第四十七話 実の父
「あ、でも安心して下さい」
と、ジャガーは肉球のついている掌をボクとサクに向けた。
「安心って、場所分からないんじゃ安心できないよ」
目を細めながら何を言い出すのかとボクは疑う。
「何か居場所が分かる方法はあるのか?」
とサクは素直に信じて話を聞く。
「はい、これを見てくださいよ」
ジャガーは鼻をピクピク動かしている。
「鼻?」
「鼻?」
と、ボクとサクはピンとこない。田嶋くんだったらすぐに分かってあげれていたのかも知れないけど…。
「そう、鼻です。僕は一応野生的な部分も持ち合わせているおかげで、嗅覚が優れているのです。なので、王様の匂いは覚えているので、ご安心を」
「おー!!」
拍手しながら褒めるボクとサク。だが、ボクは気づいてしまう。
「ちょっと待って。王様って、そもそも宮廷の一番奥にいるんじゃ無いの? 警備もしっかりとしないと行けないし…」
「本当だな、ファンタジーには鉄板だろ。ラスボスが最終局面で現れるんだから…」
簡単な事を見逃していたボク達は、ジャガーの方へ目を向けると、自慢げにピクピクさせていた鼻はしゅんと下に折れ曲がり、地面の砂を掻いている。それを見たボク達は、即座に煽てて、褒めたたえ、ジャガーの元気を取り戻した。
「ほんと世話の焼けるチーターなんだからっ」
「いや、お前もだよ」
「人の事言えますかね!?」
と、ボクの言った言葉によって、場は和み王の元へ向かった。
宮廷の中に入ると、アザーに来てから見て来た風景とは一変した。とにかく明るい、賑やか! 宮廷は王の敷地によって、裕福な暮らしが出来ているとは想像ができたが、近くに王がいる事で、静かで落ち着いた雰囲気だと思っていたが…
「いらっしゃーい、新作カップパフェありますよ〜」
「そこのお兄さん、お姉さん、このお団子、ツヤッツヤで甘いよ〜。食べ歩きにはもってこい!」
屋台やお店の人がどんどん客引きをしている。お客さんも、賑やかだ。
「ねぇジャガー… こんなに宮廷の中と外じゃ違うの?」
独裁的な王様の近くで、異様に元気で賑やかな状態に不信感を抱くボク。
「あぁ… この人達はもう諦めているんです。賑やかになる事自体は、王様も喜んでいるんですが、扱いに関しては最低限の衣食住を与えられているだけで、自由は奪われていますから。基本的に、何か大きな失態をしない限り、宮廷に一度住むと抜けられません。入った時点で、王様の配下になるという事ですから。聞いた話だと、この商売の売上げの70%は王様へ献上しないと行けないとか… 」
「なんだそれ! アイツ… 会った瞬間ぶっ飛ばしてやる」
と、メラメラと燃えるサク。賑やかな場所をしばらく歩いていると、いかにも身分の高い者が居ると分からさせられる程の、白い塔の先が見えた。ボク達3人はそこに居ると意見は一致し、向かおうとするのだったが、そこで思いもよらない展開が待っていた。
「はぁ〜… こんな美味しそうな匂い嗅いでると、お腹空いて来たよ…」
グーっとお腹がなるボク。つられてサクもお腹の音が。さらにジャガーも。
だが、田嶋くんとヴァイロンが頑張っている時に、悠長にご飯を食べている暇が無い。お腹を覗きながら歩いている3人が、前を見ると、
「ちょ…」
「あ、爺ちゃんの若返り…似てるなー…」
と、考えが足らないボクとサクでも分かった。そう、ジャガーの言葉を聞く前に。
「王様…」
指を差しジャガーが呟いた事で、確信したボクとサクは周りを気にせず一斉に飛びかかる。
「ファイヤーエクスポーション!!」
「ダイナマイトパーンチ!」
ボクとサクの渾身の一撃が王様に届く、はずだったが…
ボスッ!
何者かの蹴りで阻まれ、ボクとサクは後ろに吹っ飛んだが、何とか着地成功。周りの人々は驚きと恐怖で離れていく。
「はるみ、大丈夫か」
「うん、サクに肉弾戦の特訓付き合ってもらっててよかった」
そう、サクは肉弾戦を得意としている。遠距離攻撃でも、強パワーで何とかできるが、ボクと田嶋くんは能力が無いと歯が立たない状況だった。近距離で能力を放つ者や、サクのように肉弾戦で敵がやってくる事に備えて、痛いのは嫌だけど、特訓を積んだ。おかげで受け身は取れるように…
「ちょいちょいちょい、最初からラスボスに行けるチートモード発令中かい? それも面白いけど、終わったらすぐ飽きちゃうじゃん。その間の報酬取れないしね。だから、先に俺達を倒してからボス戦挑んでくれる?」
「全然意味わかんない。もっとシンプルに殺すって言っちゃえば良いじゃん」
王様の前に若いちょっとチャラそうな男と、サラサラな黒髪ボブの女が王様の前に立っている。この2人がボク達を吹き飛ばしたという訳だ。
「サーラさん、殺すなんて言っちゃダメ。生捕りでお願いしますよ」
「えー、おじさん、ロリコン? 中年の男が息子で、殺したく無いのは分かるけど、隣の頼りなさそうな女の何が良いの? 何か髪型被ってるからウザいし」
初めて王様の肉声を聞いた。ボクを捕えるために、両親を出しに使って、挙げ句の果てに感情もコントロールされる羽目になったことに、怒りが抑えられず、食いしばった歯が砕けそうだ。しかも、親子三代に渡って、顔が良いのも腹が立つ!
「え、俺に怒ってる?」
サクと王様を睨みつけたことによって、サクが戸惑っているが、すぐに王様へ目を向けた。
「よー、元親父。まぁ、お前なんか親としての役目も果たして無いから親父でも何でも無いか。目の前の邪魔な若者をぶっ倒して、すぐにお前の頭の中も綺麗にしてやる。王の立場で、民の生活を補償できないどころか、卑劣な手口で身の危険を脅かし、本当情けない人間だな」
サクは珍しく言葉数が多い。
(そりゃあそうだよね。実親の未練は無くとも、自分を一度捨てた事実は変わらない。能力の有無で必要とするかしないかを決められていたんだから)
「サク、悪かったなぁ。本当に申し訳ない。俺は見る目が無かったんだ。許してくれこんな父を…」
「猿芝居はもう良いから黙れお前は」
目でも殺せるぐらい、サクの表情は怒りで満ちていた。
「ぷっ。あははははっ! もういいかー、おっさん、実の息子に相当嫌われてんぞ。拒まれているのに欲しがる父親の顔が見てられねぇ」
「タルト、今笑うところじゃない…」
「いや、サーラこそ肩揺れてんじゃねぇか」
後ろにいる王様は何とも言えない顔をしている。
(目の前にいる男と女が邪魔で仕方がない。消えるメガネ、解除)
"マジでどうでも良すぎて笑える。あー、そろそろお昼の時間だ、腹減ったぁ"
"一瞬で殺して、ついでにこのおじさんもやっちゃおうかな"
(この2人、本当に邪魔だ)
「お兄さん達、マジでウザい。早くどいてほしいな… ハワイアンビーム…」
ボクは小声でハワイアンビームを唱え、
「え? 最後なんて言った?聞こえな… ぅゔ! 目が!」
2人はボクのハワイアンビームで目が開けられず、疼くまる。その瞬間に、殺気を纏ったボクとサクが飛びかかる。
「ファイヤーフィ…」
「ストロング…」
ボクとサクが能力を発動しようとしたその時…
「なーんてな」
「なーんちゃって」
蹲っていた2人はピョコッと顔を上げにんまりと笑う。隠し持っていたナタのようなものを出すタルトという男と、
「ビューティフルスパイダー」
と唱えるサーラという女が、サクとボクに攻撃を放つ。
サクはナタの持った男に狙われ、ギリギリ避けたが、蜘蛛の糸を操る女はボクの身体に巻きつけ身動き取れない状態にした。
「はるみ!」
「大丈夫。それより、サク!ジャンプ!」
サクはボクを心配してくれたが、言われるがままその場でジャンプをする。その瞬間にボクはこう唱えた。
「ドロパック!」
すると、ボクの指を差した先の地面が泥と変わり、みるみる地面に埋まっていく。
「ちょ、汚いってぇ〜。何するんだよー」
「本当ね、服が汚れちゃうじゃない」
地面に埋まっていくタルトとサーラに
「ちぢれ麺サンダー!」
と、追い打ちをかける。
ブルブルと感電し震える2人だが、少し横でもう1人震えている。
「何でサクも埋まってるの!?」
タフなサクは感電したのにも関わらず、電気風呂に入った後のようにスッキリした顔で、
「いや、そんな長くジャンプ出来ないだろ。てか、助けて…」
と、サクまで埋まっていた。ボクは泥に変わっていない地面を通り、手を伸ばして助けようとしたが、
シャキンッ!
何かが切れる音がして、音の鳴る方へ目を向けたボクは、衝撃的な映像が目に映った。
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