第三十一話 ビターレッッッド
「田嶋くん!?!?」
赤鬼だと思っていた相手は、田嶋くんだった。確かにコンクリートを歩く音でザクザクはおかしい。よく見ると、木の枝や落ち葉がたくさん引っ付いている。ボクとサクによって炎のムチで叩かれ、強烈パンチを受け、さらにボロボロの身体になってしまった。
「やっと見つけた… もう戻れないかと」
「田嶋くんごめん…」
「悪い、田嶋ぁ〜」
ボクはアローエ・キズニハヤッパリコレで、田嶋くんの怪我を治し、サクは刺さった枝や、ボロボロになった服を脱がせて、拳の中に包み込んだ後、マジックの様に繋ぎ合わせた。
飛んでいった後は、厳しい道のりだったらしい。サバンナの様な所に着いて、猛獣達に追いかけられ、逃げ切れたと思えば、盗賊の様なもの達から終われ、一か八か、スティックで空を飛べるかと試したら、上手く飛行する事ができ、ここまで戻ってこれたという。ありがとう田嶋くん。身を貞にしてボク達を守ろうとしてくれて。
復活した田嶋くんは今の現状を理解し、3人は、重大な失敗を犯している事に気づく。それは、時間制限を設けていないと言う事。赤鬼がボクとサクにタッチするまで終わらないと言う事だ。
「詰んだ…」
3人の声が揃う。静かな街に風の音だけが響き、だんだんと全身が恐怖に包まれていく。
「まぁ、またボコボコにしてやったら済む話だろ! 鬼さんこちら、べ〜」
サクは路地から表に出て、鬼を挑発する。
ズゴゴゴゴゴ…
(あー、嫌な予感…)
すると、サクの向いている方向から大きな土埃が見えてくる。
「み、つけましたよ〜」
赤鬼の太い声が響き渡る。サクは逃げるのかと思えば、自ら赤鬼の方に走って行った。せっかく逃げれてたのに、何故、自ら行くのか、ボクにはさっぱり分からない。
赤鬼と対面し、二人は両手で握り合い押し合っている。力は拮抗し、前にも後ろにも動かない状態だ。って、握り締めあってるけどこれって…
「ターーッチ」
図太い声で、ニヤッと笑う赤鬼。
「うわ、しまった! コイツでかいから一回手合わせしたいと思っただけなんだけどなぁ」
あーぁ。結局何も考えてなかった。これボクがタッチされるとゲームオーバーだよね。無理無理。逃げれないよ、こんな状況で。赤鬼、意外に足速いし。もう、諦め状態のボクに、田嶋くんはキラキラした顔で、グッとガッツポーズ。
(君にはできるみたいな顔してるけど、さっき瞬殺で吹っ飛ばされてたよ、貴方)
ただ、じっとしていても何も変わらない。サクはタッチはされたものの、ボクがまだ捕まっていない間は、フリーだ。もう逃げる必要も無い。実はさっき、それを分かって自ら飛び込んで行ったのかな? いやいや、あのサクだよ。何も考えてなくて、結果オーライだった方が可能性が高い。
「ダイナマーイトゥッ」
赤鬼に、サクの必殺技、ダイナマイトパンチが入った。流石の赤鬼も後ろにふらつく。
が、そこで油断したサクに、硬そうな頭でサクの額に頭突きで対抗する。頭を強く撃ち、赤鬼と同様フラフラと身体が後退する。
「赤鬼さん、やるねぇ」
お互い渾身の一撃を喰らい、さっきまでの余裕は無くなっているはずだが、さすが漢! 蚊でも止まったか? ぐらいのテンションで、お互いを見つめ合う。
「赤鬼って言いますけど、僕ちゃんと名前があるんです。『ビターレッッッドデーモン』と言う名が」
「赤鬼じゃねぇか」
鼻で笑うサクに、赤鬼はだんだん苛立ってくる。
「違います、ぜーんぜん!違います」
「レッドデーモンだろ? それ略せば、赤鬼だぜ?」
「違いますぅ! ビターレッッッドデーモンです!」
ッの間のなんとも言えない顔が、ボクと田嶋くんには、じわじわくる。
「ビタあ! が付いております。お忘れなく!」
すると、赤鬼は金棒を振り上げ、サクの頭上に振り落とした!
(サク!!)
ボクは慌てて路地から飛び出そうとするが、田嶋くんがボクの腕を引っ張る。
「蒼井さんよく見て!!」
「トルネードキーーック!!」
頭上にヒットしたと思ったが、サクは上手く低い体勢を取り、避けていたのだ。赤鬼の図体はデカい。低い姿勢からの攻撃は慣れていないのか、避ける暇もなく、トルネードキックが命中! 赤鬼は吹き飛ばされ建物へ突っ込んでいった。
ボクと田嶋くんは、サクの所に走って駆け寄る。
「凄いじゃんサク! 新技も使えてよかったね!」
「お見事です、サクさん! 時間制限は設けていませんでしたが、再び赤鬼を戦闘不能にすればこちらの勝利ですからね」
サクは堪能しきり、大満足なようだ。だが…
ゴゴゴゴゴ……
「まだ、終わっでまぜんよ〜」
建物に埋まったはずの赤鬼が、その建物を吸収し、鉄人間ならぬ、鉄赤鬼が完成した。ボクと田嶋くんで対戦した時は、炎を纏った赤鬼になった。という事は、赤鬼の能力は、吸収。触れた物を吸収して、自分のものに出来るんだ。ボクの能力と少し似ているが、攻撃は単純に見える。元々持ち備えている物では無いからかも知れない。さっきは炎を吐いていたが、鉄赤鬼は何をするのか。
ガシャン。ガシャん。ガシャガシャガシャ…
吸収する前と同様、体の重さの割に、徐々に加速していき、身軽に走ってくる。
ボク達3人は、スローモーションのように
「に、げろおおおぉー」
と、急いで逃げるが、すぐに追いつかれてしまい、後ろにいたサクは足と足の間でサクッと抜かされ、足の遅いボクに鉄赤鬼は手を伸ばす。田嶋くんはスティックから、炎や水、雷などを出すが、どれも跳ね返され、ボクもテレポーテーションを使おうとするが、さっきまで全力で走っていたせいで体力が残っておらず、半径1メートル以内でしか、瞬間移動ができない。悪足掻きもここまでか…
「ノンパワー•インター」
と、張り上げず、静かな声で聞こえてきた。
目の前を見ると、アランが鉄赤鬼の拳を片掌で受け止め、力が吸い取られるように鉄赤鬼は小さくなり、元の赤鬼に戻った。
「ビターレッッッドデーモン、貴方は何故ここに? 王に託されたわけでもなく、勝手にここに来ても良いのでしょうか?」
「あ、あ、アラン様! こちらにいらっしゃったのなら、何故この二人を連れて行かないのですか?」
この図体をしている赤鬼でもアランには頭も上がらないのか。そんな人が居ながら何故、王様の悪事を止めることができないのか。スパイといい、引っかかる…。
「まぁまぁ、焦らずに。じっくり痛ぶってから連れて行くつもりなので。この事は内緒でお願いしますよ」
アランは最後、赤鬼の耳元で囁くと背筋が凍るような表情で、アザーのゲートを開き、帰って行った。
「あの、痛ぶってからってどういう事でしょうか。まさか、本当の意味でスパイなんじゃ…」
やっぱり、田嶋くんは突っ込むよねそこ。サクはさっきからずっと笑って、いつまで赤鬼との対戦の面白さを引きづっているんだ。
「あぁ。そう言っておかないと、向こうにスパイだとバレたら困りますからね。痛ぶるなんて、この御三方の前では、口が裂けても言えませんからね。あれから1ヶ月が過ぎましたが、皆さん成長しましたね。私の力など、必要なさそうだったので、見物させてもらいました」
「やっぱり何か信用できませんね。アランさん、まだ何か隠しているように思います。本当の事言えないですか?」
「いやぁ…」
「田嶋。人に信用出来ないと言うのなら、確実な証拠が無いとダメだ。まだ分からないうちから相手にそれを伝えてしまっては、相手からも信用を失うことになるぞ」
さっきまで心ここに在らずだったサクが、まともな事を言い出したよ。確かにそうだ、引っ掛かりがあるが、それが信用できない決定的な証拠にはならない。まだ決めつける段階では無いと言う事だ。
「サクさん、ありがとうございます。私が悪いので、どう思われても仕方ありません。信用していただける様、精進いたします」
その後、アランはまたアザーへ戻り、ボクと田嶋くんはもう一つ忘れていた重大な事がある。
「やばい! コンビニ、無人営業にしちゃってるよ!」
鬼ごっこする時点で、何故気づかなかったのか。店に戻ると、店長がレジに立っていた。
「あの… すみませんでした!」
「すみませんでした!」
ボクと田嶋くんが深く頭を下げて、店長に謝ると、
「いいのいいの、もう今日は遅いから上がって〜」
店長を見ると、足がガクガク震えている。何でそんなに怯えているのか不思議だったが、ボクと田嶋くんは、店長の気遣いに甘えて、サクの家に帰ることにした。
帰り道。
「田嶋くん、今日は自分の家に帰らなくてもいいの? やっとお父さんと仲直りできたんだし、帰ってあげてもいいんじゃない?」
「僕も少しはそう思ったんだけど、帰ってしまうと甘えてしまいそうで。啖呵切って出てきたんだ、やり切ってから帰ろうと思う」
「そっか、じゃあ胸張って帰れる様に一緒に頑張るぞー! おー!」
「おー!」
和やかに話をしていると、あっという間にサクの家に着き、各々お休みタイムに入った。
それからボクたちは特訓に励む。カクテルの一件で、学校中に広まるかと思ったが、律儀なクラスメイト達が黙っていてくれていたおかげで、いつもと変わらない生活を送る事ができた。クラスメイトも、ボクの能力を知って怖がるどころか、色々頼られる様になった。パシリにされてないか?と思うが、満更でも無い顔をしてしまうのは、許してほしい。
そして、特訓を開始して3ヶ月が経ち、いよいよアザーに乗り込む日がやってきた。だが、そこでまたもや問題発生…。
読んで頂きありがとうございます。
次回で特訓編は終わりです。
次回の投稿は今日の18時半に予定しております。お時間があれば見て頂きたく思います。
いよいよアザーへ。はるみの両親を取り戻す事が出来るのか。世界、いや宇宙ごと守ることが出来るのか、戦士達を応援して頂けると嬉しいです。
さらに、おこがましいですが、私にも応援して頂けると幸いです。




