第八話 朝はパン派だが、たまのご飯が沁みる
アランがアザーへ帰った後、サクと田嶋くんもボクの家に帰って行った。ん?ストーカー事件は解決したのになぜボクの家に?
22時になりボクと西口さんは上がった。
「蒼井さんも友達が居たんだね。お友達が初めてコンビニに来てくれたから、談笑するのは許したけど、次からは勤務中にお友達と話して仕事を放って置くのはだめだよ」
西口さんも優しい人なんだな。でも、なんでボクが友達が居ないと決めつけていた。ボクが居ないと断言するのは良いが、他人から言われると少し腹が立つ。アランも言ってたけど。
家に帰ると、石鹸の匂いが漂っていた。リビングにはお風呂上がりのサクと田嶋くんがテーブルに座っていた。
「なに、上司と部下みたいな事やってんの」
止まらないサクの話をずっと聞きながら、グラスにビールが無くなると注ぐ田嶋くん。
「おぉ、おかえり〜。田嶋やっぱ良いやつだわ」
「すみません寛いじゃって」
あたかもマイホームかのように、寛いでるサクと、寛げていないのに謙虚な田嶋くん。タコヤキの件で、二人とも疲れているはずなのに、ボクが家を出た時と変わらない様子だ。
「もしかしてだけど、このまま泊まるつもりじゃないよね?」
サクはびっくりした顔で、
「この状態で出ていけって言うのか? 湯冷めするぞ」
(知らん、知らん)
ボクが、呆れ顔になっていると、
「僕からもお願いしたいんだ。この時間から帰ると両親に不審に思われるんじゃないかと思って。泊まるって言って来たし…」
なるほど。確かにサクというアラフォー男の家にいきなり泊まりに行くという話も、心配しているかもしれないしな。そこで、未成年が夜23時前に家に帰ってくると、何かされたんじゃないかと心配するかもしれない。
「仕方ない…。今日は泊まって行けば。一人はソファで寝れる、もう一人は…」
「はるみの部屋か?」
「は?は? 未成年二人で泊まるのが心配だって言ってたのに?」
冗談でもそう言った事を言われると、年頃の娘にはハードすぎる。
「いや、田嶋はダメだぞ。俺だよ。親子でもあり得る歳なんだから、大丈夫だろ」
(何、平然とした顔で言ってるんだこの人)
「親子じゃない…」
ボクは下を向く。
「え?もしかして、俺を恋愛対象に入れちゃった? フッ。かっこいいもんな〜俺」
ナルシストオーラ全開のサクだが、
「ちげーよ! 他人と同じ部屋で寝るのが嫌だって事だよ!」
きょとんとするサク。
実際、ボクは正直サクと同じ部屋でもどうって事ないはず。だが、いざ面と向かって言われると、胸の鼓動が身体から飛び出そうなんだ。思わずキツイ口調になってしまったが、冷静を取り戻し、
「布団をここに1枚持ってくるから、そこでもう一人は寝てね。布団持ってきたら、ボクはお風呂入るから、先に寝てて」
ボクはリビングから出ようとすると、
「はるみ、見てみろ!! せっかく泊まりなんだ。これやろうぜ!」
サクはテーブルの上に、トランプやバランスタワーやら、テーブルで遊べる物をいくつか並べていた。ボクは凄くウキウキした。だって、こう言った遊びを両親以外でやったことがないからだ。いつか友達と夜更かししながら遊べるのを、心のどこかで夢に見てた。
「気、気が向いたら、ね」
ボクは最高のツンでリビングを後にした。
サクはきっと、ボクの過去を知って今日は絶好のチャンスだと思ったんだろう。お◯さんなのに、優しいな、ほんと。
お風呂から出ると、気づけば40分は入ってしまってた。お風呂はそんなに好きではない。いつもだったら10分で出れるのに、今日は疲れたのと、ウキウキした事が待っているという事で、寛いでしまった。
(いつもより長風呂しちゃったし、二人もう寝てるかな…?)
リビングを開けると、二人はさっきの位置と変わらず、まるでデジャヴ。バイトから帰ってきた時と同じ光景だ。
「おかえり〜」
「おかえりなさい蒼井さん」
あぁ、友達ってこういう事なんだな。さっきと同じ光景だと思ったが、二人の目を見ると少し目が虚になっている。眠たかったはずなのに、ボクを一人残して寝ないようにしてくれてたんだ。
「ありがとう二人とも。今日は疲れただろうから、せっかく明日休みだし、明日に回して今日は寝よう」
「い、いのか?」
サクはお酒が入って、さらにボクが寝ようと言った言葉でさらに眠たくなり、限界そうだ。
田嶋くんは頑張って目を開けてるが、充血してきている。
「うん、なんだか、ボク一人で部屋に行くのも寂しいし、今日は二人と一緒にここで寝るよ」
本来だったら、サクはお得意のイケボで反応し、田嶋くんは真面目な答えをするはずだけど、布団を敷くと転がるように二人はスヤスヤと眠りに入った。
ボクはソファに横になり目を瞑る。しばらく、両親がいない家に一人で居たけど、やっぱり人の温もりって良いな。近くに安心できる人たちが居てくれるって、こんな心強いってことなんだろうな… zozozo…
ボクも寝転んだ途端、眠気に襲われすぐに寝ついてしまった。
(ハッ!! 今何時!?)
AM8:03
(ヤバ! …って、今日は土曜だけどバイト休みかぁ。 くぅー、最高!)
もう一度目を瞑ろうとするとなんだかいい匂いがする。目を開けて、匂いがするキッチンの方へ顔を向けると…
「おぉ、起きたか。おはよう」
「おはようございます。蒼井さん」
なぜかエプロン姿のサクと、パジャマから着替えてお皿を配膳している田嶋くんが居た。
(あ、そうだ。昨日この二人泊まってたんだ)
「眩し」
朝から爽やかな二人に、目がやられる。
「飯できたけど、食うか?」
「寝起きなので、無理には食べなくていいですが…」
ぐぅぅぅぅー…
ボクの腹の音だ。そう、ボクは寝起きからイケるタイプの人だ。朝からカツ丼だってイケる口だ。
「腹減ってんなら、あったかいうちに食べろ」
言いたくはないが、サクからお兄ちゃんのような、お父さんとは違った暖かさを感じた。
「か、お洗ってくる…」
一応、年頃のJKだ。顔を洗わず、歯も磨かないまま顔を合わすのは恥ずかしい。ボクは忍者のように壁に沿いながら、洗面所へ行った。
洗面所から戻ってくると、なんという事だ。男二人が用意した朝ごはんと思えない内容だ。ツヤっとした白ごはんに、三つ葉の乗ったお吸い物、丁度いい量のレタスに、鶏とブロッコリーとトマトを和風っぽく煮込んだ物や、焼いた鯖もある。しかもフルーツにイチゴまで。今8時だよな? 確かNADEMOのショッピングモールは珍しく7時開店だったけど、開店して買い物行くにも6時に起きないと間に合わないし、この量を1時間足らずで作ったのか? 恐ろしいぐらいデキる男二人だ。 ボクは卵焼きにウインナーを焼くのが限界だぞ?
ボクが出来上がったご飯を見て、固まっていると、
「なんだ? 嫌いな物があったか?」
と、サクがボクの長い前髪を上げながら言った。
「ちょっ!」
"案外可愛い顔してんじゃねぇか、何でいつも暑苦しい前髪なんだ?"
しまった。ボクは前髪を上げるとテレパスが起動してしまう。小さい頃は相手の気持ちが読めて楽だったが、変態事件以降、ボクは誰の思いも読みとりたくなかった。基本的に、人の気持ちを知って良いことは無いからだ。マイナスの言葉ばかりを、声に出さず言われる毎日はかなりしんどかったからな。なのに…
(可愛いってなんだよ! 不覚にもキュンとしちゃったじゃないか。あー、顔が熱い)
ボクは前髪を直し、
「凄く豪華で驚いていただけ。頂きます」
と、美味しそうな朝ごはんを頂く。
「蒼井さん、顔赤いけど熱ある?」
田嶋くんは、ボクのおでこを触る。それによりどんどんボクの顔は赤くなるばかり。
(この二人… 泊めるんじゃなかった。ボクにはまだ早かったよぉぉ)
心の中ではシクシク泣き、顔は赤くなり、もう訳が分からない。
(…って)
「美味しい!! 白ごはんだけでもこんなに美味しいのに、鶏も朝にピッタリな味付けでお吸い物も沁みるー…。 二人共、料理するんだね」
ボクの食べている姿を見て、嬉しそうな顔をしている二人。
「うまいだろ。冷蔵庫の中見たらマカロニサラダしか無くて、流石にびっくりしたけどな。高校生だとまだ親に作ってもらう年頃だからなぁ。また作ってやるよ」
「まぁ、僕はお吸い物と鯖を焼いて、後はお皿に盛り付けただけだけどね」
サクは流石、自身満々。田嶋くんは謙遜しているけど、きっとこのお吸い物、出汁から取って作ってる。雑味も無くて、透き通った暖かみのある味。きっとお母さんから教わったんだろうな。
「さっ、食え食え! 食ったら、遊ぶぞ〜」
サクは少年のように無邪気な笑顔だ。田嶋くんも懐かしみながら口を早く動かして食べている。あぁ… 今日はいい休日だな。
そんなひと時を過ごしていたボクらだが、アランの言っていた様に、新たな敵との衝突は刻一刻と近づいていた…
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