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第二十七話 ゴングが鳴る

 「あの… 星が違ったら、買わせてもらえないんですかね?」


 (なに普通に買い物しようとしてるの、この赤鬼)


 ボクは品出しをしている田嶋くんの方に目を向けると、口パクでこう伝えてくる。


 "いつも通りに。変な態度しないで、冷静に。買ったらすぐ出ていくかもしれないから"


 いや、これ口パクで伝わるボクを褒めて欲しいよ。テレパスだったら、一瞬で伝わるけど、この目の前の赤鬼の心読みたくないの。だってめっちゃ怖そうな事考えてそうだし。鬼に金棒だよ? コンビニ行く時に金棒いる?


 「あ、いえいえ! 合計115円です! 袋は入りますか?」


 怖いが、できるだけ平然を装って、赤鬼が持ってきた500mlのお茶をレジに通す。


 「え?袋お金取るの?」


 「えー、そっちの星はまだ無料で袋くばってるの?」


 「当たり前だよ! 袋なかったらどうやって持って帰るんですか!?」


 「あー、ボク達も初めはそう思いました。でも、袋を燃やすと環境破壊に繋がるからと、袋をお金で買う様になってからは、もうそれが当たり前になりました。慣れって怖いものですね。マイバック今日は何を持っていこうかと迷ったりするのも楽しく思えてますし」


 「えぇー、僕の星もそうなるんですかねぇ。僕バック持ってなくて、このパンツに入れるしか無いですね…」


 (いやいや、汚な! しかも隙間から…)


 ボスッ!…


 はい、落ちた。この赤鬼、ボク達に敵意を向けてないって事? もしかして観光客? なんかボクも普通に話しかけてしまったけど、このまま帰ってくれそうで良かった…


 「ありがとうございましたー。またお越しくださいませ〜」


 ピンポンピンポンピンポン

 ピンポンピンポンピンポン…


 ふぅー、今はアザーから観光してくる星なの?日本は。でも帰ってくれてよか…


 ピンポンピンポンピンポン

 ピンポンピンポンピンポン…


 「いらっしゃいま…」


 「あぁー、忘れてた忘れてた」


 店の外に出たはずの赤鬼がまた戻ってきて、忘れ物を取りまた店を出ようとした。そう、忘れ物は、ボクだった。


 「こんな不意打ちあるー?」


 ボクは赤鬼に担がれ店の自動ドアが開き、外に連れ出された。


 「コンフィデンス・tuchi!」


 田嶋くんの声だ。田嶋くんのスティックから細めの木の幹が出てきて、赤鬼に巻きつける。


 「蒼井さんを離せ!」


 (おぉー、味方を攫われそうになった時の決まり文句。 ボクもそんな事を言われる日がくるとは)


 「あぁ、そのひょろひょろ君、君には興味が無いからこのぐらいにしといた方がいいですよ」


 赤鬼は、身体に力を入れて巻かれている木の幹を粉々にしてしまった。


 「僕は割と筋肉ある方ですよ」


 特訓をしているのに、ひょろひょろと言われ悔しいのか、服を脱ぎ上半身裸でボディビルダーの様にポーズをとっている。確かに細マッチョだ。


 「フッフッフ。 そんなもやしみたいな身体見せられても怖くはありませんよ」


 赤鬼も筋肉自慢の火が着き、ボクを抱えながら筋肉を膨張させ、上半身に着ている気持ちばかりの布切れを破壊し、ムギュムギュと音を立てながら筋肉を見せる。こっちはゴリゴリタイプだ。田嶋くんの方を見ると…


 カンカンカンカンカンカン…


 鐘のゴングが鳴っているかの様に、両手、両膝を地面に付き、絶望している。


 (おいおい、諦めるの早いよ)


 「筋肉だけで漢を語れるわけじゃ無いよ。能力の方はどうかな」

 

 涼しい顔して言ってるけど、自分から脱いでたよ。と、突っ込みたかったが、田嶋くんの様子を見る事にした。


 「ほう。そうですか。では、力量の方を見させてもらいましょうか」


 この赤鬼、すっごい上からだな。仲間馬鹿にされてる感じして、腹立つわ、凄く。田嶋くんいっけー!!


 「コンフィデンス・ファイヤー!」


 スティックから、強化力の炎が出てきて器用にボクを避けて赤鬼に集中攻撃。初めて技を見せてもらった時は、目眩し程度の火力だったけど、特訓と、さっきの挑発によって、桁違いの威力が出ている。さぁ、これでどうだ! うちの田嶋くんだって、凄いんだぞ!


 ぶおぉぉんっ!!


 赤鬼は金棒を強く振り、田嶋くんの炎は瞬く間に消えて行った。振った時の風圧で、ボクの身体が震え上がる。田嶋くんの方を見ると、


 カンカンカンカンカーン!!


 またゴングが鳴り、絶望している。あ、諦めるな田嶋くん…。


 もう、ボクがどうにかするしか無い! 両腕ごと掴まれている為、背中に向かって恐る恐る指を赤鬼に向けると…


 (ひぃーーー、こっち睨んでるぅ。背中に目でもあるの?)


 背中に目を向けると、


 「あるーー! なんで背中に目があるの。こういう時って、背中に目なんか無いけど、ある様で恐ろしいみたいなのが面白いのに、本当に目あったら反則だよ!」


 ボクが暴れていると、骨を折られるかの様に強く締め付けられた。


 「あのー、落ちられると怪我したりしたら大変ですので、じっとしてて下さいね」


 親切なのか親切じゃ無いのか、もう分からない。


 「あと、僕の大事な人をさっきいじめたでしょ。凄く怒っているんです。あまりモタモタしていると、捕獲を放棄して貴方を食い殺しますよ」


 さっきって…。


 「あの、黒目デカ女の彼氏なの!? さっき、ボクが気絶させた後、アザーのゲートから手が出てきて、引き込まれて行ったんだけど」


 「黒目デカ女!? カクテル様に何という無礼な名前を! しかも、元彼氏です! こんな危ない星に連れてきたく無かったのですが、口も聞いてくれなくて、心配で僕が着いた頃には気絶状態。危ないので、アザーに連れ戻したんですよ」


 あの女、カクテルって名前だったんだ。しかもこの赤鬼、元彼で口も聞いてくれないって、もうストーカーじゃん。口も聞きたく無いのに、付き纏ってるんでしょ。あー怖い怖い。見た目も怖い。


 「コンフィデンス・ファイヤー」


 ジリジリジリ… パチッ、パチパチッ。


 ボクと赤鬼が話している間に、田嶋くんは元気を取り戻し、何故かイワシを焼いている。


 (な、何してるの田嶋くん… どこから持ってきたのそれ)


 辺りを見渡すと、近くに魚屋さんがあった。ここで七輪とイワシを貰ってきたのね。でもなんでイワシ…


 「く、ぐわぁぁぁ! やめろ! それだけは…」


 赤鬼の様子がおかしい。ボクが担がねている腕が次第に緩み、スッと逃げ出せることができた。


 「一つの説で、鬼は焼いたイワシの匂いが嫌いだと言うのがある。 こんなにも効果あるなんて、僕もびっくりだよ」


 なるほどー。鬼の弱点を着いた戦略。田嶋くんらしさが発揮できて良かった。敵を目の前にして焼く姿を見ると、何かジワるけど。


 「もう、許せません。貴方は捕獲対象でも無いので、手を出したくありませんでしたが、僕は、カクテル様の事で苛々しているのです」


 焼いている田嶋くんの所へ、鼻を摘みながら凄い勢いで走っていき、金棒をフルスイング。七輪ごと空の果てまで飛んで行った。そのままの勢いで、田嶋くんにも金棒を上に掲げ振り下ろそうとした。


 「カクテルさんは、ボクが!…」


 ボクのせいで田嶋くんがやられるのはごめんだ。間に入って止めようとしたその時、


 「優! こんな所で何をしているんだ!」


 田嶋くんの後ろから、息を荒くして怒っている人が立っていた。

読んで頂きありがとうございます。

引き続き宜しくお願い致します。

応援して頂けたら幸いです。

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