第二十二話 恋の病
しばらく時が止まった様に見つめる2人だったが、ハッと我に返り、少し距離を取る。
「ありがとう、ごめんね。びっくりしたでしょ」
「いやいや、全然。むしろラッキーっていうか…」
「ラッキー?」
「いやっ、ちょ、僕初出勤でテンパってて、おかしな事を…」
「タバコあったー?」
お客さんを待たしていた事を忘れてしまっていたボクも、何やってるんだ…
「はーい! 大変お待たせして申し訳ございません!」
そのお客さんは優しい人だったから、怒られなかったけど、急いでいる人だったら100%雷落ちてたな。反省反省。バイト終わったら、課題して、メイドさんにマッサージしてもらえるんだから。それを楽しみにがんばろーう。
いきなりウキウキし始めたボクを横目でみる田嶋くん。
「蒼井さーん、田嶋くん。もう22時だ上がろう!」
西口さんの声で、22時を過ぎていた事に気づき、田嶋くんと2人での初出勤は終了した。
「お疲れ様でした〜」
店内のガラスから店長がボクと田嶋くんを少し睨む様に見てきている。もー、ここやめてサクのところでメイドとして雇ってもらいたい〜。
「今日どうだった? 疲れたよね?」
初出勤の人には、共感が大事!
……。
「田嶋くん?」
「あー、ごめん。疲れたね。でも、蒼井さんが居るから頑張れそう」
「そっかあ、良かった。何だか、同じところに帰るのって、未だに変な感じだよね」
「確かに…」
なんだ? 田嶋くん、上の空の様な感じがする。疲れたから話すのもしんどいかな。ボクも黙っておこう…
「あのさ!」
ビクッ!
「なに?」
話しかけられないと思っていたら、話しかけられて凄くびっくりしてしまったボク。
「蒼井さんって、彼氏とか興味あるの?」
うーーーきたー、この話。ボクも分からないんだよそれが。あると言っても何か違うし、無いと言っても心がモヤッとするような…
「んー、今はないかなっ」
よし、これでいい。本当の事だ。今は色んなことが起こり過ぎて、まだ最終目的にも辿り着いてない。そんな時に、恋愛だの、彼氏だの言ってる場合じゃ無いからね。
「そ、そうなんだね。 そうだよね、こんな時に…」
ん?田嶋くんはちょっと落ち込んでいるぞ?これはボクの返答が間違いだったか? いやいや、落ち込んでも、ボクと田嶋くんが付き合うとかそんなの無い…
ズキッ。
付き合うことがないとか考えると、胸が少し痛んだ。
「田嶋くんはどうなの? そんなの考えたりする?」
「僕は考えたりするよ」
「え…」
意外な回答にボクは言葉が詰まってしまった。
「あー!でも、今はアザーの事があるし、そんな場合じゃ無いって僕も分かってるんだけどね。アザーの事が終わったら、ちゃんと伝えようと思ってるんだ」
あぁ… なるほど、好きな人がもういたんだ。ん? なんでボク落ち込んでいるの? へ? いやいや、好きとかそんなの思った事なかったし。あれだな、友達が彼氏彼女できて寂しくなるみたいな、それだわ。そんな経験一度もした事ないけど。クラスの女子生徒が盛り上がって話していたのを盗み聞きしてたから、知ってるだけで。
サクの家に着き、各自部屋に戻った。
課題は思いのほか少なく、すぐに終わった為メイドさんに伝え、マッサージをしてもらうことに。
エステやマッサージ専用のベッドに、うつ伏せになりマッサージが始まる。しばらくマッサージされていると、
「はるみさん、恋の病ですか?」
「えっ!? いや、なんですかそれ?」
ボクは図星かのように取り乱す。
「先ほど、田嶋さんとお帰りになられた時に、部屋に戻る最後まで田嶋さんから目を離しておられなかったので… 同年代で、ご一緒に過ごされていたら、好きにもなりますよね。うふふふ」
「いや。好きとかそんなんじゃ…」
「好きじゃないんですか?」
年齢も少し年上だが、このメイドさんは人生経験積んできた余裕が見えるな…
「分からないんです。 前までそんな事考えた事もなかったのに、今日ボク何かおかしくて…。 しかも、アザーの戦いが終わったら、想いを伝えるみたいですよ。だから、ボクが好きになっても叶うわけもないですし」
「うふふ… はるみさんはそのままでいいと思いますよ。深く考えず、ご自身の思うままに居ればいずれ分かります」
「ぐぅーー……」
ボクは話を聞いてもらって、さらに夜遅くにマッサージを頼んでいるのに寝てしまった。
読んで頂きありがとうございます。
次回から再び特訓開始です!
引き続き宜しくお願いします。
応援して頂けると幸いです。




