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第4話

妙な集団に向かって、ぴっぴが一直線に突っ込んでいく。


「待て、ぴっぴ!」

 

制止の声は、まるで届かない。  

先頭に立つ、フードとマントを深く被った人物へ向かい、

俺は金槌を振り上げた。  

せめて一撃をお見舞いし、その隙にぴっぴだけでも逃がす――。


「わー!?待って待って! 怪しい者じゃないから!」


振り下ろす直前、拍子抜けするほど情けない声が響いた。


「いや、どう見ても怪しいだろ。まさか『サーカス団です』

なんて言うつもりじゃないよな?」

 

金槌をいつでも叩き込める位置で止めたまま、俺は問い返す。


「サーカス団? 違う違う。ええと、自己紹介するよ。僕はウィル」  


そう言って、男はゆっくりとマントを脱いだ。  

現れた姿に――俺は息をのむ。  

白髪の男だった。整った顔立ちをしている。  

だが、その頬には幾何学模様の入れ墨のような紋様が書かれている。

何より異様だったのは、その『目』と『体』だ。

 何層ものガラスが重なり合った多重構造のレンズ。

その奥にある瞳孔は、底のない闇のように黒い。

 

――ウィーン。  

――ピピッ。  

――カシャ。  


こちらを見つめる目の奥から駆動音が漏れる。  

首筋に並んだ小さな穴は、緑や黄色の光を放ち、

不規則に点滅を繰り返していた。  

真っ白な作業着のような服に身を包んでおり、

袖口から見える指先には、細いコードが伸びている。

一本一本、材質も太さもバラバラだ。  

すべてが異質。


……魔物か?  

いや、どこか「ぴっぴ」に似た気配を感じた。


「やばいっす。マント取ったほうが、余計に怪しく感じるっす」

 ぴっぴがぼそりと毒を吐く。


「おい、失礼すぎるだろ」

「あっはっは!」


豪快な笑い声が上がった。  

後ろに控えていたメイド姿の二人が、

やうやうしくウィルのマントを受け取り、

手慣れた動作で丁寧に畳んでいく。


「あんたに言われたくないわ。なんなのその格好。サメにでも食べられたの?」

「プッ、ただのザコね」  

メイド二人がぴっぴを鋭く睨みつける。


「はあ? これはサメじゃなくてイルカっす。これだから田舎者は……」

「なんですって――!」

 ぴっぴが再び跳ねる。

「こらこら、落ち着け!」  


俺は慌てて彼女を羽交い締めにした。

 その隙に、白髪の男も両手から伸びたコードをするりと伸ばし、

メイド二人の腕を器用に絡め取った。


「ウィル様、それは反則です」

「ちょ、離してよ!」

「いやあ、暴れると危ないからさ」  


コードが微かに発光し、彼女たちの動きを封じる。

 ……あれ、便利だな。  

金槌を下ろしながら、俺は小さく息を吐いた。  

どうやら、すぐに殴り合いになる心配はなさそうだ。

――少なくとも、今は。


「離すっすよー!」


 腕の中で噛みつかんばかりに暴れるぴっぴを放すと、

彼女は「あっかんベー」とこちらを小馬鹿にしてから、

また集団の中をうろちょろし始めた。


「ところで」


白髪の男が、改めて俺の方へと向き直る。

ガラスの瞳がカシャリと音を立てた。


「君たち、『天国』への行き方を知ってたりしないかな?」

「天国……?」


普段聞きなれない言葉に、俺は眉をひそめた。

何を言っているんだ、この男は。


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