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第五十一話 田嶋くんとヴァイロン VS タルト

 田嶋くんとヴァイロンのお陰で、タルトがサクへの意識が離れている間に、テレポーテーションによって、サクを救出。


 「サク! 生きてる?」


 と、重症を負ったサクにも手加減無く叩き起こすボク。


 「晴美さん… 今は…」


 ジャガーがボクの荒い行動をを止める。やられるがままのサクを見て、ボクも正気に戻り、切られた腕を元にあった位置に合わせて…


 「アローエ・キズニハヤッパリコレ!」


 「晴美さん、いくらなんでもそんな簡単に…」


 と、ジャガーが呆れていると、


 「あ、くっついた。そして、めっちゃ元気になった」


 ボクは棒読みで、サクのタフさにもう驚かない。


 「ちょ、す、すごい…ですね、貴方達は…」


 ボクの能力で腕を繋げる事が出来ただけでも驚いただろうが、重症を負ったサクが、再開した時よりも、ピンピンしている事に驚いて… いや、引いている。


 「はー、マジ死ぬかと思ったぜ。サンキュー、はるみ」


 「いいよいいよ、減るもんじゃないし」


 「いや、軽っっっ!!」


 サクとボクのやりとりに、もう着いていけないジャガー。


 「サク復活したんなら、加勢したら?」


 ボクの提案に、サクは


 「いや、あの若造はあの2人に任せよう。男がやる気になってんだ。今は見守って、その間に…」


 と、欠伸をしながらお尻を掻いている王様を鋭い目で見る。殺気を感じた王様は、針金の入ったような首で、こちらを見ると、顎がガクガク震えている。


 「ねぇ、ジャガー。あの人、王様なんでしょ? 一応恐れられているんだよね? 何であんなに怯えているの?」


 「そのはずなんですが、何だかいつもと様子が違う気がします。ですが、最後に見た時より、痩せ細ったように見えますね」


 「今まで散々な事して来て、あの反応には反吐が出る。アイツがどう動くか分からねぇし、はるみとジャガーはここで待っててくれ。田嶋達の治癒も必要になるかもしれないしな」


 ボクとジャガーは田嶋くんとヴァイロン、タルトの戦闘に目を向ける。



 「おいおいおい〜。あんなに強気だったのに、なんだお前ら。さっき俺死にかけてたのに、しかも2対1で、なんで押されてんの?」


 タルトはお得意の切断で翻弄し、身体が元に戻っていく中、田嶋くんとヴァイロンは傷だらけだ。


 「ヴァイロンさん、僕の事は気にしなくて大丈夫です! 戦いに集中してください!」


 息を荒くしながら、怒っている田嶋くん。


 「ジャガーがやってくれたことによってマシになったのかもしんねぇけどよ、相手はコイツだけじゃない。今はどこにいるのか分かんねぇけど、アランが必ずここに来る。その時にお前動けなかったら後悔すんだろ!」


 ヴァイロンも同様に、息を荒くしながら強く言い返す。


 「僕は…。僕は! 自分の力で人を守りたいんです。誰かに助けられて勝つために来たんじゃない。だから、ここで僕が戦闘不能になっても、この男を止める事ができれば、蒼井さん達の力の温存が出来る。だから、ヴァイロンさんは自分のやり方でやって下さい! あの賭け忘れたんですか?」


 「チッ…」


 少し悪い表情をしながら、舌打ちをしたヴァイロン。


 「わーったよ。後で「助けて〜」なんて言っても知らねーからな」


 「大丈夫です。僕は我慢強い方なんで」


 田嶋くんとヴァイロンは拳同士を軽く当て、二人で気合を入れ直す。


 その光景を見ていたタルトは、


 「お前らも、さっきの奴らも、戦闘中にお喋りしてる余裕どっから湧いてくるんだ? 見てる感じ、あのおっさんが一番強そうに見えたけど、アイツでも俺を殺せなかったんだぜ? お前らで何ができんだよ」


 田嶋くんとヴァイロンは鼻で笑うかのように、少し下を向き笑った。


 「それは」


 二人の声が揃う。


 「ここからのお楽しみです!」

 「こっからのお楽しみだぜ!」


 勢い良く走り出した二人は、さっきまでやられていたとは思えないほど俊敏な動きでタルトを惑わせる。


 「コンフィデンス・ファイヤー!」

 「すっげーのいくぞ!」


 田嶋くんのスティックからは、炎のムチが現れ、しならせながら、タルトの全身を拘束する。そしてスティックを持つ手と反対の腕で、タルトの背後に手を伸ばした。同時にヴァイロンは、青く晴れていた空から一転し、光を消した空に変わり、そこから一つの太いイナズマがタルトに向かう。


 「お前ら何度やっても同じなんだよ。俺は自由に身体を切れるんだからよ」


 と、タルトは余裕な態度をしているが、顔色が変わっていく…。


 

 「く… なんでだ…。き、切れねぇ…」


 と、焦るタルトを待つ事なく、ヴァイロンの放ったイナズマが命中する。辺りがパッと明るくなり、電池切れしたようにすぐに光が消える。


 顔を見合わせる、田嶋くんとヴァイロン。


 「なんだよ、俺の気遣いは無駄だったのかよ。やるじゃねぇか、田嶋」


 「いえ、気にしなくて良いとは言ったものの、さっきまで庇いながら戦ってくれたお陰で、考える時間が出来たんです。ありがとうございます、ヴァイロンさん」


 そう、言葉を交わしタルトの方へまた目を向ける二人。このまま勝利と行きたいところだったが…


 焦げた蒸気が晴れてくると、ボロボロになった身体で立っているタルトの姿が見えてくる。そこから掠れた声で、


 「田嶋…?って言ったか…。お前、何をした…」


 と声が聞こえた。


 「まだ立てるんですね。さすが王様の側近。そんな人に同じ事を2度は通じないので正直に伝えますが、能力を無効化にする薬を注入させてもらいました。僕の知り合いに、なんでも作れるガラクタおじさんがいるんですよ」


 (それってお爺さん…だよね…)


 離れて見ているボクは、ガラクタおじさんの名を聞き、懐かしく、そしてここまでに至った背景を思い出し、グッと胸が熱くなり、見守る。


 「けっ…。アランの他にそんな物作れるやつがいんのか。まぁ、それも数に限りがあんだろ。それに警戒しておけば、俺には怖いもんなんてないね」


 話していくうちに、掠れた声から正常に戻っていくタルト。だが…。


 「あー。だと思いますよね。でも、こんなにも渡されちゃって。僕、どれだけ期待されてないんだろって思っちゃいますよね」


 と、田嶋くんは苦笑いしながら手に溢れんばかりの能力を無効化するポーションを見せつけた。


 「はぁ!?」


 と、タルト。ではなく、ヴァイロンが驚き、眉間に皺が寄る。


 「まぁまぁまぁ…」


 田嶋くんが落ち着かせようとするが、ヴァイロンの興奮は止まない。


 「さっき『考える時間ができました』つってたけどよぉ! 考えるまでも無くそれ早く使えよ!」


 ヴァイロンは田嶋くんの額に、自らの額をぶつけキレる。それに負けじと田嶋くんは押し返し、


 「男が最初っから楽な道を選んで、自分の力で勝てましたって言えないですよ! 今までの過程があったからこその、今ですー!」


 怒り慣れてない田嶋くんは何だか可愛く見える。その可愛さにヴァイロンもそれ以上強く言えず、


 「まぁ、よくやった」


 と、ボソッと田嶋くんに感謝の気持ちを込めて褒めた。が、その時、二人の目の前に、ナタを持ったタルトが現れる。


 「卑怯な奴らめ! 男ならまっすぐ立ち向かってこいよ!」


 と、フラフラしながらナタを振り回す。だが、身体の傷がゆっくりと修復していくタルト。


 「無効化いつまで効くんだ?」


 ヴァイロンはタルトの攻撃を避けながら、小声で田嶋くんに問う。それに田嶋くんは1本の指を立ててヴァイロンに向ける。


 「1時間か。なら、コイツをやるなら今だな」


 と、勝利を確信したヴァイロンだったが、田嶋くんが凄い勢いで首を横に振る。


 「なら、1分か。まぁ1分でも俺ら二人ならギリギリやれるか」


 ヴァイロンが田嶋くんの顔を見ると田嶋くんはまた首を横に振り、


 「すみません。1秒です」


 と、真剣な眼差しで答えた。


 「このやろーー!! それなら早く言えよ! タルトのやつもう勝てる気満々だぞ!?」


 止まらないタルトの攻撃を避けながら、ヴァイロンは田嶋くんに拳骨を与え、頭にたんこぶができた田嶋くんは頭を押さえながらタルトの方を見る。タルトは身体中の関節をポキポキ鳴らし、


 「そんなガラクタ何個あっても俺には敵わねえな。さっきは気抜いたけど、二度目はもう無い」


 ヴァイロンは田嶋くんへ、


 (おい、種明かし早すぎたんじゃねぇか? 言わなきゃタルトのやつ能力使わなかったんじゃ…)


 と言う想いを抱くが、


 「でしょうね。でもここで勝った気になるのは早いんじゃないでしょうか」


 と、タルトの攻撃に反撃しながらやる気に満ち溢れている田嶋くんには何も言えなかった。と、その時、



 「ゔぅっ!!」


 タルトは頭を押さえ苦しみ始めた。だんだんと血の気が引いていくような顔色になり、田嶋くんとヴァイロンは攻撃を止める。



 「チッ…そろそろ限界か」


 ボソッと呟いたタルトは、胸元から注射器のようなものを出し、頭へ差し込んだのだ。刺した所から少量の血が頬へ垂れ流れる。


 「そこは首じゃなくて頭なの!? 頭に刺すって勇気あるー」

 「いや、そこ今どうでも良くないですか? しかも、首でも凄いですよ」


 と、思わず突っ込んでしまったボクへ、冷静にツッコミを入れるジャガー。



 すると、タルトの目は赤く充血し、腕の血管が盛り上がっていく。


 「おいおいおい、なんだその見るからに悪そうな液体は」


 と、ヴァイロンは顔を引きずりながらタルトへ問う。


 「能力値強化の薬だ」


 ヴァイロンの問いに素直に答えるタルト。


 「薬ってハッキリ言ってるよ。バトル系で悪者がいけないモノに手を出す、よくあるパターンですね」


 頭に軽く手を当て、呆れ顔の田嶋くん。


 「うるせえ…。後一回だ。後一回でお前らを殺す。覚悟しろ」


 身体に大きな負荷がかかっている様子だが、薬によってパワーアップしたタルトは、わざと身体を二つに切り離し、切り離された上半身をさらに二つに切り離した。よって、タルトの身体は二人となった。


 「アイツの能力は自分の血液を使うからな。消費量が激しかったんだろうよ。あんなもんに頼る気持ちも分からんでもない。それでもさっきまでの、あのタフさは認めざる得ないな」


 タルトが二人になった事で、1対1の戦いに持って行かれた事を少し焦りながらも、タルトの強さを認めるヴァイロン。

 

 「でも、ここで食い止めないと、あちらで戦闘が始まっているサクさんに迷惑をかけるわけにはいけませんし、必ずここで止めましょう」


 ジャガーの応急処置によって治っていた頭痛が再び現れながらも、気を緩めない田嶋くん。ヴァイロンはその様子に気づくが、心配の念をグッと堪える。


 「ぁったりめーだ。いくぞ、田嶋」


 「はい!」


 二人は共に向かってくるタルトへ一直線に走り出す。


読んで頂きありがとうございます。

前話からかなり日が開きましたが、ここから最終話まで続けて投稿しますので、次回も読んで頂ければ幸いです。


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