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第5話

シュガーラッシュは面白いけど、

2は途中で寝ちゃいました。


「天国だって?」


 確かに、この世の終わりを煮詰めたような光景は、

天国か地獄でなければお目にかかれない。

 俺が困惑していると、ウィルが目をカチャカチャと

鳴らしながら、値踏みするようにこちらを見つめた。

「……心当たりはなさそうだね」

 期待外れだと言わんばかりに、彼は力なく肩を落とす。

「いや、話が突拍子もなさすぎる。天国ってなんだ。

俺はもう死んでいるってことか?」

「違う違う。ごめん、僕の説明が悪かったね。

天国じゃなくて、ええと……正確には『クラウドシティ』と呼ぶらしいんだ」

「クラウドシティ? 聞いたこともない。

どんな街なんだ」

「……天国みたいなところ、らしい。

詳しいことは僕も分からない」

「分からないって、おい」

 思わずツッコミを入れる。

目的地の正体も知らずに目指していたのか。

「それを知っていた仲間がいたんだけどね。

とある事情で……いなくなってしまったんだ」

「そうか。力になれず申し訳ない。そもそも、

俺だってここがどこなのか分かっていない。

地割れに呑み込まれたと思ったら、地下にこんな

広大な空間があって、おまけに火山まである。

ここは……なにかのダンジョンなのか?」

「ダンジョン?」

 ウィルの瞳のレンズが、カチャ、と小さく音を

立てた。

「君は……ゲームアプリから来たキャラクター

なのかな?」

「はあ? ゲーム? キャラ?」

「ここはね」

 ウィルの声が、今までになく静かに響く。


「『スマートフォン』と呼ばれる世界の最下層――

“ゴミ箱”フォルダの中さ」


「……は?」

 スマートフォン?

 天国よりも、さらに分からなくなった。

 やっぱりヤバい連中だったか。

 これ以上関わるのはよして、ここから離れるとしよう。


「そうか、よく分かったよウィル。ありがとう。

天国、クラウドシティだっけ? 見つかるといいな。

俺は相棒と旅を続けることにするよ。

またどこかで会えたらいいな。じゃあな!」

「ちょっと待って、君、全然信じてないよね!?」

「信じるさ。これは全部、俺が見てるタチの悪い夢

なんだろ? いやーよく寝た! さあ起きて、あの

アホ勇者の剣を研いでやらないと。

おい、ぴっぴ! どこ行った。そろそろお暇するぞ!」

 必死に現実逃避する俺の前に、

ぴっぴがのそのそと歩いてきた。

「何か質問はあるっすか?」

「この先に『ターミナル』ってのがあるって言って

たよな。どうなんだ」

「あるはずっす。ただ、長い間オフラインだったんで、

仕様が変わってる可能性はあるっす」

 ウィルがぴっぴをまじまじと見つめる。

「……彼女は?」

「私はぴっぴ(仮)。見ての通り、イルカのパーカーを可憐に着こなした美少女っす。他に質問は?」

「なるほど……検索エンジン系のアプリ、かな」

 ウィルは顎に手を当てた。

「ターミナルか。このあたりには見当たらないね」

「ないんすか。マジっすか」

 ぴっぴが露骨に肩を落とす。

「この辺は無駄なデータが多すぎる。神様――

つまりユーザーが、スマートフォンの中身をろくに

整理していないせいでね」

「おいウィル、話が見えん。ターミナルってのは

何なんだ」

「簡単に言えば“接続口”だよ。例えば……僕の背中についている、

この穴のような装置。どこかで見なかったかな?」

 ウィルが背を向ける。

 そこには、四角い奇妙な空洞が並んでいた。

「ああ。こういう穴なら見たぞ。ちょうどぴっぴが

寝ていた場所にあった」

「マジっすか!? なんだ、こんなところまで

来なくてよかったんすね。でもまあ、

いい運動になったっす」

「お前な……」


 ウィルがくすりと笑う。


「なら話は早い。僕らもついていこう」


 こうして俺たちは、ウィルとその仲間たちを連れ、

もと来た道を引き返すことになった。

 空は相変わらず赤く濁り、火山の煙がゆらりと揺れている。


 ――なんだか、とんでもない方向に話が転がり始めている気がする。

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