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わだかまりを解いて、思い出を語って

 一緒に帰るとは言ったものの、いざ二人きりとなると何を話せばいいのかわからない。

ここ数日千歳のペースに振り回されてたけど僕たちは‘’元カレ” ”元カノ”の関係なのだ。


普通に考えて一度別れた相手と仲良く話すほうが難しい。

そんな悩んでいる僕を差し置いて彼女は何食わぬ顔でのんきに僕の横を歩いている。

、、たまに何を考えているかわからない顔するんだよな。それも昔から。


「そういえばさ」

先に口を開いたのは彼女。

「このドクペどこで買ってきたの?」

「あー緑町の近くのイオンだよ。なんかここで買った記憶がすごく残ってて」

「ふぅん?なんでそのお店の記憶だけが残ってるんだろうねぇ?」

何か含みのある言い方だが、、何が言いたいのだろうか?


「それは、、、買った回数が多かった、とか?」

「不正解です!」

またむすっとした顔になる。

「ええ、、ていうかそれ答えなんかないんじゃ?」

「ないけど!不正解」

やはり今日は一層何を考えているのかわからない。


少し間があって

「、、、ほんとは正解したらにしようと思ったけど」

「これを君にあげよう」


差し出されたのは今飲んでいるドクターペッパー。


「走って買ってきてくれたんでしょ?汗、かいてるし」

「まぁ、、確かに。帰る時間とかわからなかったから急いではいたけども」

それが理由なら正解不正解関係なく貰えるんじゃ、、、


「飲むの?飲まないの?」

「そしたら、一口だけ」


ごくっと一口ドクターペッパーを飲み込む。

久しぶりに飲んだな、、やっぱり独特な味がする。


そういえば前に飲んだ時って、、、


「、、、!ちょっとまって、ちぃ」

「、、思い出したの?」


思い出すも何も、、あの時も同じ場所で一口貰って、それが間接キスだって気づいて、、

今日も飲んでから思い出した。

でもなんで今それをするんだ、、?

今日は本当に千歳の考えがわからない。


「全部忘れちゃったのかなって」

千歳が下を向きながらゆっくりと話し始める。

僕も今顔を見られたらヤバいからちょうどよかった。


「でもりょうからドクペ貰った時に思ったんだ。もしかしたらーー」

「あの時のことは覚えてるかもしれないって」


忘れるわけがない。

「そんなの、、僕は初めてだったから、、その、、恋人に飲み物もらうとか」

「だからそんな簡単に忘れるわけないよ」


「そ、そうなんだふーん。じゃああげた甲斐が少しはあったってことかな?」

「、、あげる前は完全に忘れてたっぽかったけどね?」

いたずらっ子みたいにからかってくる。


千歳の真意は読み取れないけど、ただからかってるだけかもしれないけど、今日はずっと彼女のペースに飲まれている。


ここまで僕を混乱させるならちょっとくらい仕返しをしたいところだ。


「さっきドクターペッパーを買ったときに勝手に頭に浮かんだんだ。この道のりでちぃと一緒に何でもないことを話したりしながら歩いたこと」

「そう、、なの?」


少しくらいは僕のペースに、、、


「そうだよ。でもどうして勝手に浮かんできたんだろうなって考えてーー」

「きっと僕はその時間が、ちぃと一緒にいる時間が楽しかったんだろうなって思ったんだ」

そう言うと彼女は一瞬目を丸くしてすぐに下を向いた。


「まぁ、何をいまさらって話なんだけどね」

僕は愛想笑いをしてそう言った。


「ま、それだけ!日も落ちたし早く帰ろ、、、」

「待って、、!」

千歳に袖をつかまれる。


「私も、楽しかったよ。すごく幸せだった」

今にも消えそうな声で彼女は続けて

「今日、私朝からりょうに対して機嫌悪かったと思う」

「確かに今日のちぃは少し感情がわからなかったというか、、でもさっき大丈夫って、、」


「大丈夫!もう大丈夫なんだけど、大丈夫じゃないというか、、」

「今日、朝りょーかと一緒に登校してたでしょ?それでなんで接点もないはずなのに仲良さそうにいるのかなとか、教室でもりょうに話しかけてきたりとか、なんでだろうなぁってモヤモヤして、、」


そういうことだったのか。

まぁおおかた僕の予想通りではあるが、実際に言われると恥ずかしい。


「でも、こんなモヤモヤなんてする資格もないのにね。私の心が狭いだけなのかなって」


しかし、ちょっとした仕返しのつもりが、今日の疑問を全て解決してくれるとは。


「心が狭いわけじゃないよ。実際にちぃとだけ学校でなかなか話せてなかったわけだし」

「僕もちぃと話したいし、せっかく同じ学校で同じクラスにいるのに関係を断ったままなのは嫌だったから」


「うん。私も」

俯きながら彼女はそう言う。


「だから、僕たち友達からまた始めよう。学校でも話そう。たまには一緒に帰ろう」

これは半分は彼女のため、もう半分は僕がそうしたいからだ。


「うん、、!」

すごく嬉しそうな顔をしている彼女。嬉しいのはこっちも同じだ。


ふと目が合って、お互い恥ずかしそうに顔を背ける。

このぎこちない感じ、付き合ったばかりの時を思い出した。


今度は友達からのスタートだ。

好きを伝えるのはまだまだ先になりそうだけど、入学してからのわだかまりも解けてあの頃の思い出も語って僕は今日という一日に満足できた。


「明日からまたよろしく。ちぃ」

「こちらこそ」

目を細めて笑いながらそう言う彼女。


すっかり日が落ちた夜道。僕らはそれぞれ帰路に就いた。

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