第三十話 鬼ごっこ
「ちょっとやってみたかった事があるんだよ」
ボクと田嶋くん、田嶋くんのお父さんは首を傾げ、何の事か見当がついていない。
「鬼ごっこ、しようぜ。もし、俺とはるみが捕まればこのままアザーに行ってやる」
「ちょ、何言ってんの!? やっとこの赤鬼を戦闘不能に出来たのに、ボクと田嶋くんの努力は…」
サクは、腕を組み目を瞑りながら、人差し指を立てて、チッチッチと左右に振る。
「それはよく頑張った。ありがとうな、俺が居ない間に任せてしまって。ただな、この経験は無駄か? 実践より良い特訓は無いぞ? だからな、鬼ごっこ、しようぜっ」
確かに無駄では無いかも知れないけど、何で鬼ごっこ。
ボクと田嶋くんは納得のいかない顔を向ける。
「お前ら、鬼ごっこやった事あるか?」
「ありますけど、もう何年前になるか…」
「ボク友達居なかったからそういえば無い…」
「今ならリアル鬼と鬼ごっこできるんだぜ? こんなファンタジーな事、次いつ出来るか分かんないよな?」
サクもだが、ボクと田嶋くんは、ここ最近ファンタジーな経験の日々を重ねることによって、楽しそうだと思ってしまった…。
赤鬼に説明すると、快く承諾してくれた。田嶋くんのお父さんは心配を残しながら、危険がまた及ぶ事にならないように、家に帰って頂き、よーいどん!の合図で赤鬼は1分数える。その間にボク達は逃げる事になった。田嶋くんは捕獲対象では無いが、サポートに回る為、参戦する事に。
「よーい…どん!」
サク、ボク、田嶋くんが、一斉に走り出す。走り出しながらボクは気づいた。最近体力はついて来たけど、足が遅い事は変わっていないという事を。
「待って〜! ボクこれすぐ捕まっちゃうよ〜」
赤鬼もそろそろ走り出そうかと足を一歩前に出した。
「いやいやいや、全然直線距離に赤鬼いるって。顔も身体も全部鮮明に見える」
ボクが後ろを振り返りながら走っていると、サクがボクの首元の襟を掴み、引っ張ってくれた。
「ありがとうだけど… ボク凧上げになってる!!」
宙に浮いてなみなみと揺れるボク。ボクはすでに、鬼ごっこを楽しめていない。やるんじゃ無かったこんな事…。恐怖のオーラが足先に伝わると、
「…59、60! では、参りましょうか。二人まとめて連れ帰り、カクテル様に褒美を貰わないと行けませんからね」
赤鬼のカウントダウンが終わり、鬼ごっこのスタート!
サクのおかげで、さっきよりは赤鬼から離れる事ができたが、重そうな身体には似合わない速さで、土埃をあげながら追いかけてくる。
「はるみ、ストーン・アロー使え! アイツを足止めしろ!」
ボクは言われる通り、ストーン・アローを発動し、地面から分厚い壁が、地響きを立てながら現れる。
ズゴーン!!
「ちょっ! そのまま通って来てる!」
ボクは続けて壁を作り出すが、透明人間になっているかの様に、避ける事なくそのまま突き進んでくる赤鬼。
「じゃあ、次はテレポーテーションだ! 赤鬼のスタート時点に戻るぞ!」
「テレポーテーション!」
今まで走って来た所を逆走し、テレポーテーションで赤鬼のスタート時点に戻った。
「ズァー、あぁ〝… はぁ… はぁ…」
赤鬼との戦闘の後の、テレポーテーションの風圧はボクの身体に大ダメージを与える。サクは、瞬間移動において理想通りの涼しさだが。赤鬼の動向を見ると、
「器用に自分の穴開けたところから戻って来てるよ!」
頭の角など、ボコボコしているはずなのに何という運動神経だ。
「すっげぇじゃん。俺もやりて〜、はるみ、俺にも壁作ってくれ」
すっごい呑気な人が近くにいてくれても、全然安心できないな。目をキラキラさせてボクの方を見るサク。
「いや、作らないよ? 来ちゃうじゃん、赤鬼」
そういえば、田嶋くんはどこに…
「サクさん、蒼井さん! ここは僕が食い止めますので、出来るだけ遠くに逃げてください!」
「田嶋くんっ…」
ボク達の為に身体を張る田嶋くんに背を向けて、感謝しながらサクを引きづりながら走った。チラチラ後ろの様子を伺っていると、赤鬼が田嶋くんの目の前まで辿り着き…
ドスッ。ピューーーン…… キラリンッ。
食い止めるどころか、赤鬼は何もせずそのまま突っ切って行き、田嶋くんは空の彼方へ飛んでいってしまった。
「田嶋くーーーん!!」
サクを引っ張りながら走るボクは、いつも以上に遅い。よって、ボクのすぐ後ろまであっという間に来てしまった。
「ストーン・アロー!」
ドンッ!ボスッ、カラカラカラ…
「ハワイアンビーム! からの、ウォータージェット!」
ウィーーーン、あぁぁぁぁー、ゴクリッ。
だめだ、ストーン・アローで壁を作っても通り抜けられ、瓦礫をぶつけても何か当たったか?程度で終わり、ハワイアンビームでは金棒でガード、ウォータージェットには、大きな口を開けてゴクりと飲み干されてしまった。
「サク、何か策でもあるの? ボクだけじゃ、逃げながら能力を使うにはもう限界だよ」
「策? サ、クだけにね」
「はい。今、おやじギャグいらない」
「わかった、わかった。まぁ怒るなって」
すると、サクは肩にひょいっとボクを乗せて、ストロング・ガンを、放った。遠距離攻撃とはいえ、パンチを炸裂するわけだから、肩に乗っているボクは、揺れる揺れる。
流石に赤鬼は、ボクの能力のように対処が出来ず、攻撃を受けている間は前に進めていない。その隙にボクとサクは逃げ進める。
ボクとサクは、路地の影に身を潜め休憩する事に。
「はぁ、はぁ…。 鬼ごっこ意外にキツイなっ! あのまま帰らせておいた方が良かったな」
「凄い爽やかな顔で言ってるけど、自分から始めておいて後悔するのやめて。その話に乗ったボクと田嶋くんもっと後悔してるから」
「そういえば田嶋、戻って来れんのか?」
ザク…、ザク…
路地の中から足音が聞こえてくる。赤鬼がボク達の居場所に気付いたのかも知れない。
「サク、場所変えないとまずくない?」
「いや、変に動くと正確な位置までバレる。こういう時は、現れた瞬間に一斉攻撃だ」
ヒソヒソ話しながら、だんだん近づいてくる足音に合わせ、戦闘準備をする。
ザク…ザク…
(来る!)
姿が現れた瞬間にボクとサクは一斉攻撃!
「ファイアー・フィーバー!」
「セクシー・ ダイナマイト!」
炎が出ているムチを、踊る様に振り続けるボクと、サクの渾身の一撃、セクシー・ダイナマイトを炸裂し、相手を追い込む!
はずだったが…
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