第四十五話 別れ再び
ヴァイロンが生まれたのは、サンダーシャインと言う町。しかし、今は宮廷の敷地になっている。宮廷の敷地拡大により、サンダーシャインの人々は全て宮廷に移り、王の配下になる事となった。まだ幼かったヴァイロンは、元居た町よりも良い暮らしが出来て、ラッキー程度に思っていたらしいが、歳を重ねるごとに扱いは酷くなっていった。
一つ上に姉も居るみたいだが、姉は王様に気に入られ、ヴァイロンの扱いと全く違った。それまでヴァイロンに優しかった姉だったが、己を守る為、次第に弟のヴァイロンには目もくれなくなった。
そんな時、王様から、地球にいるボクの捕獲を命令されたと言う。訳もわからない星に行くのは嫌だと反抗したが、捕獲できた際には自由にしてやる、ただし失敗すればタダでは置かないと言われ、しぶしぶ地球へ行く事に。ボクの情報は、『若い女』と『家』だけだった事で、ボクの家付近を荒らし、それに反応する女を探していたらしい。
捕獲し生かして持ち帰らないと行けないと言う命令は、ヴァイロンにとって難しい事だった。アザーでは、王に歯向かう者たちを黙らせないと行けない仕事ばかりで、出来るだけ負傷を与えず捕獲する事など、やった事が無かったからだ。そうこう考えているうちに、ボクが現れ、目を狙われ、あっという間に火だるまになってしまったと。火の耐性が無かったヴァイロンにはどうする事もできず、降参する事に。
アザーに帰ると、王様に酷く怒られ、姉にも呆れ顔を突きつけられた。だが、宮廷から追放される事はなく、馬車馬の様に働かされたみたいだ。
一度はボクを狙っていた敵だったが、本来ならまだ学校に通っている年頃なのに、過酷な状況で過ごしていたとは、少し情が湧いてしまうボク。
ただ、馬車馬の様に働かされている時、気づいた事があった。それは、ボクと対戦してから火の耐性がつき、回復力も数段上がったと言う。自分を捕獲しようとしている相手のケアができる能力に、とても感動し感謝の気持ちを伝えたくて、田嶋くんと一緒にボクを探してくれたんだそう。
現在に戻る。
「…って言ってるけど、この反抗期剥き出しの態度で、本当にボクへ感謝の気持ち伝えようと思ったの?」
「っるせー。感謝してんだからそれでいいだろ。それより、俺に感謝しろよな」
と、ポケットに手を入れ、ボクから目を逸らしているヴァイロンだが、ズボンのベルト通しに伸び縮みするキーチェーンがあり、そこから光の反射で光る鍵を見つけた。詳しく聞くと、アランの指示でここへ来た事があり、牢屋の鍵の場所も知っていたらしい。
「居たぞ!」
数人の足音と共に、銃を持ったアランの手下達がボク達を見つけた。
「田嶋くん?こっそりきたんじゃないの!?」
ボクは慌てて田嶋くんの背中に隠れる。
「それが… ここに来るまでに足止めしてくる人達が結構居て…」
田嶋くんの言葉の後に、ジャガーと、ヴァイロンを見て、ボクは悟る。ジャガーと再開した話はまだ聞けていないが、この二人がいるなら、滅茶苦茶にしていてもおかしくない。
「派手にやって来たんだな〜。まぁ、この方が面白い。何も出来ず捕まった苛立ちをここにぶつける事が出来て好都合だ」
と、サクがボクの後ろから前に出て行く。が、ジャガーに首根っこを掴まれ後ろに戻されている。
「何すんだジャガー!」
怒っているサクに、田嶋くんは、
「もう少し話をしたい所ですが、そんな状況でもありません。ここは、僕とヴァイロンさんで片付けるので、ジャガーさんと共に、王様の元へ行ってください!」
と、言った。
「この人数で二人で相手するのは無茶だよ! ボク達、力有り余ってるし、ここはみんなで…。せっかく再開できたのに」
ボクは地球からアザーに向かう際に、田嶋くんと別れた時の事を思い出す。
「すみません、蒼井さん。次こそ僕も共に戦うので、先に行っててください」
引くつもりは無かったが、田嶋くんの真剣な生差しに、ボクは頷く事しかできない。
「待ってる。その頃にはもう王様ぶっ倒してるかもしれないけどね!」
「おい、それ俺のセリフ。俺が言いたかった」
セリフを取られ少し拗ねるサクに、まぁまぁと宥めながらボクとサク、そしてジャガーは先に進んだ。
その後ろ姿を見て、微笑ましく笑う田嶋くん。
「蒼井さんにちゃんと自分の口から話さなくて良かったんですか?」
と、敵から目を離さないようにしてヴァイロンに問う。ヴァイロンは、
「ここをさっさと終わらして、俺が王様まで蹴りをつけてやる。ヒーローは後から登場する方がカッコいいんだよ」
「あぁ、そのキャラ、サクさんと被るな…」
「ぁん!? ヒーローは俺だけだ。強パワーお化けと一緒にするな」
「はいはい」
田嶋くんはヴァイロンを諭すように答え、二人はどんどん増えて行くアランの手下達に立ち向かう。
はい、ここから少しだけ田嶋がお送りします。ピー…の件、詳細はこちらです。
「お前、晴美の事好きなのか?」
「ヴァイロンさんからの晴美って腹が立つなぁ。好きだよ」
押し合っていた二人はピタッと止まり、少し距離を置いた。そしてヴァイロンさん
は顔がどんどん赤くなっていく。
「お、お前…。そ、そそそそんな恥ずかしい事、よく俺なんかに言えるな」
「何故、ヴァイロンさんが赤くなっているのでしょうか?」
「う、うるせぇ! 赤くなんかなってねぇよ」
「あ、髪の毛が赤いから反射して…」
「なわけねぇだろ!」
「じゃあ、何故赤く?」
「だから赤くなってねぇって!」
「はぁ…、何が言いたいんですか? もう僕、どうでも良くなりました。先を急ぐので、それでは」
話している間に、ヴァイロンさんから敵意は無いと判断し、ヴァイロンの横を通り過ぎて、蒼井さんとサクを探しに行こうとするが…
「待て」
ヴァイロンさんが僕に背を向けながら呼び止め、面倒くさそうに振り向く僕。
「何でしょう。もう顔が赤くなった話はもう良いですよ」
「晴美を探しにいくなら、俺に思い当たる場所がある。条件付きで教えても良いが」
僕の顔色が変わる。
「条件とは何だ」
「この俺と勝負しろ」
さっきまでは敵意は無いと思ったが、やはり来たかと戦闘体勢に入る僕。
「分かった。いつでも来い」
だが、ヴァイロンは何もして来ない。
「何だ?来ないのか? 来ないなら、僕から行かせてもらうよ」
と、スティックを振り上げようとした瞬間、ヴァイロンの口が開く。
「そういう事じゃない。晴美を嫁にできるか勝負だって言ってんだよ」
「はぁ!? 貴方何歳ですか?」
「14だ。歳なんて関係ないだろ!」
「そうですね… 分かりました。受けて立ちましょう。ですが、地球の中の日本では18歳になるまで妻にすることは出来ません。僕達は今から、王様を倒し、その裏で手を引く黒幕を倒すという目的があります。それを達成し、どちらが蒼井さんからハグをしてもらえるか対決でも宜しいですか?」
「ハグ!? け、けけ結婚もしてないのにか?」
対決のハードルを下げたと言うのに、動揺しているヴァイロンさん。14歳だからまだ仕方ないか…。まぁ、僕もハグすら女性とした事が無いが。
「文化にもよりますが、結婚していなくてもハグぐらいだったら、相手の了承を得れば可能です。なので、戦いが終わり、勝利のハグを貰えた方が勝ちと言うことで」
「い、良いだろう。ハグかぁ…」
「ヴァイロンさん、鼻血が…」
慌てて鼻を触り確認するヴァイロンさん。
「こ、これは、暑くてだな。そう、暑くて出て来たんだ」
「そう言うことにしときましょう」
と、話は固まり、共に行動することに。
この話を蒼井さんにしてしまうと、対決する前に、拒絶されると困るので、ピー…で誤魔化させてもらいました。
では、ここから波乱の戦いが始まります。全てを片付け、無事に蒼井さんのご両親と共に地球に帰る事ができるのか。最後までお見逃しなく。
以上、田嶋でした。
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