第三十四話 宿確保
「誰だ! そこに居るのは!」
よく見ると銃を持っている。咄嗟に、ボクとサクは両手を上げ、怪しい物では無いと伝えたが、極寒の気候の中、ボク達の服装を見て不審に思われている。特に、ブレザーをサクに渡したボクは、上半袖だからね。
「あ、怪しい者では無いです!」
「怪しい者が、怪しい者です!とは言わないだろ! そんな事だけで、信用はできない!」
と、ゆっくりと近づいてくる男から、銃の引き金を触る音が聞こえた。
「本当に怪しく無くて、えっとえとえと… あ、ロン! ロンさんの知り合いなんで…」
ピュンー!
ボクの指先からハワイアンビームが出てしまった。ギリギリ男の顔の横を通り、当たらなかったのは幸いだが、それにより、余計に不信感を与えてしまった。
「ちょ、はるみ! 何してんだよ!」
「いや、これは、尿漏れ的な… 我慢しようとしたけど、出てしまったと言いますか」
「こんな時に尿漏れとか言ってる場合か!」
珍しくサクが怒っている。怒られても仕方ない、何でこんな時にボクもハワイアンビームを出してしまったんだろう。銃を向けられて、いつでも対抗できる様、用意していただけなのに…
「さっき、ロンさんって言いましたね。貴方達も、そうですか。ロンさんと仲が良いと言って、潜入し、何か企んでいるんじゃないですか?」
「いやいや! とんでもございません。この女のやった事、申し訳ございませんでした。ですが、ロンという人物と深い関係である事は事実です。それは、俺の爺ちゃんだから」
サクはボクの頭を持ちながら、一緒に頭を下げ、誠実に対応した。これを聞いた男は、すぐさま銃を下げ、跪く。
「良かった… サクお坊ちゃん… 生きていたんですね。生まれて間も無く、この星から出て行かれたと聞いていたので…。 ロン様もご健在と言う事を聞けて、安心しました。
この度は大変!! 申し訳ございませんでした。私のご無礼をどうかお許しください。ここに住み始めてからは、外から来る人物には、警戒しておりまして、あの様な形をとらせていただきました」
「いや、頭上げてください。ボクは捨てられたんです、だから、様なんて付けずに呼んでくださいよ」
男は少し下を向き、どんな顔をすれば良いのか分からないようだ。
「では、せめてサクさんと呼ばせて下さい」
と、少しでも敬意を払いたいと言う意思がこちらにも伝わった。
誤解も解けたところで、街に案内してもらった。
「ところで、本日はどの様な御用で来られたのですか?」
「あぁ、王様ぶっ潰して、この世界、いや宇宙丸ごと救いに来た」
(サクは、サラッと言うけど、信じてもらえるのかな…)
「左様でございますか… って、え!? 救うって、ここを(アザー)ですか!?」
「そうだよ。こいつ。はるみの父ちゃんと母ちゃんが人質に取られてるんだ。それがきっかけで、王様蹴散らして、救うことになってよ」
ポカンとしていた男だったが、すぐさま真剣な顔になった。
「実の息子さんがいらっしゃる前でお伝えするのは心苦しいですが、私達も、今の王には不満があります。おかげで、家族に良い暮らしをさせてあげる事ができずに、毎日生きるのがやっとの状態でございます」
「聞いた。飯も取り上げられんだろ? 酷いよなーほんと。まぁ、俺達が来たから大丈夫だ、すぐに元の生活を取り戻してやる」
すぐにとサクは言っているが、そんなすぐに実現するのは難しいんじゃ無いか? 街に入ってからの光景を目にすると、付き添ってくれている男は辛うじて、暖を取れる格好をしているが、今にも潰れそうな家の中から見える人達は、みんな痩せていて、かなりの薄着だ。布で身体を巻いているが、寒さを凌ぐのには、まだボクの制服の方がマシなぐらいだ。こんな状況の中で、約束出来るか分からない事を言って、出来なかった時にまた悲しい思いをさせないだろうか…。
しばらく街を歩いていると、この街の長が住む家に着いた。
「ガーデン!! ロン様のお孫さんが来たよ!」
付き添ってくれた男が家のドアを叩き、呼び付ける。すると家の中から凄い大きな足音が聞こえて来て、豪快にドアを開けた。目の前に立っていた男はドアに直撃だ。
「サクお坊ちゃん!! 良くぞご無事で… 貴方のお母様が、サクお坊ちゃんを守るために必死になっていたお姿は見ておりました。こちらは何も出来ず申し訳ない…。そして、ロン様は… さっき声が聞こえたはずだが、ゴウルはどこだ?」
「ロン…様は地球と言う星に居るそうだ…」
ガーデンと呼ばれる長は、扉の表を覗き、頭に手を当て、反対の手で謝り、そのままボクたちも家に入れてもらえる事になった。暖をとる器具が無いが、雪もちらつくこの気候では、一つの屋根の下に入らせてもらえるだけで、ジーンと来る温かさがあった。家の中には、奥さんも中に居て、ガーデンも奥さんもお爺さんよりは少し若そうだが、年齢は重ねている様に見える。そこで、ボク達が来た理由を説明し、快くここで、しばらく泊めて下さるという事になった。
付き添ってくれていたガウルという者はもう少し若く、サクの20歳上らしい。ガーデンと歳は離れているものの、当時は若くしてお爺さんの部下に着いていた事もあり、ガーデンには凄くお世話になったそうだ。
ガーデンは、仕切る人間が必要だった為、形上、長という立場になっているが、上下関係は作っていないらしい。話している姿を見ても、大きな器を持ち、優しい心を持っているのが伝わる。サクの人当たりの良さで、さらに打ち解け合い、その話の流れで、ここに着くまで話していた内容に行き着いたのだが…
「今、何があったら嬉しい? 見る限り、冷暖房器具、回収されても困らない量の食料、後はこの寒さに合った、服と布団だな」
「そうですね。それらがあったら、不自由が無くなるどころか、豊かになるでしょうね。
ここにも(アザー)そう言った物は全て手に入るはずなのですが、凄く高価で、一つ蓄えたとしても、この街全体に配る資金がありません。なので、なかなか前に進めずにいるんです」
ガーデン夫婦、ゴウルは下を俯いた。
すると、サクはボクの肩にポンっと手を置き、
「それ全部、はるみに用意してもらおう!」
「え、えーーー! いやいや、出せるし、衣類や布団、食料はボクの出せるだけあげようと思っていたけど、冷暖房器具に関しては、ここ、電気は自分達で蓄電して使ってるんでしょ? ボクの知ってる器具では、電気の消耗が早すぎて追っつかないかもしれないよ?」
「うんっ! なんとかしろ」
サクに満面の笑みで、無理難題な事を任せられてしまったボクだった。電気を作る発電所は見たことあるけど、テレビの映像だけでしか見たことがない。実際の大きさにするには、不可能だろう。想像して編み出しても良いが、お爺さんほど、ボクは物作りには特化していない。下手なものを編み出し、事故につながっては困るしね…。食料や布団、衣類などを、ポンポン出しながら、どうすれば電気を発電し蓄電まで出来るかを考えるボクを見て、ガーデン達は顎が外れるほど驚いていた。
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