第五十話 サクVSタルト
「おっさんどうしたー? 全然俺にダメージ与えれてないけど」
血液で再生するタルトは、サクが生み出す渾身の一撃、ダイナマイトパンチでも、効果が無いようだ。
「ぅるせーぞ、若造。俺の秘めてる力はこんな物じゃねぇ。いでよ、静かなるドラゴンアームよ。トランスフォーム!!」
と、大層な言い方だったが、サクの両腕がさらに肥大化するだけであった。
「やっば、厨二病の、おっさんなんか見てられねぇよ」
タルトはドン引きだ。だが、恥ずかしがるそぶりもせず、サクはどんどんノリノリになっていく。
「ゔゔ!! ゔぉーー、来る来る来る…来たーーーー!! ドラゴンの神よ、お前の力、しかと受け取ったぞ」
「おっさんが空に手向けて何言ってんだよ。俺が恥ずかしくなって来るぜ。まーじやってらんねぇ」
ノリノリのサクに背を向け、何処かに向かおうとする、タルト。
(おいおいおい、お兄さん。どこに向かってるんでしょうかー?)
タルトと目が合うボク。怖くなりジャガーの後ろに隠れ、ジャガーもサクが手こずっている相手とやり合える自信が無く、後ろの取り合いをする、ボクとジャガー。
「こっちは、ビビりか。厨二病とビビり、お似合いメンバーだけどよぉ、お前らの好き勝手にはさせねぇよ」
何と、タルトは自らナタで上半身と下半身を切り取り、再生しながらボクとジャガーの元へ向かって来た。ボクは、能力の使い過ぎでテレポーテーションが使えても、2メートル先ぐらいまでしか進めないようになっていた。そのせいで、タルトはどんどん距離を詰め、一度でも隙を見せると、ナタで切られる寸前の所まで来ていた。ボクとジャガーが諦めかけたその時…。
ピシャッ!
「おい、お前の相手は俺なんだろ? 相手ほったらかせて、ちょこちょこ逃げる奴らの相手だと!? 調子に乗るな、若造」
と、サクが言った後、タルトを見ると、サクに攻撃を受けた腕が、再生しないのだ。
「ちょ、何で? 何で戻らねげんだ」
焦るタルト。それにサクは、
「何でって、俺が最強だから。それ一択」
と、煽った。煽ったことによってタルトは怒りに満ち溢れる。
「何が最強だ。お前なんかそんなおっさんになるまで、王様に必要とされなかったのに、どの口が言えんだ。孤児だった俺とサーラを、一目で引き取ったんだぞ? 側近まであっという間にのし上がった俺の実力にお前が勝てるわけないんだよ」
片腕が戻らない状況で、タルトはサクに立ち向かう。タルトは自分の身は守りやすい能力であるが、攻撃力としてはサクに劣っている。必死に喰らいつくが、サクのストロング・ガンによって、再生が追いついていない。
「お前の弱点分かったんだよ。お前は関節の所でしか切り離せないし再生できない。それを分かってしまえば、こっちの物よ」
「おっさん。それはどうかな」
「そのボロボロの身体で何が出来るんだ?」
と、サクの勝利目前だと思っていたが、タルトの再生しないと思っていた腕がみるみる生えて来たのだ。
「お前、関節からしか再生できないんじゃないのかよ…」
サクは焦った顔で、技をかけようと手を振りかざす。
タルトは腕だけでは無く、ストロング・ガンによって負傷した傷もどんどん再生していく。
「どうだ? おっさん。また一からになった気分は」
「そんなもの、叩き潰すまでだ。あの、のうのうとしている、じじぃを早くやりてぇからなぁ! パワーキーパー!!」
と、サクがその場から強烈なパンチを振るい、距離が少し離れた所からタルトへ攻撃し、その後すぐに全速力で走り、
「ストロング・ガン!」
「ダイナマイトパーンチ!」
と、サクの技が炸裂する。だが、タルトの回復した身体は、攻撃が当たる度に修復能力が速くなっていく。修復するとはいえ、少なくともダメージは与えられているはずなのに、様子がおかしい。だが、サクは負けじと攻撃を続ける。そして…
「んんん!!」
と、タルトがサクに向かって振り下ろし、避けようとしたサク。
「くっ!! 脚が」
サクの身体能力では、避けれていたはずなのに、脚が上手く動かず、リンボーダンスの様に上半身を逸らし避けたが…
「サク!!」
ボクの叫び声が響く。サクの両腕が切り落とされてしまったのだ。何故あの時に、脚が動かなかったのか。サクの足元を見ると、蜘蛛の糸で繭のように脚が縛られていたのだ。すぐにサーラの方へ、ボクとジャガーが目を向けると、気絶していたはずのサーラが、今にも倒れ込みそうな状態でサクの方へ手を伸ばしていたのだ。
「タルト… あんたは自分の体をもっと大事にしなさいよ…」
ボクは、テレポーテーションでサーラの元へ向かい、
「ファイヤーエクス…」
と、ファイヤーエクスポーションでトドメを刺そうとしたが、ジャガーに腕を掴まれ、
「蒼井さん、もうこれ以上すれば、死んでしまいます。僕、思ったんですが、この2人が僕達に立ち向かう理由があるはずなんです。何も無いのに、こんなに必死になって戦わないですし。意識が戻ったサーラさんに話を聞きませんか?」
「はぁ!? サクの、サクの腕が飛ばされてるんだよ!? 何が理由? 理由なんかどうでもいい! 次またサーラの連携で攻撃されれば、サクの命も危ないんだよ!」
ボクはパニック状態。なんだかんだ、サクはピンチになっても、圧勝の連続だった。なのに、サクの武器、両腕が無くなった今、ボクとジャガーだけで王様、最後にはアランもどうにかしないといけない。サクが戦力外になると予想ができていなかった事から、この先の不安と恐怖に押し潰されているのだ。
「蒼井さん。落ち着いてください。あのサクさんが手こずる相手です。僕達に何か出来ると思いますか? 僕達が手を出せば邪魔になるだけです。今はサクさんを信じて、状況整理をするのが僕達の役目だと思います」
ボクはジャガーの言葉で我に帰り、サーラに事情を聞く。
「何でアンタ達は、戦うの? 王様に脅されてんの?」
「脅されてなんか…ないよ…。ただ、私達は自分達を見て欲しいだけなの」
「どういうことですか?」
サーラの言葉に、ジャガーが問う。
「元々、キャラ被り… あんたの事は、執念深く欲しがっていたわ。でも、充分に実った状態で捕獲する予定になっていたから、それまでは、私とタルトの事を、実の息子娘のように可愛がってくれた。私達は、おじさんからすれば優秀だったから。でも、あんたが実ったと情報を知ってからは、私達の事を見てくれなくなった。しかも、実の息子が、有力な能力を持っているという情報も入ったから。だから、私達は、あんた達を倒して、もう一度おじさんに可愛がられたかったんだよ。ただ、それだけ…」
正直、アザーの民を犠牲にして好き勝手している王様に好いている事など、どうでも良いが、親の居ない彼女達からすれば、王様が父親代わり。ボクも、両親が失踪して理由も分からなかった時は、捨てられたと思っていたから、もう一度可愛がられたいと言う気持ちは凄く分かった。複雑な思いを抱きながら、
「でもね。その父親代わりの王様が、アザーの人達を苦しめているのは知ってるよね? そんな人に可愛がられても、また裏切られるかもしれないよ」
と、嫌味も少しあるが、目を覚まして欲しいという想いでボクは伝えた。
「分かってる。でも、裏切られても、私達の親はおじさんだけだから…」
これ以上は何も言えなかった。ジャガーも何も言わずに、ボクの肩にポンっと手を置いた。と、その時!
「トルネードキック!!」
両腕が飛ばされたサクは、残った足で戦っていた。
「おっさん、腕しか使えないと思ってたら、脚も使えんだな。だが、腕が無かったら、体勢保つのだけで精一杯だな。今までは簡単に勝てたかもしれないけど、悪いが、ここは負けるわけにいかねぇんだわ」
と、タルトはまた、自ら身体を切り、上半身と下半身に分かれ、次は下半身から身体が再生して行き、残った上半身でサクの足を掴み、短い時間の中で上半身が元に戻り、ナタを振りかざす!
「駄目!! サク!!」
と、テレポーテーションを唱えてサクの方へ急いで向かおうとした、その時、
「コンフィデンス・ファイヤー!!」
見た事のある技と、イナズマが、タルトに向かって放たれた。
「田嶋くん! ヴァイロン!!」
ボクとジャガーは涙目になりながら、田嶋くんとヴァイロンを見る。
「ごめんなさい、遅くなりました。ここからは、僕達に任せてください」
と、田嶋くんがボクに向かって両手を伸ばし近づいて来ていたが、その間にヴァイロンが入り、
「お前に俺の本当の実力を見せてやるから、しっかり見とけ」
と、ボクの頭をポンポンと叩く。何故か、田嶋くんとヴァイロンの目がバチバチと火花を散らしているが…。
「お前ら… 俺だけでも何とかなる… から、引っ込んど…け…」
サクは、田嶋くんとヴァイロンを見た瞬間、気が抜けたのか、その場で倒れ込んだ。ボクは即座にテレポーテーションを唱え、落とされた腕と、サクを抱え、もう一度テレポーテーションで、タルトから離れて、『アローエ・キズニハヤッパリコレ』で、腕を修復させる事に力を注いだ。
(頼むよ、田嶋くん、ヴァイロン)
ボクは2人の背中を見ながら、想いを託した。
「何だ何だ〜? お仲間かー…と思えば、ヴァイロンじゃねぇか。ただ捕獲するだけなのに何も出来ずに帰って来た出来損ないが、何の用だ?」
タルトが馬鹿にした顔と言葉でヴァイロンを挑発する。だが、ヴァイロンは、
「まぁ、お前が思っているよりも、俺は強くなってるけどいいか?」
と、負けない姿勢だ。
ここからは、田嶋くんとヴァイロンVSタルトの戦いが始まる。サクがボロボロにされた相手に、2人はどう挑むのか…。
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