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第十九話 ハンク

「確かに足場を無くし、攻撃にも適応できると、使えそうじゃな。今は能力の出力を考えずに使っておるが、強弱を使い分けれるようにならんといけんのう。新技もある程度増やさないと行けないが、やはり能力の芯を安定させないといかん」


 ボクはまたあのしんどい坂を走って登らないと行けない事を察して、そろりそろり…


 まぁ、逃げ出せるわけもなく首根っこ掴まれてまたあの坂へ。サクと田嶋くんは1日に1回で良いのに、体力のないボクがなんで2回も。なんかこう、能力を発動しながら体幹の真ん中に集中して…とか、実践的な方がいいと思うんだけどなぁ、走るのしんどいし。


 文句を垂れながらも、背中を後ろから押され渋々また走る事に。


 「はる、ちゃんとやろうとしておるのか?」

 「やってる!…つもりだけど、全くピンと来ないの」


 お爺さんは背中を押すのをやめて、なんと伝えようか考え込む。考え込めば考えるほど、身体がどんどん下に落ちていきアイスのように溶けそうなお爺さん。


 「あーもういいよいいよ! んー、お腹に力入れる感じ?」

 

 「腹は力入れた方がいいんじゃけど、それとはまた違う。お! 洗濯洗剤の詰め替えを最後の最後まで押し寄せる様な感じじゃ!」

 

 「おー!なるほど。あれお役立ちグッズで絞るヤツもあるけど、そこまでして絞りたい感じでもないから、結局手でやっちゃうよねー」


 「分かるぞ。押し出してもう出ないかなと思った時に、最後ピュッと出た時は気持ち良いな〜」


 「分かる〜」


 ……


 結局ボクもすぐに話を逸らしてしまって、肝心の特訓がうまく進まないが、言われた通りやってみると…


 ボワッ…


 「おー!!それじゃ!」


 青い炎の様なものが体幹の真ん中に現れ、真ん中に集まった熱が外側に向かってじわじわと沁みる感覚だ。これが、能力を使う基本なのか。慣れていないと、これだけで体力を削られる。でも、身に付けるよう教えると言うことは、両親を助ける為にはこれが出来ないと話にはならないと言う事だろう。レイヤから聞く限り、王様は無慈悲な人。そんなヤツの物にボクとサクがなるなんて、絶対に嫌だ。


 「おーい、爺ちゃん」


 サクと田嶋くんがボクの特訓している坂道のふもとに来ていた。


 「特訓は終わりか?」


 お爺さんは、少し寂しそうな顔をする。


 「いや、休憩だよ。後もう少しはやろうかと思ってる」


 お爺さんは、ぱあぁ〜と小花が周りに放たれているかの様に喜ぶ。感情が忙しい爺さんだ。


 「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど」

 「今日の夕飯か? 今日はオムライスじゃ。サクが大好物だと父ちゃんと母ちゃんから聞いておったからのう!」

 「いや、今日は家帰るよ」

 「ガビーーン…」


 (お年寄りを悲しませてあげないで、サク…)


 「じゃあ、ボクが頂こうかな…」

 「まだ作っとらんし、今日は冷凍パスタじゃ。もう解散解散」


 (気を遣ってあげたのにその態度腹立つー!)


 「待ってくれ爺ちゃん。俺はもう少しだけ爺ちゃんに教わりたいんだ、ダメか?」


 「イイ… ダメじゃないぞ。よしっ!さー何からしようか!」


 (あー、これ。無意識にもて遊ぶサクって、ほんと魔性の男だな。相手お爺さんだけど)


 サクが聞きたかったのは、レイヤから聞いたボクとサクの能力を吸い取り、宇宙を一つにすると言うことの詳しい話だ。サクは狙われているとは言っても、ボクの両親を助ける義理はない。田嶋くんなんか、本当は関係なかった人だし。なのに友達の両親だからと今は頑張ってくれている。でも、ボクの両親を助けても事が変わらないのなら、今の頑張りは無駄になる。助けてもらった上に、2人を不幸な道に引き摺り込む事は絶対にダメだ。


 「ワシは何年も前に、息子と別れてから人伝てでしか聞いてないんじゃが、少し長くなるが話しておかないといけない話じゃな…」


 回想


 「おーい! 王様のお荷物〜」

 「そんなので王を継承できるのなら、俺らも王様になれんじゃね?」


 お爺さんの息子、現王様が幼少期〜青年前期の頃。


 身体も弱く、能力値も低かったのが原因で虐められ、王の息子と言うのにも関わらず、下に見る者が多かったと言う。名前はハンク。その時は毎日よく泣いて、情けない、悔しいと、溢していた。父のロンはそのままで良いと言う気持ちがあったが、悔しがっている息子を見て特訓を付け、修行の毎日。だが、能力値の低いハンクには、どれだけ鍛錬を積もうとも、身体にガタが来てしまい、上手くは行かなかった。


 そんなある日、


 「父上! これを見て下さい」


 嬉しそうに披露したがるハンクの姿が。しばらく笑顔が見えなかったハンクに、ロンは嬉しかった。能力値など関係なかったのだと、ハンクが頑張っていた姿を思い返しながら少し涙ぐむ。


 「はああああ!!」


 能力の氣が剣に凄まじい能力を送りながら振り下ろされる。今まで見た事ない威力だ。ハンクは自分で編み出した剣に能力を集める戦い方。これだけの威力があれば、馬鹿にされる事も無く、本人も自信がつくだろうと安心したロンだったが…


 「これ、隣町のお兄さんが教えてくれたんだ。凄いでしょ、僕は強くなったんだ!」


 ロンの顔が曇る。隣町と言われる場所はあまり良い噂を聞かないからだ。宮廷の隣なのにも関わらず、盗みや、犯罪に手を伸ばす者が居ると言う噂だ。何度か調査に向かわせたが、クロを決定づける物が出て来ず、そのままになっている町だと言うこと。普段ならそんな所に行かせるはずは無いが、一度だけ修行を休みたいと言われた日があった。久々に友達ができたかもしれないと言われて、疑うこともせず行かせたのだ。きっとその日に何かあったのだろう。だが、ハンクが喜んでいる姿を見ると怒ることも問い詰めることも出来なかった。違和感を覚えたが、息子の唯一の友達に迷惑がかかっては、ハンクを悲しませることになる。そう言った、親心と王としての立場を天秤にかけ、前者となったわけだ。


 それからとは言うもの、ハンクはロンに特訓に明け暮れることは無く、新しい技を覚えた時に手合わせで確かめてくるぐらいになった。成人を超えると、立派な体格に凄まじい攻撃力が上がった、逞しいハンクが完成した。弱気だった性格も、能力が上がり、我儘おぼっちゃまに変わってしまった。息子と言うだけで可愛いが、あまりの横柄な態度、不審な人物との関わりがある事で、王の継承はハンクに任せないと言うことを伝えたロン。ハンクは怒りに満ち溢れ一度出ていくが、知らないうちに結婚して、身籠った妻を連れて、王宮に戻ってきたのだ。その後、あの手この手でロンを陥れ、王の座を奪い、ロンは追放された。


 ロンが追放される時にハンクの最後の言葉は、


 「俺を下に見てたヤツらを、口も聞けない様にしてやる。だからもう父上はいらない。俺より上のやつなんて、この星に俺1人で良い」


 と言っていたそうだ。


 ロンも追放されてからは、人伝てで聞いた話みたいだが、びっくりしたのが、ボクの両親と面識があったこと。このちきゅうに来るまでは知らなかったみたいだが、追放されてから21年後、いきなり両親がロンの家に尋ねてきたらしい。

 

 その時に聞いたのが、宇宙暗躍計画。ハンクはやはり隣町のお兄さんだった者から悪いことを吹き込まれて染まってしまった事実を改めて突きつけられ、ロンは、親としての情けなさと、あの時どうにかして止めていたとして、親子の関係は悪くなっていなかったのかと言う、あの時の自分の間違いを認めたくない愚かさでいっぱいになった。暗躍を企てる中で、強大な能力を持つ者を探していたと言う。その時にボクが生まれ、あまりの強大な能力が有り、赤子の頃にはすぐにオーバーヒートするぐらい能力を解き放っていたと言う事で、病院中が大騒ぎになった。それを耳に入れたハンクは、ボクを養子に入れさせろと、ボクの両親に押し寄せたと言う。危険を感じ、必死の思いでこのちきゅうに逃げた結果、万が一何かあった時の為に、ボクは幼少期の頃、毎日の特訓を受けていたという訳だ。すぐに追ってが来なかったのは、養子に入れられないのなら、ある程度成熟してから、連れ戻すとなったからだ。ピースが少しずつ埋まってはいたが、肝心な所が抜けて、ボクも言われるがまま動いていただけだったが、やっと理解できた。両親が失踪して、アザーにいると言うことも、人質にすれば、いずれボクは来ると思ったのだろう。まんまと敷かれたレールの上を走っていたと言う訳だが、これを逃れようとしても両親は帰って来ない。詳しく聞いてさらにボクの責任の重さに気づき、やる気が出てきた。一度はサクを捨てたハンクだが、ヴァイロンはサクがハンクの息子だったと言うことを気づいていたのだろう。能力がないと分かり捨てたものの、強パワーのパンチを持っていると言う事と、ボクと一緒につるんで居る事を知り、2人とも捕獲対象になってしまったのだ。


 「なるほど、めっちゃ強くなって、王様倒せば良いんだな」


 「いや、それだけでは解決しないと思います」


 サクがブンブン腕を回してやる気になっている所に、田嶋くんが口を開く。


 「王様が暗躍してるなら、王様を倒せば解決なんじゃないの?」


 ボクもサクと同様、両親を追い詰めたことに腹立てていたせいか、深くは考えていなかった。


 「目の前にお父様がいるのにこんな事を言うのは大変言いづらいですが、王様を倒すのは最低条件。後ろで糸を引く、隣町のお兄さんだった人です。その人を黙らせない事には、解決とはならないと思います」


 「田嶋の言う通りじゃ。ワシもそいつの事は誰かつかめておらん。だから、そいつを探す為には、その前に拒む者を蹴散らさない事には前に進めん。息子も、そいつに流されて今の強大な能力を持つ様になった。何か薬の様な物で能力の亢進をしているんじゃろう。きっと近くにもそんなヤツらが、うじゃうじゃと居る。その中に糸を引く者が隠れておるんじゃろう。最終的にはそいつを倒さないとこのちきゅうも危ない」


 「じゃあ向こうに着いてすぐ、決戦が始まる感じ?」


 「まぁ、すぐに気付かれるじゃろうな」


 「まじー!? 観光でもするかと思ってたのによう」


 サクは旅行のおまけでボクの両親、さらにはこの世界を救う感覚なんだろうな。ボクはヒヤヒヤして観光なんて出来やしない。


 「うーん、そうじゃなぁ… アザーで能力を使う際、このちきゅうよりも、放出しやすくなる。その勝手を身に付けてからの方がいいからのう… あ、ワシを慕っていた部下達が今住んで居る地域に飛ばしてもらおう。アイツらは、ワシの息子が王になると切り捨てられた。きっと、匿ってくれるはずじゃ」


読んで頂きありがとうございます。

引き続き宜しくお願いします。

応援して頂けたら幸いです。

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