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第六話 幽霊


 ボクは恐る恐るもう一度下を確認すると、二つの目と目が合った。幽霊なんて実在しないと信じ、怖さを紛らわせていたんだ。実際に会うと、こんなにも足がふ、る、えぇるんだな。もう寒さで震えているのか、怖さなのかボクにも分からない。とりあえず、目を逸らすと…


 「ひぃえっ!!」


 何かが、ボクの足を掴んだ。怖くて見れないが、絶対幽霊だ。幽霊があの世まで連れていこうとしているんだ。お母さんお父さんごめんなさい。ボクは何もできずに、しかも幽霊にボクの人生を終わらされるなんて…


 「さ、三途の川が見える… これってこういうことだったんだな…」


 「あのー、さっきから何言ってんの?」


 下から聞こえる声。やばい。幽霊がとうとう話しかけて来た。ぎゅっと目を瞑り、


 「もうボクをあの世に連れていくんでしょ。分かってます。心の準備もできてます。ボク友達居ないし、両親も不在なのでもう何も失うもの無いんで。早く連れて行ってください。何より寒いからっ!!」


 何も返答が無い。ゆっくり目を開けてみると、目の前には口髭にキリッとした眉、そして堀が深くダンディーな幽霊が。


 「なんか思ってたんとちゃう!」

 「何でお前が先にその方言使うねん! 俺の方言のインパクト下がるやないか!」


 若干引き気味のボクに、胸ぐらを掴む幽霊。


 「お前さっきから何ゆうてんねん。イカれてんのか? これなんなん? なんかベタベタやし、こんなんで連れて帰んの嫌やねんけど」


 喋り方も思っていたのと違った。ボクも何で咄嗟に関西弁がでたんだろう。そして、なんでこの人関西弁? この幽霊、関西出身とか?


 「いや、幽霊には塩が効くと思ったので… でもサラサラだと引っ付きにくいし、水と合わせて…」


 「お前今なんてゆうた? 幽霊? 誰がやねん」


 「いや… あなた… あ、幽霊になったことも気づかずに過ごされていたんですね。 これは余計なお世話でした。申し訳ございません!」


 胸ぐらを掴み直される。


 「ひぃぃっ!」


 ボクは人と関わることがあまり無い。でも、オラオラしてる男に胸ぐらを掴まれるなんてもっと無い。幽霊ってだけでも、怖いのに、何でよりによってオラオラ系に会ってしまったんだ。


 「ビビってんちゃうぞ。 俺、幽霊ちゃうわ! なに変なこと言ってくれてんねん。 こんなかっこええ幽霊おったら逆に喜べ」


 こいつも自己肯定感高い系ね。しんどいしんどい。好きに言ってくれても良いけど、自己肯定感の低いボクに、見せつけられてもしんどいよ。他所でやってくれ。呆れ顔のボクに、自称、幽霊では無い男はすごくキレている。


 「もうええわ。 帰ったら速攻風呂入ろ。ほな、行くで」


 自称、幽霊では無い男が手を下に差し伸べ、ブラックホールのようなゲートを出した。これって…


 「ちょ、ちょちょ、これってもしかしてアザー行きのゲート? もしかして本当に幽霊じゃなくて、アザーから来た人?」


 「お前、ほんまに分かってへんかったんか? まぁ分かってても分かってなくても、俺はどっちでもええけど」


 ゲートにボクも一緒に引き込まれる。


 (やばい。 まだ田嶋くんのストーカー見つけれてないし、まだ行くわけには行かない)


 ボクはそこで引っ掛けれる紐を思い浮かべ、カウボーイのロープを思いついた。


 「カウボーイウェーーイ!!」


 ぶるんっぶるんっ シュッ。


 「引っ掛れええええ!… あれ?」


 かっこよく回し、棚の足に引っ掛ける事が出来たと思ったのだが…


 「小さ!これ」


 そう、カウボーイのロープは絵でしか見た事が無い。絵本サイズのロープなんかで、届くわけが無い。それでもボクは諦めない。次に良いものを思いつく。


 「綱引きオーエス!! よし、実物通り出て来た!」


 だが、綱引きのロープは太く重い。運動嫌いなボクが回せるはずも、棚に引っ掛けるなんて不可能だ。そうこうしてるうちに、どんどん引き込まれていく。


 「悪足掻きはやめな。そんなんしても、体力削られるだけやから」


 ええってもう。と言わんばかりの顔をして、ボクを離さず引き込んでいく。


 (寒いし、腕痛いし、あー、頭も痛くなってきた)


 「疲れ…」


 ボクが諦めかけたその時、ガラス越しにサクと田嶋くんが見えた。ボクは力尽きた身体を奮い立たせ、サクに向かってハワイアンビームを打つ。ビームはガラスを貫通し、見事サクに命中した。と、思ったら、避けた。


 「おい!なんでやねん!」

 「お嬢ちゃん、俺の喋り方、そんなに気に入ったんか? それとも、おちょくってんか?」


 ボクは早く気付けとハワイアンビームを何回も打つが、全て避けられる。店内の入り口付近では穴だらけだ。西口さんは何故か気付かず、平然とレジにいる。何故?


 まぁそれより、早く気づいてもらわないと。右手はヒゲ関西男、左手はゲートに入ってしまってる。もう叫ぶしかない。


 「良い筋肉してるよ! 美味しそう!」


 ボディービルダーの声掛けのように叫んだ。だが、それでも気付かない。この恥ずかしさを、どこで解消すれば…。


 「あーーー、そろそろ気づいて! 筋肉おじさん 裸エプロンするからーー!」


 すると、サクの筋肉がピクっと動き、気付けばウォークインのドアを開けてボクのところまで来てくれた。


 「はるみ!!」


 と、言ってボクを引き上げ、ボクは後ろにいる田嶋くんの所へ。田嶋くんは無能力者なのに、全く怖がってない様子で、ボクの手を強く握ってくれた。サクは少し怒った表情で、

 

 「誰だお前。 名前は」


 と、問う。


 「名前? 俺はタコヤキや。 その嬢ちゃん返してくれへんか?」


 めんどくさそうに答えるヒゲ関西男。


 「待て。今関西弁喋ったか? しかも名前たこ焼きって。アザーの奴が、日本の一つの文化ズブズブじゃん」


 「もうええって、喋り方にツッコむん。もう俺の喋り方のインパクト消えてんねん。日本?お前らの星のことか。タコヤキちゅーのはなぁ、赤い魚を生地で包む美味いやつやねん、知らんやろ? あれはええで。美味いもんの名前って嬉しいもんやなぁ」


 流石にボクと田嶋くんもニヤけてしまう。


 「それはすでに俺らの星?にもあるぞ。名前もお前の名前の通り"たこやき"だ」

 

 きょとんとするタコヤキ。


 「え、ほんなら俺お前らの星の食いもんの名前でもあるっちゅうことか。なんか嫌やなぁそれ。ってか、その嬢ちゃん返してくれってゆーてんねん」


 「それは断る。非現実的体験が出来なくなるだろ。俺からファンタジーを奪うんじゃねえ」


 「そんなん知らんわ、嬢ちゃんもはよこっち来い。おっさんうるさいんやわ。どいつもこいつもあかんちゅうてな、俺がこれで連れて帰ったらちょっとは黙りよるやろ」


 耳糞を穿りながらめんどくさそうに話すタコヤキに、


 「ヴァイロンはアイツって言ってたし、タコヤキはおっさんって、その人は何者なの?」


 と、ボクは問う。


 「王さんや、王様。 何で嬢ちゃんに執着するんかは分からんねんけど、嬢ちゃんが欲しいみたいやで。だから嬢ちゃんのオトンとオカンがアザーに攫われたって聞いたけど、逆に嬢ちゃん、なにもんなん?」


 「いや… 超能力は使えるけど、それ以外はただの女子高生だけど」


 「ただの女子高生はないやろ。おっさん、アイツがおらな無理って言ってたで。…って、お前もおったんか」


 (性格の悪そうな顔… 顔は良いのに勿体無い)


 ボク達3人は誰の事を指してるか分からず、お互いに首を振る。


 「お前やお前、ひょろい兄ちゃんや」


 「ぼ、僕ですか? 何処かでお会いしましたっけ?」


 田嶋くんは不思議そうにきょとんとしている。


 「兄ちゃんにくっついとったら、この嬢ちゃんに会えると踏んだんが、正解やったな」


 3人で顔を見合わせる。


 「もしかしてお前!」

 「タコヤキが!」

 「僕の!」


 「ストーカーの正体!?」


 3人の声が揃う。


 タコヤキは得意げな顔をしている。


 「そうや。その兄ちゃん、嬢ちゃんが作り出したもん大事に持っとったからなぁ。おっさん、名前も特徴も言わんと早よ行けって、ケツ叩いてきよったから、難儀すると思ったわ。でも、おかげで嬢ちゃん見つかった。ありがとうな兄ちゃん」


 「僕がコイツのところに、蒼井さんを導いてしまったのか。 僕は何てことを…」


 青褪める田嶋くんにボクは首を振る。


 「でも何で気づけなかったんだろう。こんな半裸男が付き纏っていたら、誰かは気づいて警察に通報してると思うけど…」

 

 サクが真剣な声で、


 「"透明人間"だったりしてな」


 と言った。


 「御名答。俺はステルスの能力を持つめっちゃすごい奴。だからそろそろ渡してくれんか? そろそろ寒いっちゅうねんココ」


 田嶋くんはボクの手を強く握りしめて、離さない。


 (そうだ。ボク塩水まみれだからすっごく寒いんだった)


 改めて寒さに気付き震えるボク。


 サクは来ていたシャツをボクに投げてくれたが、


 「すっごくありがたいんだけど、もうこのシャツじゃ補えないぐらい寒い…」


 ボクは震えが止まらない。


 「女をいたぶって何が面白いんだ、たこ焼き野郎。 俺の拳で爪楊枝のように刺してやるよ」


 「いや、そのベッタベタなんは嬢ちゃんが勝手にやってんけどな。まぁええわ。俺に当たるならいつでもかかってこい」


 タコヤキは本当に姿が見えなくなった。


 するとサクは、凄い勢いでパンチを放つ。狭いウォークインでのサクのパンチは、ボクらの口が、空から飛び降りるように揺れた。


 だが、タコヤキには当たらない。このステルスという能力は厄介かもしれない。どれだけ威力や胴体神経が良くても、当たらないと意味がない。


 「ほらな、当たらんやろ。寒いしもうええか?」


 声は聞こえるが、ステルスの状態で姿が見えない。どうにかステルスを解ければ良いのだが…


 「確かに当たらねぇな。ここでパンチを炸裂すればいつか当たるんじゃねぇかと思ったけど、はるみ達が危ねぇしな。んー、どうしよっかな」


 「ボクもタコヤキの姿が見えない時、何かに当たってる感覚はあったけど、見えないから何もできなかった。幽霊だと思ってたし…」


 そこで田嶋くんがハッとする。


 「蒼井さん、ちょっと良い?」


 田嶋くんはボクに耳打ちをした。ボクは言われた通りにやってみることにした。タコヤキにはバレないように、


 「アイロンジュウ」


 と唱え、何も言わずにサクに熱を与え続ける。


 すると、サクは動じずどんどん腕が赤くなっていく。その変化をすかさず察知し、タコヤキは口を開く。


 「筋肉の兄ちゃん、赤くなっとるけど、何してんのや? 俺には当たらへんってゆうてるやろ?」


 「あぁ、寒いから霜焼けになってるんじゃね?」


 サクはとぼけたが、この言い訳が通用するのか?


 「ダサいな。俺なんか見てみぃ、この張りと弾力。寒さなんかに負けへんわ」


 (通用してるよ。単純だなタコヤキ。でも、アナタ今見えないからどんな状態か分からないよ)


 「おぉ、そうか! じゃあ遠慮なく行かせてもらうぞ」


 電動ドリルのようにサクは回り、声の聞こえる方向へ向かう。


 「あー、だからそんな闇雲にやってもなぁ。って、あっつ!! 霜焼けちゃうかったんか!? やけどするわ…」


 すると、ステルスの能力が消え、半裸のタコヤキが現れた。胸の辺りに火傷をしている。お母さんがアイロンがけの途中、床に置いている事に気づかず、足に当たって火傷したように…


 その瞬間、サクはすかさず猛烈なパンチを炸裂させる。その名は、


 「ウルトラシャインパーンチ」


 だそうだ。うん、絶妙にダサい。ん?ボクも言えたものじゃないって? いいんだ。ボクはあ、え、て、ユニークな名称にしてるんだから。


 「蒼井さん誰に話してるの?」

 「あぁ!何でもないよ、独り言」

 「そ、そっか。わかった」


 田嶋くんからボクの好印象ゲージが1つ下がったな。


 「ってそれより、何で熱でステルスが解けるって分かったの?」


 「あぁ、蒼井さんがステルスの状態でも当たった感覚はあったって言ってたよね。つまり、見えないだけで、実態は残ったままって事なんだ」


 「でもそれだと、サクのパンチは初めから当たってたはずじゃない?」


 「サクさんの初めのパンチはどこに居るか分からない状態でやったからじゃないかな? 僕達は見えてないから移動されたって対処ができない。だから、ステルスの状態では当たらないって言ったんだと思うよ」


 「なるほど〜。田嶋賢いな!」


 横目でサクの姿が近づいてくるのが見える。タコヤキはと言うと…


 「あー… なんか可哀想。歳サクとあんまり変わらない感じだと思うけど、この年齢でボコボコにされた姿を見るのは、何だか申し訳ない気持ちになるね」


 「確かに…」


 ボクと田嶋くんは共感しているが、サクは


 「ボクちゃんたち、甘いね〜。娘同然の女の子を甚振ろうとしたんだから、それ相応の罰は受けさせないと」


 (サクの娘になった人、男に苦労するだろうな…)


 「お? てことは、田嶋のストーカー事件解決したんじゃね?」


 サクはボクと田嶋くんの間に入り、手を握ったあと、腕を上下に振る。


 「バンザーイ、バンザーイ…」


 ボクと田嶋くんも雰囲気に呑まれ、笑顔で喜びを分かち合う。だが、何だか嫌な予感。ボクはふと後ろを振り向くと、


 「サク!!後ろ!!!」

読んで頂きありがとうございます。

引き続き頑張ります。

応援して頂けたら幸いです。

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