第十七話 メイドによる目覚め
「はるみ様、おはようございます。ごゆっくりなされて宜しいのですが、学校のお時間が迫っておりますので、一度お声を掛けさせて頂きました」
そう、ボクは熟睡しすぎて学校のことなんてすっかり忘れていた。サクと田嶋くんは部屋の外から少し見えたが、もう準備万端だ。男の人って案外しっかりしてるんだなぁ。サクがメイドさんに指示を出し、ボクは高速で着替えと髪の毛のセットを行われ、寝ぼけているボクにどんどん口に放り込まれる朝食。準備ができると椅子からキャスターを引っ張り出し、そのまま出口まで連れて行かれた。ここまでしてもらったけど、ボクはサクの家が快適すぎてもう外に出たくない。椅子から頑なに降りようとしないボクをサクが肩に担ぎ学校まで連行される。
学校に着くと、なんだかボクを見て周りがざわついている。なんだ? 超能力の事がバレたのか? でも、なんだろうこの安心感。サクと田嶋くんが居てくれるおかげで、例えバレて後ろ指をさされようとも、ちっとも怖くない。
「この2人に出会えて本当によかった」
「なんだなんだ? またお涙ちょうだいか?」
「僕もそう思ってますけど、朝からどうしたんですか?蒼井さん」
しまった。心の中の声が漏れてしまってたのか。くぅー、2人のたわいない反応にも泣けてくる。
教室の前に着くと、他クラスの田嶋くんとは一旦離れた。
「蒼井さん?」
「蒼井さんだよね?」
あー、始まった。ボクには話しかけず聞こえるように悪口を言うんでしょ。好きに言って、もうボクは…
ボクが席についた途端、ざわついてた生徒が一斉に駆け寄ってきた。
「蒼井さんイメチェンしたの?」
「かわいいっ!」
「絶対そっちの方がいいよ」
「蒼井さん目が見えなかったけど、意外と目大きい〜」
なんだ?この反応は?
ボクがハテナを頭から飛ばしていると、近くにいる女子生徒に鏡を借りて、ボクを映し出した。
(ほー。メイドさんの手にかかるとこうなるんだな。あのむさ苦しい髪とは大違いだ)
この後は、シャンプーは何を使っているのか、髪の毛にどこで買ったオイルをつけているのだとか、ヘアピンはどこで買ったのかだとか、質問攻めだった。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン…
(はあ〝ーつがれたぁー)
机に寝そべるボクに、サクは頭を撫でた。その様子を見ている女子生徒からはハートが飛び散り、男子生徒は横目でこちらをチラチラ見てくる。悪口を言われないのは良かったが、これもこれで大変だな。気が休まらない。
最近のお昼ご飯はサクと食べていたが、その日は誘われた女子生徒と食べた。嬉しい気持ちもあるが、慣れていないせいか、早く放課後になってサクと田嶋くんのところへ行きたいと思ってしまう。無い物ねだりとは、こう言う事だな。
PM3:55
下校の時間。今日から早速特訓が開始される。本当はバイトだったが、学校終わりにバイトに行かなくていいと言うだけで幸せだ。特訓とは何をするんだろう…
「今日、はるみモテモテだったぞ」
「そうだったんですか! 蒼井さんも隅に置けませんねぇ。蒼井さんに手を出す人が居たら、僕が面接するのですぐに言ってくださいね」
「おっ、面接か〜。いいなそれ」
「ちょっと2人ともからかわないでよ」
2人は不思議そうな顔をする。それを見て、ボクも不思議な顔で返す。
「はるみが可愛いって事が周りにバレたんだ。第二の親代わりとして、監督するのはおかしいことか?」
「そうです。面接は必須ですよ! 僕はモサモサのはる…蒼井さんでも可愛いと思っていたのに、可愛さ爆発してますからね〜」
「過保護すぎなんだよ〜」
ボクはなんだか恥ずかしくなって、先に走って行く。待て〜と可愛い青春シーンが送られると思ったが、
「速っ!!」
足の速い2人はボクの隣まですぐさま来てしまった。
結局、3人仲良く歩いてお爺さんの家に到着。特訓とは、能力を使い、底上げしていくのかと思ったのだが、何故こんなところに連れてこられたのだろうか…
読んで頂きありがとうございます。
引き続き宜しくお願いします。
応援して頂けると幸いです。