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第7話 バーガーパニック

崩れ落ち、涙を流す――

召喚されし、いにしえの……長いからデーモンさんでいいや。


「……デーモンさん……」


ウィルたちが肩をさすり、必死に慰めている。

その横を、メイドさんとぴっぴは言い争いながら素通りした。

あいつら……少しは空気を読めないのか。

俺はため息をつき、ふと巨大な影に気づく。

魔物――ビッグボアのような巨体。

だがその姿はすこぶる奇妙だった。

毛並みの代わりに、鈍く光る鋼鉄の外殻。


更によく見ると、それは無惨に丸焦げだった。

黒く炭化した体。

側面には熱で歪んだ取っ手付きの扉。

隙間から、細い黒煙が立ちのぼる。


「あれもゴーレムか?」


俺が呟くと、ウィルが首を振った。


「あの子は……『キッチンカー』っていう名前の……」

「……モンスターの名か? 聞いたことがないな」

「違う違う。モンスターじゃない」


 ウィルは静かに告げる。


「――『バーガーパニック』。それが、この機械に背負わされた宿命だ」


ウィルは語る。

客の注文通り、完璧なハンバーガーを作ること。

パティの焼き加減。

トッピングの順番。

ソース指定。

サイドメニュー。

最初から百人注文。

ひとつでもミスすれば鉄板は焦げる。

さらに重なればキッチンは炎上。

規定回数を超えれば――廃車。

即、ゲームオーバー。

チュートリアルなし。

難易度ハード固定。

一回ミスで炎上。

神はパッケージの水着金髪お姉さんに釣られてダウンロードする。

だがそんなキャラは本編に一切出ない。


そして――


まともに料理を提供できぬまま、彼は削除された。

この、ゴミ箱の世界へ。


ギギ……。

歪んだ扉がわずかに開く。


中から、焼けた金属アームが震えながら伸びる。

差し出されたのは、汚れた表示板。


【MENU】


文字が乱れ、上書きされる。


【CLOSED】


そして最後に浮かんだ。


「みんなに温かいご飯を提供したかった」


キッチンカーは、喋らない。

ただ、震えている。

俺は、煤で汚れた車体にゆっくりと歩み寄った。  


今日初めて見た異世界の機械。

俺には分からない技術かもしれない。


だが――


道具が、こんなにも悲しい思いをしたまま終わるのを、

見過ごすわけにはいかない。


「……直せないものは、この世にねえよ」


俺は鞄から、重厚な金槌を取り出す。


「キッチンカーだかなんだか知らねえが……俺が直してやる。これでも俺は、鍛冶屋だからな」


俺は迷いなく、金槌を高く振り上げた。  


漆黒のゴミ箱の世界に、熱い火花と、命を呼び覚ます槌音が響き渡る。

その音を聞いて

先に歩いていたメイドさんやぴっぴ、ウィルの仲間たち

皆が歩みを止めて見守っていた。

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