ルナ視点
私は家族が嫌いだった。
お父様は二人のお姉様をことあるごとに競わせ争わせようとしている。
そうやって勝ち上がったほうが家を継ぐにふさわしいと言っていた。だけどちょっと見込み違いが起きている。
長女のディアナお姉様はちょっとないくらいの天然だった。お父様があれほどはっきり言っているのに気づかないってどういうレベルだと思う。
そして、そんなディアナお姉様と違ってセレスお姉様ははっきりとお父様の言っていることを理解し、努力する人だった。
ただし、ディアナお姉様の足元にこっそり落とし穴を掘るようなことをするのがセレスお姉様の努力だった。
私はそんなお姉様たちを見て、そしてお父様を見ていた。お父様の眼中に私は入っていないようだった。別にお姉さま方に私は劣ると思ってはいない。だけど末っ子だから家督相続に絡まないからとそうして無視されてきてたのだ。
そしてお父様が私をいないものとするならば、お母様だって私をいないものとして扱った。最低限のことはしてくれたと思う。でもそれだけ。成績が上がろうが下がろうが何も言われない。だからと言ってあえて素行を悪くするほど馬鹿じゃなかっただけ。
後継者として、天然なディアナお姉様と、姑息なセレスお姉様のどちらがお父様のお眼鏡にかなったのかは知らない。
私はいずれこの家を出ていく。だから家族が嫌いなのはむしろいいことだと思う、出ていくとき寂しくないから。
そんな私に別の視点というものを見せてくれたのがデイビッドだった。
デイビッドも家族が嫌い。そんなところが私と分かり合えそうな気がした。
悪く言う人もいるけれど。話してみればいい人で、家族のせいで苦労ばかりしていて、いつか学園を卒業したら家を出ていくつもりだと。そう言っていた。
素行が悪いふりをしているけれど、彼自身は善良でまじめな人。
彼と会っていると気持ちが安らぐ。それが家族に付けられた傷の舐めあいだとしても。
だから、彼との付き合いをやめるつもりはなかった。お姉様の言うことなんて聞く義務はないし、両親はたとえ嘘でも素行の悪いと評判の彼と会っていたという噂を聞いてもそれを無視したし。
なので入ってきた話に思わず耳を疑ったわ。誰もが不幸にしかならない組み合わせでしょう。デイビッドとディアナお姉様なんて。
セレスお姉様は手を打って喜んでいたけれど。
もちろん、私はディアナお姉様と彼を結婚なんてさせないわ。ディアナお姉様なんてどうでもいい、彼を不幸にさせないために。
そしてマキシミリアンという男が私に会いに来た。
彼の兄というだけの存在。ディアナお姉様の恋人。
私にとって何の価値もない男。
「さて、マキシミリアン様、私に何の御用?」
にっこりと笑ってやる。
「笑えるんだな、裏切られて」
裏切る?そんなわけないでしょう。彼にとってもこの成り行きは不本意よ、ああ、この男もディアナお姉様と同類。家族を自分の都合のいいように見て本当の姿を直視しない。
「いやだ、彼がディアナお姉様なんかを愛しているわけないじゃないですか。だから私は裏切られてなんかいませんよ」
マキシミリアンは探るような目で私を見た。




