス帝国の騎士団が来ていて引き上げるまで待つように言われていた

そして騎士団が昨日引き上げたからだ。

何故騎士団がいる間、表に出てはいけないかというとその原因は俺にあるらしく帝国子飼いの預言者が

”神獣がこの地に現れる”と予言した為、偵察に来たらしい。

なんでも知性の低い神獣は魔物と変わらず人に危害を加えることもあり一度牙をむけば魔物とは比べ

ものにならない被害をもたらすことから災厄の獣と呼ばれ、捕殺対象になっているとの事だった

理由としてはもっともなのだがそれは真実を隠すために少しの事実を混ぜて作られた民草用の情報工作

であり本当の目的は神獣の血にあるとレグルスが教えてくれた

霊薬である神酒の精製に不可欠であることから生まれたばかりの力を持たない神獣を狙っていて国を挙

げて狩りを行っているとの事だった。

そんなことを聞いたのでもう一生ニートでいいやとも思ったのだが俺の姿は幸い?ネコなので簡単には

神獣と判らないそうだ。

これまでに知られている神獣は全身に雷を纏った巨大な鳥であったり、炎の毛皮で覆われた三つ目

の狼や石で出来た皮膚を持つ双頭の蛇など異形で何らかの属性を身に纏っているものらしく、俺は

というとシミひとつない純白の毛と可動領域の広い尻尾、油断すると口に仕舞い忘れてしまう少し

ばかり長い舌・・・と見た目がごく普通のネコであり、属性を感じさせるものなど皆無で体の大きさも

至って普通だった。

それでも神獣なのだから何れ力に目覚めるだろう・・と言ってもその姿では力を振るう必要はなさそう

だがなと言ったレグルスの言葉が印象的だった。

確かに俺にとって力とは無用の長物だ、単純な暴力から権力、金といった物は分相応にある分には良い

が過剰な力は自分を見失ってしまう。

適度に生きていくことを信条としている俺にとっては此方から願い下げだった。

そんなわけで見た目完全なネコである俺は今日初めてこの家の外へ出た。

家の前には割り合い整備されたこの町の幹線道が走っており、北の方にはこの町の門と思われるものが

在り、南の方には石造りの巨大な建物が見え、武骨な造りで重厚な雰囲気がここから見ていても伝わってくる

人の流れは滞ることなく喧騒とまではいかないが程よい賑わいをみせていた。

道を挟んだ向かいには所狭しとお店が並んでおり、客が店先に大勢いるのが見える。

何を売っているのか気になったのでテクテクと歩いて様子を見に行くと、綺麗に整理された商品棚には

ガラス瓶に入った赤褐色や緑青色の液体やそこらで摘んで来た様な野草や干し飯等が陳列されており、

客がそれらを手に取っていた。

客の多くは皮や鉄で出来た具足であり(注※俺目線)傭兵や冒険者といった人が利用するものだろうと

推測できる。

店内をサッと見て周ったが特に気になるところは無く(あの怪しげな色の液体は別だが)客の傭兵と

思しきおっさんやらイカツイ女性に声を掛けられ始めたので家に帰ろうと振り返り店を出たところで

我が家を見て固まってしまった。

なんだか傾いていない・・・?

ユアとローザ婆は二人で何かの店を営んでいる事はこれまでの二人の会話から分かっていたが経営状態

が芳しくないことがひと目で分かる有様だった。

例えるなら今、俺が出てきた店はテーマパーク内にあるお土産屋のようなものであり、一方ユアとロー

ザの家はテーマパークのゴーストハウスであった、家には蔦が這い壁や窓は黒ずみ店先の看板は土台だ

けを残して折れていた。

家を出るときは振り返ることも無かったし店内の床や商品棚には埃ひとつ落ちていなかったのだから

店の外見がこんなことになっているとは気付くはずも無かった。


ψ


店の中からタイガの様子を見ていたが、向かいのお店に入っていったと思ったら他にどこかに出かける

でもなく直に家に帰って来たことに思わず笑みがこぼれた。

「やっぱりネコだよね~知らない場所だから怖いんだろうな」

向かいの店先で固まってしばらく此方をジッと見ているのが気になったが多分あのことだろうなと

予想は出来た。

タイガが家に入って来たので抱っこしようと膝をついて手を伸ばすがそれを拒否するようにすり抜けて

足元まで来るとロングスカートの裾を口に咥えて表に向かって引っ張っていこうとする。

あーやっぱりアレね・・・

タイガに引っ張られるまま店の外に出るとタイガがこれを見ろと言わんばかりに右手を突き出して店

(自宅)と向かいの店を交互に指差しながらニャーニャー叫びはじめた。

翻訳するなら「なにこれ?なにこの差?何でこんなまま放っておくの?」といったところだろうか

「これはね理由があるの、タイガにもそのうち分かるから今は気にしなくていいよ」

タイガに説明しても良かったのだが今は説明しても理解出来ないと分かっていたので答えを待ってもら

うことにした。タイガは渋々といった様子だったが叫ぶのをやめてゆっくりと歩き出し家の中に

入っていく、その後姿を眺めながら「ずっと今のままでもいいんだけどな・・・」と呟いた独り言はタイガの耳に届くことは無かった。


ψ


ユアの言葉に納得はいかなかったが、理由があると言うしその内分かるというのだからこれ以上は追求

しないことにした。

自宅の姿があまりにみすぼらしく廃屋といった風体であった為その衝撃からどこかに出かける気分は失

せてしまい自室(居間の上の屋根裏)で寝ようと、居間へと続く扉をカリカリ爪を立てて擦ると

中からローザ婆が扉を開けてくれた、すると同時に慣れ親しんだ匂いが鼻に入ってくる。

「ちょうど、お昼だから戻ってきたのかい?賢いねぇ、今出来たところだよ、すぐによそうから少し待

って頂戴」

ローザ婆が器によそってくれたそれは見慣れたいつものアレだった。

稗のような穀物3種類と薄紅色した根野菜の雑炊、これを食すのはこれで何度目だろう。

確か昨日の晩御飯もそうだったし、一昨日の昼と朝、一昨昨日の夜と・・・・

昨日、一昨日食べたものを言えなくなったら頭が老化してきているとか聞いた気がするがこの献立では

間違えようも無いなというほどコイツが食卓にでてくる、もううんざりだよ。

更に残念なことはこの食事は俺専用というわけでなくユアとローザ婆も全く同じものを食べていること

だった、俺がネコだから食事は毎食同じでもいいよねとかいう発想に基づくものなら飼い猫の身ですが

断固として抗議し食事の改善をしてもらうところだったのだが、これでは食事を拒否したり抗議したら

ただの駄々っ子になってしまう。

初日のあのシチューのような肉の入った料理はなんだったんだろう?

やはりお店自体が儲かっていないからこのような食事になるのだろうか?

他の誰の為でもなく自分の為、栄養ある食事の為にこのお店が儲かるように頑張ろうと心に誓った。



我が家ではキャットフードは飽きないようにメーカーを変えたり食事もいろいろな味が小分けされたものを買ってきています。

ネコがどう思っているかは分からないのでただの自己満足です、はい。


主人公の能力に関しては片鱗だけでもぼちぼちださないとなぁと思いつつ日常を描いている矛盾というか進行と更新が遅いことに全ての原因が・・ごめんなさい。


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