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俺は何も知らない

 それからは俺は何も変わらない。

 ただ実家に帰る機会が激減したというだけだ。俺は休日には働いて、そして安宿に泊まって夜を過ごし、学園に戻るという生活パターンに変わったぐらい。

 荷物は一通りまとめて、と言ってもほとんど俺の持ち物なんかない。衣類は俺が卒業するころには小さくなっているだろう。梱包されており、俺の卒業と同時にあちらの領地に送ってしまうことになっていた。

 俺は役人から地方領主へと進路が変わったのでそれに沿った授業を受けることになりレオナルドと同じ授業を受けることは激減した。

 ルーファスは相変わらずで、絵の仕事をたまに頼まれる。

 最近は画料も上がってきている。なんでも俺の絵は結構人気があるのだとか。

「そのうち油絵なんかも扱ってみないか」

 そう言って勧めてきた。

 今描き溜めているものはあるが、果たしてこれが売れるだろうか。

 俺の気の向くままに描いた静物画はどんな場所に掛けるのがふさわしいものやら。

 最近兄が卒業した。

 しかし俺にとってはどうでもいいことだ。もはや兄とは口もきかなくなっている。

 そして跡取りの座を争うという共通点が無くなってしまうと全く接点というものが俺と兄の間になかった。

 いきなり侯爵家の跡取りという立場を無くした兄の周りにそれでもあの高貴なご友人はいるそうだ。

 そして、何とシュナウザー侯爵家の婿になることが無事決まった。

 高貴なお友達が兄を何とか高位貴族から落とさないためにいろいろ骨折り、侯爵家にアプローチをかけさらに圧力もかけたんだろう。

 その結果セレスは嫁に行くことになった。

 グレイハウンド家に。それもフォックステリアのご子息と。

 俺は何も言わなかった。俺だけじゃない。レオナルドもルーファスもメアリアンも何も言わなかった。

 シュナウザー侯爵が何を思ってそんな行動をとったのか俺は何も知らない。知りたくもないがセレスがどう思ったのかは薄々わからなくもなかった。

 わかりたくなかったが。

 ルナはそのことをそれだけ話した。ディアナがどうしたのかセレスがどうしたのかそんなことは一切話さなかった。

 たぶん話したくなかったんだろう。

 俺はフォックステリア家に忠告しようかと思ったが、俺の忠告などおそらく聞くまいと思ったのと、どうしてそれを話さなかったのかと詰問されることを考えてあえて放置することにした。どういう相手と結婚することになるのかわかった時にはもう遅いが俺の知ったことじゃない。

 あの二人は似た者同士な気がするが、世の中には自分と似た人間と仲良くなれる人間となれない人間がいる。おそらく二人とも後者だ。

 将来の惨劇を感じるが。その時点で二人ともいい大人なんだから年下の俺がどうこう言うべきじゃないよね。

 俺以外も全員沈黙しているし。

 学問とアルバイト以外の時間は俺は絵を描いて過ごしている。

 たまにルナがのぞきに来るけれど多分深い意味はないのだろう。


 

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