第三十九話 田嶋くん?
アザーのゲートの中に入った田嶋くんは少し異変を感じる。
「田嶋、どうしたんじゃ?」
「あ、あの… 大丈夫です…」
あの意気込みはどこに行ったのやらと言うぐらい元気がない。大丈夫なのか、田嶋くん…
その頃ボクとサクは…
「ねぇ… ずっと歩いてるけど、これどこ向かってるの?」
「王様の所に決まってんだろ」
サクの顔はすごく真剣だが、
「場所わかるの?」
「んー? 分かんねぇけど、とりあえず真っ直ぐ進んでたら着くだろ。俺の見てるアニメでボスの居場所までの行き道を詳しく流してるの無いし、気付いた頃にはボスの縄張り突入みたいな感じになるんじゃねぇの?」
全然分かっていなかった。あぁ…こんな時に、田嶋くんが居たらな…
「あ!田嶋くん!」
頼りになる田嶋くんが目の前に!
「田嶋くん遅かったね。乾くん結構しぶとかったんだ。ごめんね、ボク達の為に…」
「おう! いや、ちゃちゃっと終わらせたんだけど、一旦茶でも飲もうかと思ってさ。遅くなって悪かったな」
(んんん!? 田嶋くんが俺系男子になってるよ! 乾くんとの対戦、それほど過酷だったのか?)
「そ、そうなんだ。特訓の成果だね! で、今絶賛、王様の所へ向かってる途中なんだけど、道がわからなくて… どうやって探せば良いと思う?」
人は変化に気づいてもらえるのは嬉しい。ただ、自分の思う様になっていない時に気づかれると最悪な気持ちになる。だから、今はそっとしておいてあげよう。
「なるほど… それなら、ボク分かるよ」
「え?知ってるの!?」
バツが悪そうな顔をする田嶋くんだが、すぐに切り替え、王様までの道を先頭に立ち、案内してくれた。田嶋くんを先頭に歩き進めている間、サクの服を少し引っ張りヒソヒソ話し始める。
「ねぇ、田嶋くんのキャラ変何かおかしくない?」
「あぁ、おかしいが、思春期の男子はコロコロ気持ちが変わるもんだ。あんまり気にするな」
「そんな問題なのかなぁ…」
どんどん先に進んでいくが、通って来た道はスノーダイアリーの街と同じ様に、厳しい生活をさせられている様だ。助けてあげたいが、今やってもキリがなくなってしまう、胸が痛いが先に進んで、王様を止めなければ。俯きながらボクは前に進む。
「着いたぜ。ここが王様の居る所らしい」
見上げると、大きな建物ではあるが、王様が住む様な場所ではない。
「ほんとにここに王様がいるの?」
「あぁ、ちゃっちゃと済ませよう」
田嶋くんが急ぐ様に扉を開け、ボクとサクを中に入れた、その瞬間…
「うわぁ!!」
扉を開けた時は真っ暗で何も見えなかったが、目を開けると、ボクとサクは網で拘束されてしまった。
「わ、悪い! 俺、ここに王様が居ると思ってたのに」
田嶋くんが口調に似合わずワタワタしている。これでボクは確信した。
「もう良いよ演技は。貴方、誰なの?」
田嶋くんはだんだんと姿を変え、最終的には髭の生えたおっさんになった。
「えぇ!! 思春期の拗らせじゃなかったのかよ!」
と、サクは驚いている。薄々気づいていたボクには本当に気づいていなかったのか?と言いたい所だが、先にこの髭のおっさんの正体を聞かないと。
「いつから気づいてた?」
「わりと最初からおかしいと思っていたよ」
「最初から? 俺は上手く出来てたと思ってたんやけどなぁ」
「いや、田嶋くん俺系男子じゃないし、アザーにも行った事も関係もなかったんだから、普通におかしいと思うでしょ」
「あ、そっちかー! 思春期の男子なんか、みんな一人称、俺やと思ってたわ」
「何、その偏見。今どき、俺でもボクでも私でもおかしくないよ」
「ふーん、そうなんや。まぁ、ここまで連れて来れたし、もうどうでもいいけど」
「貴方達は誰?」
「俺は、オコノミヤキ。対象の人物の頭ん中にある人物を再現できる能力、ポーピーコピーを持ってる。こいつらは俺と同じ、金が欲しくて雇われてるだけで、何の組織でもない」
(オコノミヤキ!? 何処かで同じ様なネーミングを聞いた事があった気が…)
「雇われてるって、王様に?」
「うーん… ちょっと違うけど、まぁそんなとこやな」
「ボク達を捕まえてどうするの?」
「知らん。何かええ様に使われるとは聞いたけどなぁ」
話を聞いている限り、王様の部下では無さそうだ。
「おーい、タコヤキ〜、何でこいつら捕まえられへんかったん?」
(そう!タコヤキだ! この方言とタコヤキと言えば、コンビニのウォークインに潜んでいたイケオジ!)
オコノミヤキの後ろを覗くと…
「知らんわ。無理やったんやからしゃーないやろ。でも、俺のおかげでこいつらがアザーに来た事もすぐに知れたんやから、感謝してほしいぐらいやわ」
「あ! やっぱりタコヤキだ! あんた、ボク達に恨み持ってるからって、卑怯な手使って…」
「卑怯? 俺とニ対一でやり合ったお前らの方が卑怯やろ」
(くっ… これは良い返せない)
ここで黙っていたサクが口を開く。
「お前ら、こんな網如きで俺達を連れて行けると思っているのか?」
「なに? 俺はお前らより強いでって言いたいん?」
オコノミヤキが少しイラッとした表情で突っかかる。
「まぁ、見ている感じだとね」
「ほな、出れるもんなら出てみぃや。これはお前らの能力対策に作った網やから、出れるわけないけどな」
そう言われると、サクはダイナマイトパンチで穴を開けようとした。が、対策されているだけあって、ミシミシ音を立てるだけで穴は開けられなかった。
「はるみ」
「うん、分かってる」
最後まで言われなくても分かった。ボクはウインクをして、消えるメガネを解除。オコノミヤキや、タコヤキ、その周りにいる人達がボク達の事を見てくれているおかげで、スイスイと思考を読む事ができた。
"無理無理、馬鹿力やって聞いたからその縄にはゴムを入れて色々細工しておいたんや"
とオコノミヤキが。
"フッ。このワンパターンなパンチ。一回見てたら何も怖ないわ。この嬢ちゃんは、ほぼ戦力にならんし、ちゃっちゃと連れて行って、金もらおうか"
と、タコヤキが。
そして、その後ろに潜んでいる男達の思考を読む。
"おもろ。これ、能力対策はされてるけど、能力使わんかったら簡単に破れんのに"
「サク、あの、シールド出せる能力使って」
「おう。何か分かったんだな。よし、任せとけっ。 おでこぴっかーん!!」
倉庫にいる事によって、中は少し暑い。おかげで、サクの額には良い感じの脂が乗り、倉庫内が一気に明るくなった。
「眩しっ。ってか、おでこぴっかーんって、何やねんそれ」
オコノミヤキ達は薄目を開けながら、馬鹿にしているが、これで良い。
サクのおでこぴっかーんにより、ボク達はシールドを纏う事ができた。
「サク! 能力を使わずに目一杯引きちぎって!」
「よっしゃあ! 任せとけ!」
びっ、ビリビリビリー!!
「おいおいおい、誰か教えたんかアイツらに。何で能力使わんかったら破れるおもてん! お前らぁ! こいつらをもっかい捕えろ!」
ボクとサクは網から出れたものの、一斉攻撃される。だが、サクのおでこぴっかーんのおかげで無傷だ。やられたらやり返さないとね。
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