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「あんたがいいのよ、だから……受け入れてくれる?」
「え、うん、あれ……?」
結局、放課後まで機会がなくて言えなかったけどできないまま家に帰ることにならなくてよかった、一応言っておくと私が逃げ続けた結果ではないから誤解しないでもらいたい。
「よし、これで終わりね。あ、はい、これが証拠ね」
「なんか雑……だけど嬉しいよ」
「うん、じゃあゆっくりしましょ」
「あれ、学校に残るの?」
「急いで帰っても仕方がないしね」
それにいま家なんかで二人きりになると彼女がすぐにくっついてくるから駄目だ。
十八時ぐらいまで時間をつぶし、家に帰ってからものんびりとすればいい。
「へへ」
「近い」
ちゃんと自分の椅子に座っているから迷惑ということもない、だからこそ困るわけだ。
「いいじゃん」
「あんたがくっつかないように学校にいるのにこれだと意味がないじゃない」
「あ、そういうことを言うならもっとくっつね」
「なんでよ」
くっそう、温かいから悪くないというのがなんとも。
こういうときに限って生徒はすぐにいなくなるし、教師なんかも来ないから彼女はやめたりしない。
そうかっ、それならこうしてやればいいのだ。
「いい?」
「え、あ、な、なにを?」
私が攻める立場になってしまえば彼女はこんなものだ。
ふふふ、これからも彼女のペースには絶対にさせない、仮にこのままこの子がマジになってすることになったとしても初回をちゃんとやっておけばどうなるのかを理解して調子に乗らないようになるはず、なんにも無駄ではないのだ。
「そんなのキスに決まっているでしょうが、あんたは求めていたわよね?」
「が、学校なんだよっ?」
いける。
「そんなのどうでもいいわよ、ほら、嫌ならいますぐにでも走り逃げなさい」
「わ、わかったっ」
「ふっ、逆になってしまえばこんなもの――って、なんで目をぎゅっと閉じてんの?」
こちらを押しのけて離れればいいのに胸の前で手を組んでプルプルと震えているだけだった。
「き、キスしていいよ!」
「アホかっ」
「あいたっ!?」
でも、なんか後回しにすると一生できなくなりそうだから一応周りから隠しつつやらせてもらった。
また呼吸をやめているのか真っ赤になっていく彼女の上からどいて普通に椅子に座る、うん、別になんてことはないな。
「はぁ、教室でやるなんて私の友達は変態だわ」
「うわぁ、盗み見するとか変態じゃん」
「それよりこの子をなんとかしないと危ないわよ」
「起きなさ、いっ」
「ぎゃあ!?」
大丈夫、彼女なんてこうすればすぐに復活する。
「うぅ、酷いよ……」
「はは、帰るわよ」
「うん……」
ゆみも変な遠慮をするどころか友達を放置してよく来てくれているからその点でも気にならなかった。
そのため、前日まであったモヤモヤなんかは全部吹き飛んでいたのだった。