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第十話 トムとジェムス

 「嬢ちゃん、ほら。見てみるんじゃ」


 鏡を顔の前に出されると、本当にさっきまでつけていたメガネが綺麗さっぱり無くなっている。おじさんやサク達の目を見ても思考は読めない。気になる事はあるが、ひとまずこれで鬱陶しい前髪とおさらばできる。


 「おじさん、ありがとう」

 「はるみやったな! 今日切りに行こうぜ」

 「はるみさんよかったですね。あの… 気になるので聞いても良いですか、おじさんに」


 (聞くのか? ボクは知らないふりをする選択をしたけど、確かに気になるうう!)


 「サクさんのお爺様ですか?」


 (聞いたーーーーー! サクの目の前で聞いたよ。気遣いできるタイプなのに、こういう事は気にしない系ね)


 「へ?」

 

 (はい、ここで聞こえないー。いやこれ、聞こえない振りだな。いや、絶対そう、もう顔がそう)


 「あの! サクさんのお爺様ですか?」


 田嶋くんは、今まで聞いたことのない声量でまた聞き返す。結構、度胸あるなこの人。


 「そうじゃ。ワシはコイツ(サク)の爺さんじゃ」


 「えぇーーーーーー! そうなのおっさん?」


 (えぇーーーーーー! サラッと答えたよ。サク、ビックリし過ぎて、なんかボクに抱きついてきてるし)


 「やはり、そうでしたか。サクさんと同じように腕の筋肉が異常に肥大する事、蒼井さんから聞かれた時に、分かりやすく焦っていたところを見て大体は分かっていましたが、最後の消えるマジックを見て、確信しました。僕はまだ、数回しか能力者を見てきてませんが、能力者は能力を出すキーがある事を知りました。蒼井さんは標的に向かって手や指を伸ばすこと、サクさんは血管がはち切れるほどの力を入れる事、そしてお爺様は胸筋を右左とピクピクさせることです。違いますか?」


 「そう、よく見てるね。ボクは手からしか出せないからね」

 「え?そうなのか? 力入れてパンチしてるだけだぞ?俺」


 サクは自分でも分かって無かったみたいだが、やっぱり能力者できっとアザーに関係がある人物に違いない。でも、サクのお爺さん何か地味だな! サクと同じように腕すんごいことなっていたのに、胸筋がキー? どうせ、"トムとジェムス" とか言って、胸筋に名前つけてる感じじゃないの?


 「いやんっ。そんなところまで見てたのか、にぃちゃん。そうじゃ。右の胸筋、"トム" と左の胸筋"ジェームズ"のおかげで、ワシの能力は出せる。能力と言っても、 "テレポート" 物体や、人を瞬間移動させる能力と "フリーダム" この世に存在しない物でもワシが想像できればその通りに作りだせる能力しか持ってないがな」


 (ジェームズかぁ!! 惜しい!)


 やはり、胸筋に名前をつけていた。ボクの勘は正しかったが、能力を聞いている限り、その胸筋すら要らなくないか? その太くなった腕も尚更。世の中には色んな人が居るんだと、改めて実感したボクだった。


 「爺ちゃんなのかよ! 水くせぇなぁ、言ってくれたら良かったのに」


 サクはお爺さんの肩に手を回す。お爺さんは満更でもない顔をしている。孫に引っ付かれて嫌なお爺さんは居ないだろうから、仕方ないな。


 「ワシはサクが生まれる前に追放された身じゃ。お前さんの実の母さんが、この星に連れて来て、ワシに面倒を見ろと行ってきたのじゃ。だが、ワシと一緒に居る事をバレると危険が及ぶことになる。だから、今の父ちゃんと母ちゃんに頼み込んだのじゃ。サクの義理の父ちゃんと母ちゃんには、ワシが追放された後、何も聞かずに助けてくれた恩人じゃからのう。その方が安心じゃと思った。まぁ、心配でサクの家の近くに、この家を建てたわけじゃあ」


 バレてしまってからは、もう隠す必要が無いおかげで、お爺さんから孫に対してのハートがすごい出てる。サクは反抗期の子供のように、恥ずかしそうにハートを遮断。


 「何でサクだけここに? お父さんとお母さんはなぜ来れなかったの?」


 ボクがお爺さんに質問すると、


 「あぁ、それはな。 俺の息子、サクの父親がめちゃくちゃだったからじゃよ。情けない話だ、ワシは息子に追放されたってわけじゃからよ。サクは今の父ちゃんと母ちゃんが居るから、本当の事を話すが、サクが生まれた時は、無能力だったらしいのじゃ。アザーでは無能力の者は、人として扱われないか、殺される。その二つだ。父親はサクを捨てるよう母親に命じた。母親は優しい人だったが、反抗できるような性格では無かったからのう、ワシに頼んできたのじゃ。私が必ず迎えに来るからそれまで面倒みてくれってな。数年後、本当に迎えに来たのじゃ。だが、バカ息子が追っ手をつけておって、サクと会う直前で連れ戻され、その後、病死したらしい」


 「あの、サクさんのお父様とお母様は格式の高いお方だったのでしょうか? 追放したり、追っ手をつけるなど、身分の高い人でしか出来ない様に思えますが…」


 田嶋くんはまた鋭いところを突く。


 「にぃちゃん、よく気づくねぇ。やはりこの星に来ると、能力があっても無くても人は人だと実感するのう。 そうじゃ、サクの父親はアザーの王様じゃよ。まぁ、元々ワシが王様じゃったからな。王座を奪われたってわけじゃよ。マジダルいわ、息子のやつ」


 いやいやいや、サラッとすごいこと聞いちゃったよ。おじいさんが元王様で、サクのお父さんが現王様で、サクは…


 「王様の実の息子!? いやいや、アザー出身どころじゃないじゃん、サク!」


 おいっ、とボクはサクにツッコむ。サクはどうでも良さそうに、


 「あぁ、そうみたいだな。まぁ親父と母ちゃんが俺の本当の両親だと思ってるし、どうでもいいわ」


 「あっ…。ごめん、ボクビックリし過ぎて…」


 「気にすんな」


 サクは頭を優しくポンッと叩く。こんな時でも通常運転で行けるサクが、ボクはカッコよく見えた。ま、今はお爺ちゃんと分かってダル絡みしてるけどね。おじいさんも本当の事を言えて胸の内がスッキリしただろうな。凄く嬉しそう。


 その後は、おじいさんに今のボクたちの状況を話して、いつでも協力すると言ってくれた。ゆっくりしたい所だったが、ボクの美容室に行く時間がある為、また来ると伝えて、おじいさんの家から出ることに。


 「サクは残ってても良かったんじゃない?」

 「そうですよ、祖父と孫、水入らずでゆっくりしてこれば良かったんじゃ…」


 「良いんだ、また会えるしな。ってか、なんだなんだ、二人でデートできるとか思ってたのかー? 仲間外れにされるなんて、俺悲しいよ、せっかく仲良くなれて来たと思ったのによぉ」


 嘘泣きのサクに、二人で宥めながら美容室に向かった。


 

 「あそこ曲がったら僕のよく行っている美容室です。いつもは当日予約取れないんですけど、今日は丁度空いてて良かったです」


 「ありがとうね、田嶋くん。ボク、前髪切らない理由聞かれるの嫌だったから、ずっと自分で切ってて」


 「あの、すみません…」


 ん?サクの声じゃないな。後ろから、誰かが声をかけてきた。


 「嬢ちゃん、ほら。見てみるんじゃ」


 鏡を顔の前に出されると、本当にさっきまでつけていたメガネが綺麗さっぱり無くなっている。おじさんやサク達の目を見ても思考は読めない。気になる事はあるが、ひとまずこれで鬱陶しい前髪とおさらばできる。


 「おじさん、ありがとう」

 「はるみやったな! 今日切りに行こうぜ」

 「はるみさんよかったですね。あの… 気になるので聞いて良いですか、おじさんに」


 (聞くのか? ボクは知らないふりをする選択をしたけど、確かに気になるうう!)


 「サクさんのお爺様ですか?」


 (聞いたーーーーー! サクの目の前で聞いたよ。気遣いできるタイプなのに、こういう事は気にしない系ね)


 「へ?」

 

 (はい、ここで聞こえないー。いやこれ、聞こえない振りだな。いや、絶対そう、もう顔がそう)


 「あの! サクさんのお爺様ですか?」


 田嶋くんは、今まで聞いたことのない声量でまた聞き返す。結構、度胸あるなこの人。


 「そうじゃ。ワシはコイツ(サク)の爺さんじゃ」


 「えぇーーーーーー! そうなのおっさん?」


 (えぇーーーーーー! サラッと答えたよ。サク、ビックリし過ぎて、なんかボクに抱きついてきてるし)


 「やはり、そうでしたか。サクさんと同じように腕の筋肉が異常に肥大する事、蒼井さんから聞かれた時に、分かりやすく焦っていたところを見て大体はわかってましたが、最後の消えるマジックを見て、確信しました。僕はまだ、数回しか能力者を見てきてませんが、能力者の能力を出すキーがある事を知りました。蒼井さんは標的に向かって手や指を伸ばすこと、サクさんは血管がはち切れるほどの力を入れる事、そしてお爺様は胸筋を右左とピクピクさせることです。違いますか?」


 「そう、よく見てるね。みんなのこと」

 「え?そうなのか? 力入れてパンチしてるだけだぞ?俺」


 サクは自分でも分かって無かったみたいだが、やっぱり能力者できっとアザーに関係がある人物に違いない。でも、サクのお爺さん何か地味だな! サクと同じように腕すんごいことなってるのに、胸筋がキー? どうせ、"トムとジェムス" とか言って、胸筋に名前つけてる感じじゃないの?


 「いやんっ。そんなところまで見てたのか、にぃちゃん。そうじゃ。右の胸筋、"トム" と左の胸筋"ジェームズ"のおかげで、ワシの能力は出せる。能力と言っても、 "テレポート" 物体や、人を瞬間移動させる能力と "フリーダム" この世に存在しない物でもワシが想像できればその通りに作りだせる能力しか持ってないがな」


 (ジェームズかぁ!! 惜しい!)


 やはり、胸筋に名前をつけていた。ボクの勘は正しかったが、能力を聞いている限り、その胸筋すら要らなくないか? その太くなった腕も尚更。世の中には色んな人が居るんだと、改めて実感したボクだった。


 「爺ちゃんなのかよ! みずくせぇなぁ、言ってくれたら良かったのに」


 サクはお爺さんの肩に手を回す。お爺さんは満更でもない顔をしている。孫に引っ付かれて嫌なお爺さんは居ないだろうから、仕方ないな。


 「ワシはサクが生まれる前に追放された身じゃ。お前さんの実の母さんが、この星に連れて来て、ワシに面倒を見ろと行ってきたのじゃ。だが、ワシと一緒に居る事をバレると危険が及ぶことになる。だから、今の父ちゃんと母ちゃんに頼み込んだのじゃ。サクの義理の父ちゃんと母ちゃんには、ワシが追放された後、何も聞かずに助けてくれた恩人じゃからのう。まぁ、心配でサクの家の近くに、この家を建てたわけじゃあ」


 バレてしまってからは、もう隠す必要が無いおかげで、お爺さんから孫に対してのハートがすごい出てる。サクは反抗期の子供のように、恥ずかしそうにハートを遮断。


 「何でサクだけここに? お父さんとお母さんはなぜ来れなかったの?」


 ボクがお爺さんに質問すると、


 「あぁ、それはな。 俺の息子、サクの父親がめちゃくちゃだったからじゃよ。情けない話だ、ワシは息子に追放されたってわけじゃからよ。サクは今の父ちゃんと母ちゃんが居るから、本当の事を話すが、サクが生まれた時は、無能力だったらしいのじゃ。アザーでは無能力の者は、人として扱われないか、殺される。その二つだ。父親はサクを捨てるよう母親に命じた。母親は優しい人だったが、反抗できるような性格では無かったからのう、ワシに頼んできたのじゃ。私が必ず迎えに来るからそれまで面倒みてくれってな。数年後、本当に迎えに来たのじゃ。だが、バカ息子が追っ手をつけておって、サクと会う直前で連れ戻され、その後、病死したらしい」


 「あの、サクさんのお父様とお母様は格式の高いお方だったのでしょうか? 追放したり、追っ手をつけるなど、身分の高い人でしか出来ない様に思えますが…」


 田嶋くんはまた鋭いところを突く。


 「にぃちゃん、よく気づくねぇ。やはりこの星に来ると、能力があっても無くても人は人だと実感するのう。 そうじゃ、サクの父親はアザーの王様じゃよ。まぁ、元々ワシが王様じゃったからな。王座を奪われたってわけじゃよ。マジダルいわ、息子のやつ」


 いやいやいや、サラッとすごいこと聞いちゃったよ。おじいさんが元王様で、サクのお父さんが現王様で、サクは…


 「王様の実の息子!? いやいや、アザー出身どころじゃないじゃん、サク!」


 おいっ、とボクはサクにツッコむ。サクはどうでも良さそうに、


 「あぁ、そうみたいだな。まぁ親父とかぁちゃんが俺の本当の両親だと思ってるし、どうでもいいわ」


 「あっ…。ごめん、ボクビックリし過ぎて…」


 「気にすんな」


 サクは頭を優しくポンッと叩く。こんな時でも通常運転で行けるサクが、ボクはカッコよく見えた。ま、今はお爺ちゃんと分かってダル絡みしてるけどね。おじいさんも本当の事を言えて胸の内がスッキリしただろうな。凄く嬉しそう。


 その後は、お爺さんに今のボクたちの状況を話して、いつでも協力すると言ってくれた。ゆっくりしたい所だったが、ボクの美容室に行く時間がある為、また来ると伝えて、おじいさんの家から出ることに。


 「サクは残ってても良かったんじゃない?」

 「そうですよ、祖父と孫、水入らずでゆっくりしてこれば良かったんじゃ…」


 「良いんだ、また会えるしな。ってか、なんだなんだ、二人でデートできるとか思ってたのかー? 仲間外れにされるなんて、俺悲しいよ、せっかく仲良くなれて来たと思ったのによぉ」


 嘘泣きのサクに、二人で宥めながら美容室に向かった。


 

 「あそこ曲がったら僕のよく行っている美容室です。いつもは当日予約取れないんですけど、今日は丁度空いてて良かったです」


 「ありがとうね、田嶋くん。ボク、前髪切らない理由聞かれるの嫌だったから、ずっと自分で切ってて」


 「あの、すみません…」


 ん?サクの声じゃないな。後ろから、誰かが声をかけてきた。

読んで頂きありがとうございます。

引き続き宜しくお願いします。

応援して頂けたら幸いです。

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