表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/40

あのお方

 学園の生徒は基本的に平等をうたわれている。

 身分の上下は学園で学ぶには関係ないという。まあ建前だ。

 だから全員男女別ではあるが制服を着用している。

 男子は紺色の上下に詰襟と袖ぐりに刺繍が施されて白いタイを絞めることになっている。

 女子はクリーム色のドレス。ストンとしたスカートと襟と袖と裾に緑の刺繍を施されている。

 パーティに身に着けるドレスは袖もスカートも膨らませてあるので清楚な印象だろう。

 だけど、目の間にいるこのお方は。

 ああ、目が痛い。

 俺の仲間たちはいわゆる貴族社会からはみ出した哀れなサイレントマイノリティ、だけど目の前のお方は由緒ある公爵家の生まれであり、正式な夫婦の間に生まれた。それも両家のバランスもとれている。

 いわゆるスタンダードの中のスタンダードだった。

 それなのにどうしてはみ出したか。それは目の前のお方の服装が物語っている。

 男子の紺色の制服を着用しているが、それを女子の制服のスカートに改造している。

 いったいどこの仕立て屋で調達したんだろう。

 容姿は整っている。しかしその容貌は完全な男性のものだ、ついでに体格は俺よりいい。

 目の前のお方はその持って生まれた個性だけではぐれ物の仲間入りを果たしたのだ。

 この方以外にもそうした性癖を持った人はいないわけではないのだろうが、単にこの方以上に強靭な精神力を持っていないだけだろう。

 せいぜい、鍵のかかった自室でこっそり着替えて鏡に語り掛けるだけなんだろう。

 学園では男児はせいぜい肩までの髪を首の後ろに結ぶかそれとも俺のように肩につかない長さで切るかなのだが、あのお方は腰まで伸ばしている。

「お久しぶりです、セントバーナード先輩」

 できればかかわりたくない。

「あら、なんだか迷惑そうな顔ね、私貴方に忠告してあげようと思っているのに」

 声もはっきり男性だ。基本的にすっぴんだが、目鼻立ちが整っているのでそれほど違和感がないが。或いは慣れたのだろうか。

「貴方のお兄様のことよ、どうもある家のご令嬢と親しくしているらしいわね」

 兄に恋人ができたということだろうか。年齢からしてできてもおかしくないし、由緒ある家の娘さんならこちらとしても願ったりなんだが。

「ただ、あの家娘しかいないのよねえ」

 俺の希望はあっさり叩き潰された。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ