第三十八話 決意
パンッ!
手を叩く音と共に、乾くんの放った無重力、田嶋くんの放った、炎のボールとイナズマは消失した。
「ほっほっほっ。田嶋、能力の無い人間にこんな物を放ってはいかんぞ。そして、君。誰に唆されたか知らんが、アザーに行って何ができると言うんじゃ」
「ロンさん!!」
「田嶋ー、爺さんでいいぞ〜」
顔と身体が若返った、サクのお爺さんが立っていたのだ。確かにこのルックスでお爺さんとは言いづらいね。ボクは、お爺さんで貫いているけど。
ちなみに、乾くんと田嶋くんが戦闘中、他のクラスメイトは教室の外に出て避難していたよ。サクのお爺さんとは知らずに、女子生徒達は目がハートになり、周りに集って来ている。お爺さんは満更でも無い顔をして、嬉しそうだ。
ただ、お爺さんは地球で待機するという話だったはずなんだけど…
「誰だお前!」
乾くんは怒っているが、少しホッとしてるようだ。あのまま、まともに当たっていたら、どうなっていたか…。ボクやサクのように、能力者は、どんな強力な攻撃を受けても、気絶までだ。だが、乾くんは違う。生身に攻撃を受けると、ダイレクトに受けてしまう。田嶋くんは、この3ヶ月の特訓で、凄く鍛えたみたいだ。スティックが無いと戦うことはできないが、スティックから、自らを守るシールドを纏う事が出来る様になった。攻撃力の強さによっては、補いきれない場合もあるが、ゴーレムに加えて、ボクとサクとも特訓していたんだ。少々の事では破壊出来ない。きっと、さっきの戦いでシールドを使わなかったのは、乾くんと公平に戦うことを選んだ結果なのだろう。
「ただの爺さんじゃよ」
「爺さん? ふざけてるのか? というか、何をしに来たんだ!」
「お前さんはアザーに行っても、死ぬだけだから行くなと言いに来たんじゃ」
「はぁ!? ある人に能力を使える様にしてもらったんだ。ぼ、僕だってお前らと一緒だよ!」
「そうかのう…」
すると、サクのお爺さんは、乾くんの持っているステッキに波動の様な物を送り、木っ端微塵に壊してしまった。
「何してくれてるんだ!!」
「こんなのまやかしじゃよ。何もしなくても後1時間もすれば消滅していた。誰じゃこんなガラクタを渡した奴は」
「名前は聞いていない。男だったがな」
「ほう… 男か。まぁ、そいつの事はアテにするんじゃないぞ。初対面で条件の良い話を持ちかけてくる奴は基本的に裏がある」
「お前も初対面で説教垂れて来て、鬱陶しいけど」
「そろそろ反発するの、やめんかのう… ワシも歳なんで、無理すると後に響く」
お爺さんの波動で、腕に関節技を決められる乾くん。
「はいはいはいっ、ギブギブギブ!! 歳関係ないぐらいの手加減の無さじゃねぇか!」
息を荒らくして、乾くんは怒っていたが、ステッキも壊され、お爺さんも加わり、勝機が無くなった事を悟り、今日は早退すると言って家に帰って行った。
「ロンさん、何故ここに?」
「いや、嫌な予感がしてのう。来て良かった。このままアザーまでワシも行く事にする」
「大丈夫なんですか? まだまだ現役ぐらいの能力をお持ちですけど、能力の消費は早くなっているでしょうし…」
「ワシの心配をするなら、己の心配をせえ。今から行く場所は、能力者にとっては絶好の舞台じゃが、無能力者からすれば、地獄とも言える場所じゃ。辞めるなら今じゃぞ?」
田嶋くんは手の腹に爪が刺さるぐらいの強さで拳を握り、
「行きます! 行きたいです! 初めて自分からやりたいと思った事なんです。これをやり切らなければ、絶対に後で後悔します。だから、何が待っていたとしても、僕は辞めません!」
と、決意をお爺さんにぶつけた。
「そうか、じゃあ行くぞ」
と言ったお爺さんと、田嶋くんは、生徒達に手を振りアザーのゲートに入って行った。
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