Ⅳ
概念という概念がその場から崩れ落ちた。時空はぐにゃりと歪んで渦巻いた。窓の外は衰退し、色褪せていった。夜更けだけが揺らめいて、いつしか静寂に燃えていた。
二人はただ抱き合っていた。そのままずっと微動だにしなかった。お互い一言も交わさず、肌から伝わる信号だけを感じていた。
朗雄の性器は硬く膨張していた。胸にはとめどなく熱いものが込み上げた。しかしそれと同時に朗雄の脳は覚醒し、徐々に意識は再生していた。
破裂した「何か」がひっそりと闇に紛れ、背後にひたり寄る感覚がそこにはあった。
朗雄は差し出されたそれを受け取った。
朗雄は静かに顔を離した。鼻先には小夜子の顔が――その瞳は艶っぽく、一途に受け皿を求めていた。
朗雄はしっかりと見据えた。瞳の奥に目を凝らした。
切っ先にためらった。毒を飲むように耐えた。そして馴染ませた。
朗雄は口を開いた。
「もっと早く再会したかった」
窓の外はうっすらと明るんでいた。いつしか鳥がさえずりあっている。
夜は明けていた。
「もう朝だ。送るよ」、起き上がって朗雄は支度をした。
「……うん」、座り込んだまま小夜子は動かなかった。