1話
「ふっ……今宵の月は、格別に赤いな」
格好をつけてベランダに立ったアルカードだったが、実際は冷蔵庫のストックが切れて空腹なだけだった。そこへ、隣のベランダからひょいと、隣人のミカが顔を出す。
「あ、アルカードさん!ちょうどよかった。これ、田舎から届いた超新鮮なトマトジュースなんです。お裾分けです!」
「……ほう、赤き果実の雫か。頂こう」
アルカードは優雅にグラスを受け取り、一気に飲み干した。……が、その瞬間。
「ギャアアアアアアアア!?!?!?!?」
アルカードの口から、虹色の光が噴き出した。
「な、なんだこれは!? 喉が! 喉がホワイトニングされるような……っ、魂が強制除菌されている気がする!!」
「えっ!? あ、ごめんなさい! 間違えて私専用の『天使の聖血(100%オーガニック)』を渡しちゃったかも!」
「さらっととんでもないもん飲ませるな! 私の禍々しいオーラが、みるみるパステルカラーに……ッ!」
アルカードの背中から、コウモリの羽ではなく、ふわふわの綿菓子のような白い羽がポポポポーンと生えてくる。
「見てくださいアルカードさん! 背中がとってもファンシーですよ!」
「やかましいわ! これじゃ闇の眷属じゃなくて、ただの『ゆるキャラ』だろうが!」
その夜、アルカードは「浄化」の副作用で、朝まで部屋の掃除を隅々まで徹底的に(鼻歌を歌いながら)させられる羽目になったという。




